社長ブログ〜積小為大〜
民法改正の影響 パート3
毎度お世話になります。
大和財託の藤原です。
毎日のように新型コロナウイルスの報道が世間を騒がせています。
日経平均株価は昨日一時17,000円を割り、景気先行き不透明感が漂っています。
観光・宿泊・飲食店などを生業とする会社は、かなり厳しい状況に追い込まれています。
先日も大阪なんばあたりに出かけましたが、全く人がおらず数か月前とは別世界です。
インバウンド客で入れなかった飲食店にも予約なく入れましたが、店内はまばらでした。
大阪北新地の飲食店も売り上げが半分以下に落ち込んでいるようです。(行きつけのお店の方からのヒアリング)
職業柄、街を見て回るのがすきなのですが、小中規模のホテルには明かりがともっていないところも出てきましたし、民泊や簡易宿所は事業撤退による売却案件も水面下で入ってきます。
そのほか、メーカー系では部品が入ってこず完成品が出来ないという事態にもなっています。
建築資材も一部で止まってきており、トイレ、ユニットバス等で一部は受注中止になりました。
当社は事前に資材確保をしていたこともあり、今期引渡し分は何とか確保しましたが、来期以降分は不透明になっています。
中古のリノベーションでユニットバスを入れ替える時もありますが、その資材も納期不透明感が出始めてきました。
このようにあらゆる産業に影響が出始めてきましたので、当社としても動向に注視してまいりたいと考えております。
株価は下落していますが、このような時でも賃貸経営・不動産投資は本当に安定しています。
毎月安定的に収入が入ってくるのは、こういう時期だからこそ強みを発揮していると感じます。
(お客様もそうですし、多数の物件を保有している当社も恩恵を受けています)
今回のコロナショックにより、不動産投資・賃貸経営の安定感が再度見直されるのではないかと考えております。
物件価格自体はどうなっていくのか、についてですが住居系収益不動産に限って言えば、外的要因は金融機関の融資姿勢次第であるため、直接的には現在の株式マーケットの影響は受けにくいと考えています。
当社としてはこれからも収益不動産を活用した資産運用サービスを提供し、社会に貢献してまいります。
さて、本題です。
前回の続きとなります。
「民法改正による不動産実務への影響」についてです。
前回、前々回の記事はこちら
・民法改正の影響 パート1
・民法改正の影響 パート2
改正民法が2020年4月1日より施行されます。
不動産実務(賃貸借実務)の上での対応すべきポイントをピックアップして解説しています。
■契約締結時の情報提供義務
改正民法で新たに新設された内容となります。
賃貸借契約を「事業のため」に締結する場合には、賃貸借契約に伴う保証契約を締結する際に、保証の委託を受ける個人に対して、主債務の財産状況に関する情報提供を実施することが必要とされました。
(改正民法465条の10)
これは住居の用途ではなく、事務所とか店舗の用途で賃貸借する場合に適用されます。
(自宅兼事務所の場合においても事業のためとなります。)
今回の民法改正における保証に関する大きな目的は、個人保証人の保護強化にあります。
現行民法において事業賃貸借契約に関連し、個人で保証をした場合、あとで多額の債務を負ってしまうことが問題視され、今回の改正で個人保証人がしっかりと判断の上意識決定できるようなルールにしたということです。
具体的にどういった手続きをするかと言えば、
賃貸借契約にあわせて連帯保証契約を締結する時に、賃借人が連帯保証人に対して賃借人自身の資力について情報提供を行い、
連帯保証人候補者はその情報を基に保証契約を締結するかどうかを判断してもらう、
ということになります。
尚、この情報提供に不備が有った場合、保証人は保証契約を取り消すことができます。
(ただし賃貸人が情報提供の不履行を知っていたり、または知ることが出来た場合のみ可能)
情報の不備とは、事実と異なる情報提供であったり、保証人が誤認をした場合などとなります。
以上を踏まえて、どのように物件オーナーとしてはどのような対応をするべきでしょうか。
細かい点は割愛しますが大きく2点です。
①事業のためであるという合意
今の契約書でも用途の記載はありますが、改正民法では明確にしておく必要があります。
②賃借人が保証人に情報提供したことを明確にする
確認書(チェックシート)などにより、連帯保証人から賃借人宛に財産および収支の状況に関する内容の提供を受けた旨の書面を取得し、その書面を賃貸借契約書・保証契約書に添付するなどの対応をする。
ここでいう財産および収支の状況とは、決算書類や不動産・預金などの情報となります。
ちなみに、情報提供義務に関連して、賃貸人には契約期間中も情報提供義務が課せられます。
連帯保証人から主債務の履行状況の開示請求があった場合や、賃借人が賃料未払いが発生した場合(期限の利益喪失時)です。
※期限の利益喪失は家賃滞納で直ちに起きるわけではない。
契約期間中の情報提供義務についての詳細は割愛しますが、改正民法では保証人に対しての情報開示が常に求められるということは、ご理解いただければと思います。
■目的物の一部滅失
賃貸借契約対象物件において、部屋設備が故障したり雨漏りなどで部屋の一部が利用できないケースで、民法の取扱いに変更が加えられました。
・改正前 611条1項
賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
・改正後 611条1項
賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
細かい変更点はいくつかあるのですが、一番大きな変更点は、改正前は賃料の減額を請求することができる、でしたが、改正後は自動的に減額になる、ということです。
よって、4月以降は設備不良・故障により本来持つべき機能を入居者が利用できないときや、雨漏れなどにより一部の部屋が利用できない場合には、賃借人からの減額主張が増加する可能性があります。
では、物件オーナー側はどのような対策を取ればよいのでしょうか。
実は目的物一部滅失等に関する事項は任意規定となっております。
つまり特約で変更することが出来ます。
注意点としては、他の法律(消費者契約法)に抵触しない様、内容は良く検討する必要があります。
いずれにしても、対策を打つことは可能ということはご理解いただけたらと思います。
以上、これまで3回にわたり改正民法によって不動産賃貸借の実務がどのように変わっていくのかをご紹介してまいりました。
ご参考にして頂けたらと思います。
(ちなみに、当社は4月の施行に向けて対応済みですので、当社に賃貸管理をお任せいただいているお客様におかれましては、ご安心くださいませ。)
大和財託株式会社
藤原 正明
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