【2024年4月最新】国土交通省による外部管理者方式(第三者管理方式)における監事の設置は義務?背景を解説 

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外部管理者方式(第三者管理方式)は、マンション管理組合の業務を担う管理者を外部に任せる方式です。国土交通省が2024年に入り、運用ガイドラインの改定案を示しました。管理者を監督する監事の設置を求めるのが柱です。理事会のなり手不足が心配される中、外部管理者方式(第三者管理方式)はマンションを適切に管理できる仕組みとして注目されています。本記事では、監事はどのような役割を果たすのか、設置は義務なのかという疑問に答えるとともに、導入が必要になった背景も解説します。 

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国土交通省が外部管理者方式(第三者管理方式)の場合に監事の設置を求める指針を出した 

国土交通省は2023年10月、外部管理者方式(第三者管理方式)を導入する際の指針の改定に向けた作業部会をスタートし、2024年1月に改定案の素案を示しました。あわせて、今まで第三者管理方式としていたものが、外部管理者方式に見直される等の変更もありました。

従来の指針は「外部専門家の活用ガイドライン」として2017年6月に制定されたものです。改定案で新たに盛り込まれた主な内容は次のとおりです。 

  • 外部管理者を採用する際、管理者の業務を監督する監事を設置するべきこと 
  • 区分所有者と管理者の利益が相反する取引が許可なく行われた場合、無効になること 
  • 管理組合の通帳と印鑑を管理会社が保管することを避けるため、印鑑等は監事が保管するのが望ましいこと 

とりまとめられた改訂案は、2024年度中に運用が始まる方向です。監事の設置は義務ではなく、指針で求めるまでにとどまっています。 

※「監事とは」で理事会の役割を解説した記事へのリンクを設置 

監事の設置が必要になった背景とは 

監事の設置が必要になった背景には、第三者が務める管理者に対する監視機能を強める必要性が高まっていることがあります。国土交通省が2023年に実施した「第三者管理者方式に関する実態調査」によると、外部管理者方式(第三者管理方式)を採用しているマンションの82%が理事会を設置していないとの結果が出ました。 

理事会は、すべての区分所有者でつくる管理組合の運営責任を負う機関です。マンション管理に関わる業務を行い、定期総会を開催します。理事会がないということは、管理者の業務執行状況などを組合員が適切にチェックできない状態を意味します。国土交通省は、管理者が独断で工事を発注したり、許可なく利益相反取引を行ったりすることによるトラブルを懸念するようになりました。 

国土交通省によると、管理事務を行う管理会社が管理者となる場合、管理組合の預金口座の印鑑を保管している事例がありました。管理者による着服などの不正を防止する観点から、恣意的な預金の引き出しを防ぐ措置を講じる必要があるのです。 

こうした問題の解決のため、監事の設置が求められました。改定案では、監事のうち1人以上は外部から選任し、区分所有者からも選任することが望ましいとされています。これにより、管理の透明性を高め、トラブルを未然に防ぐことが期待されます。 

第三者管理者方式マンションの導入状況 

外部管理者方式(第三者管理方式)を導入する管理組合は増えています。国土交通省の「第三者管理者方式に関する実態調査」によると、回答した管理会社のうち、自社が管理者として選任されている事例の割合について、「あり」と答えた管理会社は35%、「なし」は65%でした。回答があった130社のうち、45社が第三者管理の管理者になっていると回答しています。理事のなり手不足の進展により、「あり」の割合はさらに高まる可能性があります。 

資産毀損リスク 

外部管理者方式(第三者管理方式)では、管理会社と同じ会社あるいはグループ会社が管理者となり、組合の通帳と印鑑を同時に保管するケースがあります。組合員である区分所有者が気づかないうちに、不正な支出や横領などで資産が毀損するリスクを負います。 

不正を防ぐには、監事が通帳か印鑑のいずれかを保管するなど、同時保管を避ける仕組みを講じることが重要です。第三者管理に関する法整備は十分ではなく、管理組合の資産を守る対策が求められています。 

そもそも外部管理者方式(第三者管理方式)とは 

そもそも外部管理者方式(第三者管理方式)とは、通常はマンション管理組合の理事長が務める区分所有法上の管理者を、第三者に任せる方法です。管理者は、管理組合の業務を執行する責任者となります。 

管理組合は、区分所有者による理事会が運営を担う方法が採用されています。しかし、高齢化の進展などにより、役員のなり手不足、専門知識の不足などの課題が生じています。マンション管理会社の社員やマンション管理士などの専門家が運営することで、役員不足を補えるだけでなく、プロの知見を生かした運営が可能になるでしょう。 

具体的な業務としては、修繕積立金の管理や総会の開催、修繕計画の策定、住人への連絡といったものが挙げられます。例えば、マンション価値の維持に重要となる大規模修繕工事の実施にあたっては、建築士や管理会社が蓄積してきたノウハウや専門知識を活用して計画を立案することで、円滑かつ適切な実施が期待できます。 

外部管理者方式(第三者管理方式)を利用するケースが増えている理由 

マンション管理組合において、外部管理者方式(第三者管理方式)第三者管理方式を利用するケースが増えている理由を解説します。 

理由1:区分所有者や居住者の高齢化 

理由の一つは、区分所有者や居住者の高齢化です。国土交通省が5年ごとに実施するマンション総合調査によると、2018年度の調査では、世帯主の年齢が60歳代の割合は全体の27.0%、70歳代以上は22.2%に達しました。2009年度調査では、60歳代が18.4%、70歳代以上が7.3%です。この20年で大幅に増加したことがわかります。 

築30年以上のマンションでは、30代や40代で購入した人が60代、70代に達し、多くの所有者、居住者が高齢者になっていると考えられます。組合役員になる人材が不足する可能性があり、適切な運営に支障をきたす懸念が生じます。こうした状況を踏まえ、新たな管理方法の導入が求められているのです。 

理由2:マンションの経年化 

建物の経年化が進んでいることも、第三者による管理が広がる理由です。国土交通省が公表している「分譲マンションストック数の推移」によると、2022年末時点のマンション戸数は、約694.3万戸でした。このうち、築年数40年を超える物件は125.7万戸に上ります。この数は今後も増加し続け、20年後の2042年末には445万戸になると見込まれているのです。 

経年化が進むと、区分所有者や居住者の高齢化も進みます。建物の老朽化に伴い、大規模修繕工事が必要になる可能性も高まるでしょう。一方で高齢化による役員のなり手不足などにより、組合がうまく機能しない懸念が生じるのです。 

理由3:標準管理規約の改正 

2016年の国土交通省による「マンション標準管理規約」の改正で、第三者管理の認知度が高まりました。マンション標準管理規約は、管理規約のガイドラインを示すため国土交通省が作成した文書です。 

従来、管理は理事会が中心となるのが一般的でした。しかし、理事の担い手不足が顕在化する中、2011年の改正で、理事になる要件のうち居住している区分所有者に限定することが撤廃されたのです。さらに、外部管理者方式(第三者管理方式)に関する条文が2016年の改正で追加されました。これにより、外部に管理を任せる基盤が整い、多くの管理組合が検討するようになったのです。 

理由4:無関心層の増加 

外部管理者方式(第三者管理方式)を利用するケースが増えているのは、管理に対する区分所有者の関心が低下していることも関係しています。特に、働き盛りの若い世帯は仕事や生活に追われる中で、休日を理事会活動に割きたくないと考えるケースも珍しくありません。 

管理に無関心な層が増える中、専門的な知識や経験も求められるマンション管理は、費用を支払ってでも専門家に任せた方が良いという考え方が広まっています。 

理由5:投資用マンションの増加 

投資用として物件を購入する層が増えていることも、外部管理者方式(第三者管理方式)第三者管理方式が広がる背景にあります。投資目的で物件を購入する場合、自らが居住しないため組合運営には興味が薄く、積極的に関与しようとしない傾向があります。投資物件が遠方にある場合、物理的な距離が障壁となり、役員としての活動が難しくもなるでしょう。 

外部管理者方式(第三者管理方式)の種類とは 

マンションの外部管理者方式(第三者管理方式)には大きく3種類があります。それぞれ解説します。 

外部管理者方式(第三者管理方式)についてもっと知りたいという方は、本サイトの次の記事をぜひご覧ください。 

外部管理者方式(第三者管理方式)とは?マンションが管理不全に陥る前に今できることとは 

種類1:理事・監事外部専門家型又は理事長外部専門家型 

外部の専門家が管理組合の理事会(理事長、副理事長、理事など)に加わり、区分所有者である他の役員と共同で組合運営に携わるタイプです。マンション管理士、管理会社社員などが専門家として、管理会社の選定や大規模修繕工事、設備工事などの重要事項の検討に関与します。 

所有者以外の視点も入れることが可能となり、理事の負担を軽減できます。一方、外部の管理者と、管理事務を担う管理会社との関係が深い場合、管理会社の利益を優先することなどで、利益の相反が生じる可能性もあります。第三者が理事会に加わる方式は、専門性を活用しつつ管理組合の運営を適正化するのに有効ですが、選定や監視には十分注意を払うことが重要です。 

種類2:外部管理者理事会監督型 

外部の専門家が管理者を務め、マンションの理事会が監事的に管理者を監視する形式です。このタイプでは、専門家が組合運営の中心的な役割を担い、理事会としては監督に特化します。監視する立場の理事会の役員は、別の専門家を選任することも可能です。 

この方式の導入により、管理業務の執行は専門家が担い、理事会は監督を行うというように役割が明確化します。管理費の滞納発生時における回収業務や反社会的勢力への対応、被災時など、専門性と柔軟性が求められる場面に有効です。 

しかし、管理者が工事会社と結託するなど、管理組合との利益の相反が生じる懸念もあります。理事会による適切な監視体制が求められます。 

種類3:外部管理者総会監督型 

第三者の専門家が管理者となるのは外部管理者理事会監督型と同じですが、理事会は組織されず、監視は管理組合総会で担う形式です。外部への委託を最も進めた形といえます。 

理事会メンバーを選ぶ必要がなくなり、区分所有者の負担を大幅に軽減できます。一方で、総会よりも意思決定が迅速にできる理事会がないことで外部の管理者への依存度が大きくなるため、不正行為が行われる可能性が高まります。管理組合が適切にチェック機能を発揮できるかが重要なポイントになるでしょう。監事や監査法人が監督を行う体制の構築などを検討することが大切です。 

外部管理者方式(第三者管理方式)のメリットとは 

外部管理者方式(第三者管理方式)のメリットを詳しく解説します。 

区分所有者の負担が軽減される 

外部管理者方式(第三者管理方式)は、管理組合の業務執行を第三者に任せることになるため、区分所有者が担う業務を軽減できます。理事会の役員を輪番制にしている組合もありますが、専門的な知識の不足や、モチベーションの低い人もいることから円滑に回らなくなるケースもあります。第三者管理とすることで、理事の選出に苦労することも減るでしょう。 

管理内容が適正化される 

外部管理者方式(第三者管理方式)を導入することで、管理内容の適正化につながります。プロが持つ専門知識と経験が管理組合の運営に生かされるためです。管理費を滞納している居住者への対応や、大規模修繕計画の適切な修正など、従来は解決に時間がかかった課題にも、プロの知見を生かした対応が期待できるでしょう。 

スピーディな意思決定が実現する 

スピーディな意思決定が実現することもメリットです。プロに管理を依頼することで運営体制が整いやすく、マンション管理に関する豊富な知識とノウハウで効率的な管理が期待できるでしょう。管理組合の意思決定がスムーズになり、迅速な対応が可能になります。 

外部管理者方式(第三者管理方式)のデメリットとは 

外部管理者方式(第三者管理方式)のデメリットを解説します。管理費の上昇や不正のリスクなどに注意が必要です。 

管理費が上がりやすい 

外部管理者方式(第三者管理方式)を導入すると、外部への報酬が必要になるため、組合員が払う管理費が増える可能性があります。経済的な負担を軽減するためにも、外部管理者方式(第三者管理方式)の導入時には、他の支出を見直すなど管理費上昇を抑える検討や、組合員の理解を得られる説明が不可欠です。 

利益相反のリスクがある 

第三者管理で特に注意するべきなのは、利益相反行為です。本来、外部の専門家はマンション管理組合にとっての利益を優先しなければなりません。しかし、管理会社から派遣された管理者や、関連業者とつながりが深い専門家では、会社側の利益を重視して不要な工事を行う可能性も排除できません。実施が必要な工事だとしても、競争原理がはたらかずに費用が高額になる恐れもあります。 

国土交通省の「第三者管理者方式に関する実態調査」によると、管理事務を実施するマンション管理会社の部署と、管理者としての業務を行う部署との関係では、42%が同一部署かつ責任者も同じでした。管理組合側では委託内容の精査や実施状況の確認がしにくい可能性もあるため、監視体制の構築が不可欠です。 

運営のノウハウが蓄積しにくい 

管理組合を運営するノウハウが得にくくなる点もデメリットです。運営を外部のプロに任せることになるため、区分所有者側にはノウハウがほとんど蓄積されません。輪番制の場合に行われるはずの組合運営知識や経験の引き継ぎがなくなることも、ノウハウの喪失につながります。管理のあり方の改善に向けて検討する機会が失われる可能性もあるでしょう。 

従来の管理方式に戻しにくくなる 

組合員が主体となる従来の管理に戻しにくくなることにも注意が必要です。管理の知見が引き継がれない点に加え、組合員の管理に対する当事者意識が薄れるためです。従来方式に戻すには相当な労力と時間がかかるでしょう。さらに、管理規約で、管理者の委託先を管理会社などに限ると明記されるケースもあります。この場合、規約を改正しないと管理者の交代もできず、従来方式に戻すハードルがさらに高くなります。 

マンション管理担当者からのコメント 

昨今、大手含めて様々な管理会社で外部管理者の導入が進んでおりますが、法的な整備は十分ではありません。管理組合の資産を守っていくためには、法的な整備を待つだけでなく、監事の設置もひとつの方法です。とはいえ、第三者監事の事例はまだ多くありません。また、費用も高額になりやすく、小~中規模のマンションでは、第三者管理監事を導入する費用を捻出することが困難です。第三者監事を設置するこはとは理想ではありますが、管理組合の状況に応じて、様々な方法を検討していくことが必要です。 

まとめ 

外部管理者方式(第三者管理方式)は、マンションの維持管理で専門性を高められる点や組合員の負担を軽減できるなどのメリットがある一方、利益相反の懸念や運営ノウハウを得にくくなるといったマイナス面もあります。外部管理者方式(第三者管理方式)を導入する場合でも、組合員が管理に対する意識を持ち続けることが重要です。管理を任せきりにするのではなく、運営状況を把握し、必要に応じて管理者に意見を述べるなど、主体的な関与を続ける仕組みが求められます。管理方式について迷う場合は専門家に相談しつつ、それぞれのマンションに最適な管理方式を選択していくことが大切です。 

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監修者

藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO

昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
資産運用領域で日本No.1の会社を目指し日々経営にあたっている。

マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
書籍「収益性と節税を最大化させる不動産投資の成功法則」や「収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則」を発売中。

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