空き家の増加は全国的な社会問題であり、政府や自治体も課題解消のために法整備や制度導入などを実施しています。空き家増加の原因には、少子高齢化や新築需要の高さなどさまざまな要因がありますが、シェアハウスや民泊のニーズの浸透とともに、空き家活用にも注目が集まっています。空き家のまま放置しておくと固定資産税が増えてしまうなどのリスクがあるため、適切な活用が大切です。
本記事では、空き家問題の現状や税金について解説するとともに、空き家活用方法について事例を交えて紹介します。空き家活用のメリット・デメリットや失敗事例についても紹介するので、空き家を活用する方法を検討している方は、ぜひお役立てください。
目次
そもそも空き家問題とは
「空き家問題」とは、誰も住んでいない住宅が全国で増加している状況を指しています。「空き家」には、別荘などの二次的住宅や入居者のいない賃貸物件、売出し中の中古物件なども含まれますが、国が問題視しているのは上記以外のケースです。
総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」のデータによれば、空き家の総数は2018年までの20年で約1.68倍増加しています。中でも特に「賃貸用、売却用または二次的住宅」等を除く「その他の空き家」の増加が著しく、空き家全体で占める割合が約10%以上も増えています。長年放置されていて、老朽化が激しい住宅の中でも、今後の用途が決まっていない不良債権としての空き家の増加が問題視されています。
従来は地方の方が空き家は多い傾向でしたが、近年は都市部の空き家も増加しており、有効利用が各地で求められています。
空き家問題の現状と課題
空き家増加の理由としては、少子高齢化や人口移動の他にもさまざまな要因が考えられます。ここでは、空き家問題の現状や背景、課題となる要因について詳しく解説します。
空き家問題の現状
空き家は現在どのくらい存在するのでしょうか。総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査特別集計(共同住宅の空き家についての分析)」では、2018年度の日本全体における空き家数は848万9千戸と過去最多で、全国の住宅の約13.6%を占めています。
都道府県別の空き家率に見ると、最も高い山梨県で21.3%、次点の和歌山県が20.3%と2割以上です。一方、空き家率が最も低いのは埼玉県と沖縄県ですが、いずれも10.2%と1割以上は空き家であることがわかります。
データを見ると地方の方が都市部よりも空き家率は高いですが、近年は都市部における空き家も増加傾向にあります。地価が高い都市部の空き家は買い手が見つかりにくく、売却できずに空き家として残りやすいため、都市部でも空き家対策の必要性が高まっています。
空き家が増えている理由
空き家が全国的に増えている理由として、主に以下5つが挙げられます。
- 少子高齢化の影響
- 晩婚化・未婚率の上昇
- 税金が高い
- 新築住宅を求める傾向が強い
- 相続後に解体しないまま残されている
急速に進む少子高齢化により、老人ホームや介護施設、高齢者住宅などへ移り住むケースが増え、住んでいた住宅が空き家となっています。また、子どもを持つ世帯数が減少傾向にあり、親が高齢者住宅に移った後にその住宅で暮らす人がいないことも影響しています。
また、近年は晩婚化や未婚率の上昇が進んでおり、1人暮らしの独身の割合が増えている状況です。マイホームを持つ必要性を感じにくいため、結果的に中古住宅が市場に余ってしまうのです。
固定資産税と都市計画税などの税金も、空き家問題に関係しています。建物のある土地は特例による固定資産税の優遇があるのに対し、空き家を解体して更地にすると特例の適用外となり、固定資産税と都市計画税が高額になります。そのため、建物を残しておいた方が税金面で有利だと判断し、空き家のまま放置する人が多いです。
ただ、2015年の「空き家対策特別措置法」の施行とともに対策が取られ、空き家問題の解消につながると見込まれています。空き家の固定資産額については後ほど詳しく解説します。
海外と比較すると日本は新築住宅を求める傾向が強い点も、空き家が増える要因といえます。国土交通省の「令和3年度住宅経済関連データ」によると、平成30年度の新築住宅着工戸数は約95万戸であるのに対し、既存住宅の流通数は約16万戸と圧倒的に少ない状況です。中古住宅よりも、更地に住宅を建てることを希望する人もいまだに一定数いることがわかります。
さらに、相続した住宅に思い入れが強く、簡単に解体できずに残されているケースも考えられます。移住した子どもが両親の田舎の実家を相続する際に、自分の生まれ育った家を解体したくないという想いから解体できない人もいるでしょう。解体するとしても解体費用がかかるため断念する場合もあります。
空き家が抱えている問題
空き家を放置することで、さまざまな問題につながる可能性があります。空き家が抱えている主なリスクとしては、以下の項目が挙げられます。
- 建物の老朽化や草木による景観の悪化、衛生問題
- 不法侵入や犯罪の温床化
- 災害などによる倒壊や汚損
- 地域評判や不動産相場の低下
- 特定空き家指定の可能性
空き家は手入れされないまま放置され、人が住んでいる建物よりも老朽化が進みやすい傾向があります。景観が悪化し、人の足を自然と遠ざけてしまう可能性があります。また、老朽化した建物や草木には害虫が住み着きやすく、衛生問題につながるリスクも出てきます。
また、誰も管理していない空き家は、ホームレスの不法侵入や犯罪の温床となる場合があります。警察に見つかりにくいという理由で、犯罪グループや反社会組織が拠点として空き家を利用するケースは珍しくありません。周辺で放火や事件が起きた際には、地域住民も巻き込まれやすくなります。空き家の周辺は、ゴミの不法放棄にも使われやすく、治安悪化につながります。
老朽化した建物は、地震や台風など災害によって倒壊や破損の可能性が高いことも懸念点です。屋根や破材などが強風によって飛ばされ、周辺の住宅や通行人に危害が及ぶ可能性があります。子どもたちの遊び場となっていれば怪我やトラブルのリスクも高まるでしょう。安全性に関する対策が万全でなかったと認められれば、所有者が責任を問われます。
地域の評判や不動産の価値が下がる可能性もあります。放置されている空き家は市場価値が低く、売却価格も大きく下がってしまいます。空き家が増えることはすなわち、不動産市場における相場が低下することです。結果、業界や日本全体の景気の低下にもつながると考えられます。
最後に、特定空き家に指定されるリスクについても理解しておく必要があります。前述の通り、政府が2015年に「空き家対策の推進に関する特別措置法」を出したことにより、自治体による指導や助言によって空き家を解消する仕組みが成立しています。ただ、一定期間内に改善が見られないと特定空き家として指定され、特例適用の対象外となり翌年から税金が上がります。
以上のように、空き家は多くの問題の要因となりやすいだけでなく、地域の治安悪化や過疎化にも直結しており、空き家増加の早急な解決が臨まれています。
空き家問題への新しい取り組み
自治体の財政負担の増加や空き家問題の拡大を受けて、空き家問題の軽減や解消に向けた新しい取り組みについて紹介します。
国と自治体の取り組み強化
国や自治体による空き家対策として、以下のようなものがあります。
- 空き家対策特別措置法の施行
- 空き家バンク
- DIY型賃貸
- 解体費用の補助金制度
「空き家対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)」とは、各自治体が空き家を適切に管理、処分するために2015年に施行された法律です。法律による施策には、空き家などに関するデータベースの整備や法定協議会の設置、空き家やその跡地の活用に関する施策などが含まれます。
国土交通省が令和2年に公表した調査データによると、令和元年10月時点で空家等対策計画が策定されている自治体は全体の63%に上ります。また、施行後4年間の間に約1.8万件に対して自治体からの助言・指導または勧告が行われ、約7.5千件に対して除却が進められている状況です。空き家問題解消に向けて有効な施策が取られ、効果が出ていることがわかります。
「空き家バンク」は、空き家情報を各地方の行政や公共団体のホームページ上などで提供する仕組みのことです。空き家の所有者と空き家を利用したい人をマッチングさせるために、公募によって選定された事業者が運営しています。
地元の方々から広報誌上などで空き家情報を広く募集し、移住や交流など利用を希望する人向けに収集、提供します。リフォーム費用の補助制度がある自治体もあり、市場価格がさほど高くない物件も買い手を見つけられる可能性が高まるでしょう。
空き家のうち、戸建て住宅の賃貸利用を促すための対策として「DIY型賃貸」があります。DIY型賃貸とは、借主の意向に沿った住宅の改修ができる賃貸物件のことです。空き家の所有者は、経済的な理由などで修繕やリフォームができなくても、貸し出すことができます。また、借り手側は退去時の原状回復が不要となり、すぐに入居して暮らし始められるなどのメリットがあります。国土交通省の「家主向けDIY型賃貸借の手引き」を参照するとより理解が深まるでしょう。
空き家の解体費用に対する補助制度を設けている自治体も増えています。代表的なものが「住宅セーフティネット制度」です。この制度では、高齢者や低所得者に空き家を貸すことで国から月最大4万円の給付を受けられます。また、補助金制度によっては引っ越し先まで自治体が用意してくれます。
企業などによるビジネス化
企業でも空き家をビジネス化し、有効活用しようとする動きが活発化しています。代表的なビジネスに「空き家管理サービス」があります。空き家管理サービスとは、使用されていない空き家を所有者に代わって管理・運用するサービスです。
具体的なサービス内容は運営会社によって異なりますが、基本的には月額や年額の費用を支払い、清掃や修理・点検、雑草の手入れなど建物や敷地の管理を依頼します。空き家巡回による防犯対策や写真付きの報告などが利用できるものもあります。
他にも、戸建て賃貸やシェアハウス、高齢者住宅、ペット共生型グループホームなど、空き家を他の用途で使えるようにリフォームし、運用する事業も増加傾向にあります。間取りや構造、立地などの条件次第で、さまざまな活用方法が考えられるでしょう。
空き家と税金の関係について
空き家問題の原因で触れたように、税金も深く関係しています。空き家であっても、所有者には「固定資産税」が課されるからです。場合によっては都市計画税も別途課税されるため、さらに高い税金を納めなければなりません。ここでは、空き家に課税される固定資産税について詳しく解説します。
固定資産税とは
固定資産税とは、毎年1月1日時点で住宅や土地などの固定資産を所有する人が支払う地方税です。空き家など居住していない建物も、固定資産税課税台帳に所有者として登録されていれば、その人が納付する必要があります。また都市計画法で市街化区域と定められた地域であれば、固定資産税に加えて都市計画税も支払わなければいけません。
固定資産税額は、土地や建物の場合「課税標準額×1.4%」で計算されます。課税標準額とは、固定資産税評価額をもとに算出される価格で、固定資産税評価額は3年に1度の見直しによって適正価格が付けられています。税率は一般的には1.4%ですが、各地方公共団体によって決められています。
マイホームの建物や土地における固定資産税には、いくつかの特例による優遇措置が用意されています。マイホームの住宅用地については、200㎡までの部分の課税標準は6分の1、200㎡超で床面積の10倍までは3分の1とされる「住宅用地の特例」が利用できます。また、新築住宅の建物部分については3年間(新築マンションなどは5年間)、認定長期優良住宅では5年間(新築マンションなどは7年間)、120㎡相当分までは固定資産税が半額です。
空き家の固定資産税
空き家であっても、居住を目的とした建物が建っている「住宅用地」と認められれば、先述の「住宅用地の特例」が適用されます。また、「居住用財産の譲渡に関する特例措置」によって、以前住んでいた家屋やその敷地を売却した際に、条件を満たすと譲渡所得から3,000万円まで控除できる場合があります。
居住用財産として相続した空き家を売った際の特例には、「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」があります。相続した家屋または取り壊し後の土地を譲渡した場合、要件を満たすと譲渡所得から3,000万円まで控除される制度です。
空き家に使える特例を活用することで、固定資産税の負担を軽減することが可能です。国土交通省や各自治体のホームページなどで、申請期日や条件などの詳細を確認した上で利用しましょう。
特定空き家に指定された場合の注意点
空き家の税金に関して注意しなければならないのが「特定空き家」に指定された場合です。特定空き家とは、倒壊や崩壊の危険性が高い状態や衛生面で有害だと認められた空き家です。景観を著しく損ねている場合や、近隣住民に悪影響がある場合も含まれます。
空き家であっても「土地に健全な住宅が建っていること」という条件を満たしていると判断されれば、「住宅用地の特例」により固定資産税の優遇措置が受けられます。しかし、自治体から特定空き家に指定されてしまうと優遇措置の対象外となり、固定資産税が最大6倍に跳ね上がるのです。
固定資産税と都市計画税の基準日は毎年1月1日なので、1月2日以降に「特定空き家」として指定されると、その翌年から減税がなくなります。
特定空き家はある日突然指定される訳ではなく、一定期間の猶予が設けられています。行政からの助言や指導に対応し、空き家の状況に改善が見られた場合は特定空き家に指定される可能性は下がるでしょう。
h2空き家活用のメリット・デメリット
空き家を放置せず、有効活用する方法は多数あります。最適な方法を選ぶことで収益が得られるなどのメリットがある一方で、活用方法次第で手間やコストの負担が増える可能性もあるため、双方を理解しておくことが重要です。ここでは空き家活用のメリットとデメリットについて詳しく解説します。
メリット
空き家を活用するメリットとしては、以下の項目が挙げられます。
- 収益化できる
- 将来的に再度使えるチャンスがある
- 管理会社に手入れを一任できる
- より高く売れる可能性がある
- 税金の優遇措置が受けられる場合がある
空き家を活用することで、継続的に収益を得られます。空き家のままでは固定資産税を支払う必要がありますが、貸し出すことで家賃収入が発生します。貸し出すための最低限のリフォームや修繕は必要ですが、長期的な収益を得られることを考えると、コストを回収できる可能性は十分にあります。
空き家を活用し続ければ、居住する人がいることで住宅としての機能が保たれ、建物の老朽化をある程度防げるため、将来的に再度使用することも可能です。建物を解体した後や売却した場合は、資産としての物件もなくなってしまいますが、所有していれば子どもや両親、親戚などの住宅として転用できるでしょう。
空き家管理サービスを使って、建物や敷地のお手入れや管理を一任することも可能です。海外など遠方に住んでいて気軽に訪れることが難しい場合でも、定期的な巡回や点検を依頼しておけば住宅の価値を維持できるでしょう。
場合によっては、空き家活用後に市場価値が上がり、高く売却できる可能性もあります。例えば空き家に必要なリフォームを施してビジネス化した後、収益性が高いと認められれば、資産価値が付いた収益物件として売却できます。
前述の固定資産税の優遇措置を受けられる場合もあります。ただ、住宅用地として認められる場合に限るため、適用条件についてよく確認しておきましょう。
デメリット
一方、空き家を活用する上で考えられるデメリットとしては、以下の項目があります。
- 管理や運用のコストがかかる
- リフォームや修繕の初期費用がかかる
- 必ずしも収益が得られる保証はない
- 借り手とトラブルになるリスクがある
- 方法によっては住宅用地の特例が受けられず税額が上がる
空き家の管理・運用には費用や手間がかかります。自分で管理・運用する際には、物件の清掃やお手入れの手間に加えて、現地までの移動費や光熱費も発生します。空き家管理サービスに管理を一任した際は、月額定額などで管理費用を支払わなければいけません。
空き家を活用する際に、リフォームやリノベーションといった初期費用が発生します。どのくらい修繕が必要かによって費用や工事期間は異なりますが、外壁や屋根も工事が必要な場合、費用が高額になる可能性があります。ただ、補助金制度が使える場合もあるので、負担が軽減できないか調べてみましょう。
空き家活用を始めても、収益が必ず発生するとは限らないことも理解しておきましょう。賃貸の需要が見込める都心部では比較的借り手が見つかりやすいですが、郊外や地方など賃貸ニーズが少ないエリアではなかなか借り手が見つからない可能性もあります。契約期間が終わった後、次の入居者が決まらないと家賃収入はゼロです。どのような人に向けて貸し出す物件なのか、最初によく考えた上で修繕する必要があるでしょう。
住宅用地の特例によって固定資産税の優遇措置が受けるためには、「専ら人の居住の用に供する家屋、または一部を人の居住の用に供する家屋(併用住宅)の敷地」であることが条件です。ここでいう「人の居住の用に供する」とは、特定の人が継続して居住することを指しており、民泊など数日間や数週間で使う人が変わる場合、減税措置は適用されないので注意しましょう。
空き家の活用事例5選
ここからは、空き家活用事例を紹介します。空き家問題の解決方法として活用が推奨されている現代、さまざまな選択肢が登場しています。効果的に空き家を活用するためには、物件の状態や立地、希望する用途などをよく検討した上で決めることが大切です。事例を参考に、活用方法を検討しましょう。
戸建て賃貸
空き家を賃貸として人に貸し出すことで、家賃収入が得られます。戸建て賃貸の場合、ファミリー層の需要を獲得しやすく、長期間の利用による収益の安定化が見込めます。地方移住へ注目が集まっている現在、都市部だけでなく地方エリアにおけるニーズも今後高まっていくでしょう。
ただ、借り手が決まらない状況が続くと収益が見込めず、維持費の負担が大きくなる可能性があります。また、退去時の原状回復などでトラブルが起きるリスクも考えられるでしょう。
マイホーム借上げ住宅
定年退職や子育てが終わったタイミングでの空き家活用として、「マイホーム借上げ住宅制度」も有用です。マイホーム借上げ住宅制度とは、マイホームを指定事業者が借上げ運用する代わりに、賃料収入を保証する仕組みです。一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)が国のサポートを受けて運用しています。
一戸建てだけでなく、マンションや共同住宅も対象です。賃貸可能な状態であれば継続的に運用してもらえるため、所有者の負担はほとんどありません。海外に住んでいる人でも、規定の条件を満たしていれば利用可能です。制度を利用している間は、入居者がいない期間も毎月賃料を受け取れる点は大きなメリットといえます。
サブスク住宅
「サブスク住宅」とは、不動産のサブスクリプションサービスのことで、空き家を一定期間だけ貸し出す方法です。ホテルやウィークリーマンションのように期間を決めて貸し出し、滞在料金が収入となります。複雑な手続きが不要で好きな物件を気軽に借りられるため、
貸し出すためにある程度修繕やリフォームが必要ですが、効率的な収益化が期待できるでしょう。コロナ禍や働き方の多様化などの背景もあってサブスク住宅の需要が高まっている現在、収益性の高いビジネスモデルとして注目されています。
建物を解体して土地活用する
空き家を解体して土地を活用するという選択肢もあります。建物の老朽化が進んでいて、修繕にかかるコストが新築と変わらないようなケースだと、解体して更地にしてから土地を活用する方が妥当でしょう。
空き家解体時に国や自治体の補助金を利用できる場合があります。また解体業者の紹介をあっせんしている自治体もあるので、ホームページで確認するか窓口へ問い合わせてみてください。
土地活用の方法は複数ありますが、ここでは以下3つの方法を紹介します。
- 駐車場に転用する
- アパートやマンションなどの賃貸住宅を建てる
- 高齢者向け住宅を建てる
駐車場に転用する
初期費用を抑えた土地の活用方法として、駐車場の経営があります。月極駐車場などでは、アスファルト舗装をせずに砂利の状態でも運用をスタートできます。コインパーキングは設営から経営までを運用会社に一任することも可能です。駐車場化の費用を節約できる上、一括借上げなどで利用状況によらず一定収入を得られる場合もあります。
アパートやマンションなどの賃貸住宅を建てる
更地にアパートやマンションなどを建設し、賃貸物件として貸し出すことで、安定収入が期待できます。アパートやマンションを経営する場合、家賃や共益費などの収入からローン返済額や管理費などの経費を差し引いた分が利益として残ります。
戸建て住宅の賃貸よりも物件数が多く、長期的な収入が見込めます。また、住宅用地の特例による固定資産税の減税措置も適用されるため、節税にもつながるでしょう。
高齢者向け住宅を建てる
少子高齢化が進んでいる現代、空き家を高齢者向け住宅として貸し出す方法も人気です。初期費用がかかりますが、高齢者向けの賃貸住宅や介護施設の需要が高まっており、利用者も増えることが予測されています。長期的な収益化を見越した空き家活用を検討している方におすすめです。
なお、修繕費やリフォーム費用には自治体の補助金を利用できる場合もあるので、ホームページや役場の窓口で相談してみましょう。
売却
老朽化が進んだ空き家を手放したい場合や、管理や税金に関して負担を感じる場合、売却という選択肢を選ぶ人もいます。一口に売却といっても、下記のようにいくつかの方法があります。
- 現状のまま売却する
- 傷や汚れだけ修繕して売却する
- 古家付き土地として売却する
場合によっては、少しリフォームするだけで売却額が上がるケースもあります。住宅の状態や立地、市場価格などを総合的に検討して最適な方法を選ぶことが大切です。
空き家活用の失敗事例
空き家の活用方法にはさまざまな選択肢がありますが、安易に手を出すと失敗してしまう可能性もあります。ここでは、空き家活用での失敗事例として「シェアハウス」「民泊」「リノベーション」という3つを紹介します。最適な空き家活用を目指すためにも、ぜひ参考にしましょう。
シェアハウス
シェアハウスは、特に学生や独身者が多い地域での需要が高い物件運用方法です。アパートやマンションと同様に、複数人の利用料を収入として得られますが、長期的な利用は少ないため収益の安定性は低めです。
また、共用スペースが多い上、利用者同士のトラブルが起きやすく、運営自体が不安定になりやすいことも懸念点です。戸建てなどの空き家をシェアハウスとして転用するためには、大幅なリノベーションや設備が必要となり、初期費用もかかります。利用者のターゲットや人気物件の内装など事前によく調査する必要があるでしょう。
民泊
2018年6月に施行された「住宅宿泊事業法」の追い風もあり、空き家を民泊施設に転用するケースが急増しています。個人でも簡単に空き家を合法的に民泊として運用し、収益を得ることが可能になりました。
ただ、法律では民泊の最大稼働数が180日と定められており、1年から数年といった長期稼働ができる賃貸物件よりも安定性に欠けるでしょう。また、利用者の騒音やマナーなどで近隣住民からクレームが入る可能性もあります。
SNSが浸透している時代において、宿泊者同士のトラブルなどで低評価の口コミが広まり、客足が遠のいてしまうリスクも考えられます。外国人観光客が多い地域では特に民泊の需要が高いため、空き家活用による収益化のチャンスと言われますが、長期的かつ安定した運営を実現するためには工夫が必要でしょう。
リノベーション
リノベーションによって、空き家を新築状態の住まいへと生まれ変わらせることが可能です。ただ、リノベーションに力を入れるあまり、費用を回収するのに時間がかかりすぎる場合もあるので注意しましょう。
築年数の古い空き家をリノベーションして、デザインや間取りを変更することで、貸し出す際に家賃を高くしても入居者が見つかりやすいといったメリットが見込めます。とはいえ、収益性とのバランスを考慮しないと、結果的に損失が大きくなってしまうでしょう。
どこまで工事するのか、立地や周辺環境から利用者をどのターゲット層に絞るのか、といった点をよく検討することが大切です。
空き家の活用方法を提案する業者選定のポイント
空き家の活用方法を検討する上で、必要な工事やサービスを提供する業者や活用方法から相談できる業者は多数あり、どのような視点で業者を選べばいいか迷ってしまうでしょう。空き家活用における業者選定のポイントとしては、以下の項目が挙げられます。
- 対象の地域や物件の種類
- 空き家活用の実績
- 費用相場
空き家活用のためのリフォームや修繕を請け負っている業者の中には、地域密着型の企業や工務店も多く見られます。また、業者によって部分的な修繕工事から大幅なリノベーションまで、得意とする物件や工事分野が異なるため、事前に確認しておくとスムーズです。
空き家活用や転用における実績が豊富な業者は、経験や知識が多く、その物件に最適な活用方法を提案してもらえるでしょう。必要な部分に十分な手入れをしておかないと、運用後に不具合が起きる可能性があります。逆に、不要な部分まで修繕してしまうと建物が傷んでしまうリスクもあるため、的確に判断できる業者を選ぶことが重要です。
空き家の状態や工事内容によって費用は変わりますが、相場と極端に異なる見積もり金額を提示してくる業者には注意しましょう。複数の業者から相見積もりを取り、比較検討することでおおまかな目安費用を把握できます。
まとめ
日本で社会的な問題の1つとなっている「空き家」は、放置することで地域の治安や不動産価格などさまざまな悪影響が考えられます。空き家がいずれ特定空き家に指定されると、固定資産税の優遇措置から外れ納税額が最大6倍に増えてしまうため、所有者にとっても負担です。
国や自治体でも、空き家対策の法整備や補助金制度を設けるなど、課題解決に力を入れています。空き家の増加を解消するためにも、適切な方法で活用することが重要です。どのような活用方法が合っているか、収益は得られるのかなど気になる点について、空き家活用の実績豊富なプロに相談することをおすすめします。
空き家活用の注意点をよく確認し、効果的な運用を行っていきましょう。
監修者
藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO
昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
資産運用領域で日本No.1の会社を目指し日々経営にあたっている。
マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
書籍「収益性と節税を最大化させる不動産投資の成功法則」や「収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則」を発売中。