田舎の土地活用が難しい理由は大まかに3つ挙げられます。
1つは都市計画法や建築基準法に加えて、農地法や森林法など、さまざまな法律の規制を受けること。
加えて、長い間利用されなかった土地は、造成費用などの初期投資がかかってしまうこと。
さらに都市部と異なり土地利用に関する需要が少なく収益性が低いという点も、土地活用を難しくしています。
この記事ではそれらのデメリットを回避して、田舎の土地を活用する方法を解説します。
目次
そもそも田舎では土地活用すべきなのか
田舎の土地であっても、可能であれば土地活用を検討した方がいいでしょう。特に固定資産税が課税されている土地であれば、田舎の土地であってもそれなりの価値があるはずです。ただ税金を払い続けるよりも、何らかの活用方法を考えてみてください。税金を払うのがもったいないというだけでなく、利用していない土地は荒廃が進むことも心配です。放置しておくと、後々余計な費用がかかってしまうかもしれません。
一方、免税点を下回り固定資産税が課税されていない土地は、かなり利便性が低い田舎に立地しているはずです。しかし、条件によってはうまく活用できる可能性があります。都市部と違ってライバルが少ないため、不動産活用や不動産投資において、アイデア次第で意外な結果を残せるかもしれません。
ただし田舎の土地活用は難しい!その理由とは?
田舎での土地活用は、法令上の制限に加えて地方部ならではの難しさもあります。そういった問題点をクリアしながら活用方法を検討する必要があります。
理由1:地形により造成が必要になる
田舎の土地活用が難しい理由の1つめのは、土地の造成が必要になりがちなこと。
田舎の土地で、なおかつ長期間利用されていない場合、原野状に草木が生い茂っていることがあります。伐採には重機を入れる必要があり、意外と費用がかさんでしまいます。そもそも過去に利用されたことがない未利用地の場合は、土地内の段差や起伏の整備が必要になります。
オーシャンビューやマウンテンビューなど眺望がすぐれた場所にある土地ほど、造成には注意が必要でしょう。
また、意外と多いのですが、崖に接する土地の場合はそのままでは建築が認められません。一般に、映画に出てくるような崖上の絶景の家は日本の法律上は建築できないのです。建築確認申請時に崖かどうかを判定されるからです。どうしてもという場合には、建築基準法に適合した擁壁を施工する必要がでてきます。
こういった土地の改良工事、造成工事については、予想以上の費用がかかることがあります。
理由2:規制や法令上の制限が多い
田舎の土地活用が難しい理由の2つめは、法令上の制限が多いこと。これについては次項で詳しく解説します。
理由3:その他田舎特有の事情
田舎の土地活用が難しい理由の3つ目として、そもそもその土地を利用したいという需要が少ない点が挙げられます。ひとくちに田舎といっても、それぞれの土地が置かれた条件は千差万別です。本当に田舎で原野に近い物件の場合は、インフラも整っておらず、電気や水道が使えないこともあります。
観光地や特に景観がいい土地などであれば、それでも何らかの活用方法が見つかるかもしれません。しかし、特に観光名所もない過疎地であれば、活用方法を見つけるだけでも大変でしょう。
ある程度人口が集中する町村部の中心エリアであっても、最寄り駅から遠すぎる場合などは苦戦するでしょう。賃貸住宅を建てても入居者が見つかりませんし、人がいなければ駐車場の需要もありません。
そういった点を踏まえた上で、田舎の土地であっても活用できるプランを考える必要があります。
田舎の土地活用を始める前に知っておきたい規制
冒頭で述べたように、田舎では都市部にはない法令上の制限があります。まずはその点を押さえておきましょう。
市街化調整区域
都市計画区域の中で積極的に都市を整備する地域を「市街化区域」と呼び、できるだけ建物を建てないエリアを「市街化調整区域」といいます。
田舎では市街化調整区域に指定されたエリアが多く、その場合は原則として建築が認められません。実際にはさまざまな例外規定があり、その例外規定をいかに見つけるかも重要なポイントです。
どうしても建築が認められない土地は、駐車場などで活用することになります。
確認方法1:市区町村のシステムを使う
市街化調整区域に含まれるかどうかを確認する場合は、ネットで「都市計画地図 都道府県名」と検索してみてください。ほとんどの都道府県や政令指定都市ではネット上に都市計画地図を公開しており、それを参照すれば確認できます。
確認方法2:役所に行く
都市計画地図の見方に自信がない場合は、市町村役場の担当部署で相談にのってもらえます。都市計画課や土木建築課など、役場により名称が異なるため、案内窓口で「用途地域について調べたい」と尋ねるといいでしょう。
農地法
さらに注意が必要なのは農地法の制限がかかっている場合。農地は農業にしか利用できませんし、そのままでは一般の買主に売却することもできません。そこで、農地を雑種地など他の地目に変更する地目変更登記が必要となります。
この地目変更には、さまざまな法令がかかわってきます。市街化調整区域内の農地を地目変更する場合には、農業委員会の許可(農地法の許可)が必要です。これを農地転用許可(農転許可)といいますが、実はかなり複雑な要件が設定されています。
もっとも要件が厳しいのは、その農地が農業振興地域(農振地域)に指定されている場合。農振の除外申請から始まり、場合によっては年単位の手続きが必要になりますし、そもそも農振除外を認めてもらうのは非常に困難です。そこで、農振農用地の場合は別途活用法を考える必要があります。
農業振興地域(農振地域)の活用方法1:市民農園にする
農振地域内であっても、市民農園として貸し出すという活用方法が考えられます。市民農園なら誰でも開設することができ、農振地域を含めて法令上の立地制限はありません。ただし、市町村の農業委員会の承認が必要で、場合によっては不可とされることもあります。農振地域には「農地の農業利用の増進」という目的があるため、たとえばひとまとまりの農地を分断するような立地の土地では、農業委員会の判断次第で設置が認められません。
また、各ユーザーへの貸し付け面積が10a未満であることや、貸付期間が5年以内であることなども決められています。農園を借りる人は営利目的で作物を栽培することができませんが、自家用作物を植えるほか、児童の教育用途などでの貸し出しが可能です。
市民農園の開設には一定の要件がありますし、用水の確保なども農園開設者が行う必要がありますが、運営を始めてしまえばあまり手間がかからずに農振地域内の土地を活用することができます。農振農用地の制限を外せそうにない場合は、検討してみてもいいでしょう。
まず市町村の農業委員会に相談し、所有する農地で市民農園の開設が認められるか、どのような運営方針を定めればいいのか尋ねてみてください。
農業振興地域(農振地域)の活用方法2:他の農家に貸し出す・売却する
農地を貸し出したり売却するという方法も考えられます。ただし、農地は借りるにも買うにも農家であることが条件になるので、通常の土地よりも賃貸や売却の難易度が上がります。
特に、農地を貸したい場合は一般の不動産業者では対応が難しく、かなり高いハードルを越える必要があります。市町村によりますが、農業委員会が貸し出しを希望する農地を管理し、近隣の農家に紹介していることがあります。まずはこういった制度がないか相談してみて、可能であれば農地の貸し手として登録しておいてください。
近隣の若手農家さんが「借地をして事業を拡大したい」という希望を持っている場合があり、借り手が見つかる可能性もあります。地代に関しては農業委員会で相場を把握していますので、尋ねてみてください。
農地を売却する場合も買受適格が求められるので、法人を含む農家の方にしか買ってもらえません。ただし、農地の賃貸に比べると、農地の売買に対応する不動産業者は多く、物件近隣の会社に仲介を依頼できる可能性もあります。
農業振興地域(農振地域)の活用方法3:営農型太陽光発電
2013年の農林水産省通達で注目を浴びたソーラーシェアリング。正式名称は営農型太陽光発電といい、農地に支柱を立てて、農作物を育てながらその上で太陽光発電を行うことが可能となりました。育てる作物に一定の制限はでてしまいますが、農地を農地として活用しながら発電もできるため、エネルギーと食糧問題の2つを解決できる点が評価されています。
農地の約3m上空に太陽光発電装置を設置するため、これまでの太陽光発電で問題となった、伐採による自然破壊も避けることができ、環境保全にも大きなメリットがあるといわれています。
営農型太陽光発電のメリットは、2020年度から設定された自家消費型の地域活用要件が免除される点。出力10kW以上50kW未満の小規模事業用太陽光発電は、原則として全量買取してもらえなくなりました。電力を自家使用してあまった分を買い取ってもらう、余剰買取しか認められません。しかし、営農型太陽光発電であれば全量買取が可能です。
とはいえ営農型太陽光発電を行うには、農業を行っている必要があります。また、農地法の一時転用許可が必要です。
農業振興地域(農振地域)の活用方法4:農家民宿
要件はありますが、農振農用地に農家レストランを設置することができ、さらにそのレストランに併設する農家民泊が認められることがあります。煩雑な手続きや細かい調整が必要になりますが、実は農家民泊にはさまざまなメリットもあります。
まず、農家民泊や農家レストランについては積極的に広報している都道府県が多く、行政と協力しながら事業を進めることができます。
また、各種補助金が充実しているのもこの事業のメリットです。農林水産省などが、施設のハード面のみならず雇用にかかる助成金も用意しており、うまく組み合わせると円滑に事業を立ち上げることができます。
その反面、農業や漁業にかかわる「付加価値の高い体験ができる環境」の提供が求められます。制度の趣旨を踏まえて、うまく補助金を活用する計画を立ててください。いずれにせよ、非常に細かい法令上の要件を満たした上で成立する事業なので、行政書士などの専門家との連携も不可欠といえます。
【田舎の土地活用の方法15選】一覧表でチェック
ここからは具体的に、田舎でも実行可能な15の土地活用方法を紹介していきます。
それぞれメリットやデメリットがあるので、お手持ちの土地にあてはめてみて、実現可能なプランかどうか検討してみてください。あるいはここで挙げた事例をヒントに、より地域に即したアイデアが見つかるかもしれません。
メリット | デメリット | |
戸建て賃貸住宅 | エリアにより収益性が高い | 空室になった時収入がゼロに |
アパート経営 | 戸建て賃貸より安定 | 必要資金は戸建て賃貸より大きくなる |
資材・重機置き場 | 手間がかからない | 収益性は低い |
産業廃棄物処理施設 | 事業としては需要が高い | 開業のハードルが非常に高い |
トランクルーム | 手軽に始められてそこそこの収益 | 建築確認申請が必要 |
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 行政の補助金が魅力 | 要件が厳しく人件費がかかる |
駐車場 | 手間なく経営できる | 過疎地では需要が見込めない |
太陽光発電 | 利回り10%程度の投資リターン | 売電価格が下がり続けている |
コンビニ | 農振除外の可能性がある | 要件が厳しく素人には申請が困難 |
サテライトオフィス | ウィズコロナの時代に有望 | 魅力ある立地でないと成立しない |
キャンプ場 | ブームに乗れれば有望 | 法令上の制限がかかる場合もある |
サバイバルゲーム場 | 誘致に積極的な自治体も | 森林法の制限などに注意が必要 |
アスレチック施設 | 外遊び人気で注目される | 施設内での事故に備える必要あり |
里山レストラン | かなりの田舎でもチャンスがある | 飲食店としての経営センスは不可欠 |
サブスク住宅 | これから伸びるジャンルとして注目 | まだ運営する事業者が少ない |
戸建て賃貸住宅
土地活用の具体事例としては、一戸建ての賃貸住宅を建てるという方法が考えられます。
地方では「親戚の家の近くに住みたい」という需要もあり、一戸建て賃貸で利回りが付くことも考えられます。地域性に左右されるため近隣エリアの入居率調査を行う必要がありますが、入居者が見込める場合は安定した賃貸経営が期待できます。一戸建て賃貸は一般に入居者が退去しにくい傾向がありますが、特に地方で「この土地に住みたい」という入居者であれば、長く住み続けてもらえる可能性が高いからです。
ただし、アパートと違って戸建て賃貸は入居者が退去してしまうと空室率が100%に。空室リスクに対しては慎重に計画する必要があります。
戸建て賃貸住宅の経営を開始する段階で、どうしても空室が続く場合に備えて「その物件を売却できるかどうか」も考えておくべきでしょう。
あらかじめその地域を得意とする宅建業者に客付けの難易度や売却時の相場などを相談し、出口戦略を踏まえた上で事業をスタートするのがベストです。
アパート経営
田舎であっても、小学校近くや駅近の立地なら賃貸住宅の需要が見込める場合も。一定の入居者が集まりそうであれば、アパート経営も土地活用の候補に挙げられます。一戸建て賃貸に比べてアパートは安定した経営ができるため、多少でも人口が集中している地域ならおすすめできます。
注意したいのは、都市部と違って田舎ではファミリー向けの物件が中心になること。ワンルームに比べて2LDKや3LDKのファミリー向け物件は収益性が低くなることが多く、しっかりとした事業計画を立てておく必要があります。
銀行融資を受ける際に事業計画を提出する必要があり、ここをおろそかにすると資金調達にも問題が出てしまいます。戸建て賃貸に比べて必要な資金が高額になるため、慎重に収支を計算する必要があります。
ウラ技的な知識ですが、市街化調整区域内でもアパート経営ができるケースがあります。すでに述べたとおり市街化調整区域内には建築が制限されますが、都市計画法施行以前から宅地だった土地(既存宅地)には建築が認められることが多く、この場合アパート建築も制限されません(都道府県知事の判断によります)。
もし所有する土地が市街化調整区域内に立地している場合、市町村役場の税務課等で「線引き前に宅地課税されていませんでしたか?」と尋ねてみてください。「宅地課税されていました(既存宅地です)」といわれれば、アパートや一戸建て住宅が建築できる可能性があります。
資材・重機置き場
不動産のマイソク(物件概要書)に「ヤード用地」と書かれていることがありますが、これは「建築できない土地ですが資材置き場になります」という意味です。田舎ではヤード用地の需要もあるので、ある程度時間をかけてじっくりと広告していれば、借り手や買い手が付く可能性があります。手軽に運用できる反面、大きな利益は見込めません。
産業廃棄物処理施設
都道府県知事の許可が必要で、その他にも厳しい要件がありますが、産業廃棄物処理施設として活用できる可能性もあります。産廃施設は不足気味で需要自体はあるのですが、要件が厳しいために新規開業する業者が少ないのが実情です。要件をクリアして産廃施設を設置できれば、事業としては有望といえます。
トランクルーム
都市計画の制限がありますが、コンテナ等を利用したトランクルームを設置する土地活用もよく行われています。設置してしまえばメンテナンスが楽ですし、管理してくれる不動産仲介業者もいます。
ただ、コンテナを利用するとはいえトランクルームは建築物として扱われるので、建築確認申請が必要になります。また、設置できない用途地域(第一種・第二種低層住居専用地域)があるので、建築の専門家の意見を聞き、建築確認申請を行う必要があります。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
田舎では老人福祉法などに基づくデイサービス事業などの需要があり、高齢者向け施設も有望です。
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)やいわゆる老人ホームなどは、都市計画法第34条の「公益上必要な建築物」に該当し、市街化調整区域内でも建築が認められる可能性があります。
ただ、看護師の常駐や定期巡回などの要件が厳しく、簡単に事業を始められるわけではありません。
その点、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)なら食事や介護サービスの提供は必要がなく、入居契約も通常の賃貸借契約を結ぶのが一般的です。
残念ながらサ高住は市街化調整区域内での建築が認められませんが、既存宅地や大規模既存宅地などで要件が緩和されている場合には、建築可能なケースがあります。また、市街化区域や都市計画区域外での建築は認められます。
サ高住の要件は、少なくとも床面積25㎡以上で、バリアフリー化すること。またトイレや洗面施設を設置することに加え、少なくとも安否確認等のサービスを提供することが義務づけられます。
その反面、不動産取得税の優遇措置や、新築時の国費補助を受けることができます。建築費補助の上限は1施設最大1,000万円ですが、変更される可能性もあります。詳しくは国土交通省のウェブサイトなどで確認してください。
サービス付き高齢者向け住宅(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk7_000017.html
また最近のサ高住は老人ホームの機能を備える傾向があり、その場合、一定の要件を満たすと市街化調整区域での建築が認められることがあります。
駐車場
地方都市では人口減少に伴う賃貸建物需要の減少から、アパートやビルを建て壊して賃貸駐車場にする事例が増えています。地方都市はクルマ社会であることが多く、駐車場需要が見込めるという事情もあります。地方自治体が駐車場経営を行う事例も多いです。そこからも底堅い需要がうかがえます。
駐車場経営のメリットは、少ない資金でスタートできること。万が一思ったように収益が伸びなかったとしても、リスクは比較的小さく深刻な赤字になりにくいため、不動産経営初心者でも安心して取り組めます。
一方で、駐車場の収益は低く、大きくもうかることもまれです。
最も注意が必要なのは、税制上の優遇が受けられないという点。アパートなどを建てると土地の固定資産税が6分の1(または3分の1)に減額されますが、建物がない駐車場の場合は本則通りに課税されてしまいます。
将来性に関してはあまり明るい見通しは持てず、地域の特性をよく見きわめた方がいいでしょう。佐賀市などの調査では、都市が空洞化するにつれて駐車場が増え、それが都市の空洞化をさらに促進していると指摘されています。こういったエリアで後発の時間貸し駐車場を設置するのは不利といえそうです。また、田舎とはいえある程度の人口を抱える都市部でないと、そもそも駐車場の需要が見込めません。
太陽光発電
太陽光発電の利回りは10%程度といわれており、売電価格が低下している現在でも事業として十分成り立つ水準にあります。
固定価格買取制度が実施された2012年の産業用太陽光発電の買い取り価格は1kWあたり40円+税でしたが、2022年には10円(または11円)+税と大幅に下落しています。これは日本だけでなく世界的な潮流で、ほとんどの国と地域で売電価格は大幅に低下しています。
しかし、一方で太陽光パネルの高性能低価格化が進んでいることから、現在でも採算が取れる事業となっています。それを受けて資源エネルギー庁では太陽光発電を重要なエネルギー源と位置づけ、今後も拡大や促進をはかる方針を掲げました。
たとえば同庁では、固定価格で買い取りをする制度(FIT制度)から、より市場にあわせたFIP制度に移行させようとしています。将来的に太陽光発電は補助金で成り立つ事業スタイルから、より自由競争が重視されるモデルへと転換していきます。
つまり、日照さえ確保できればあまり工夫の余地がなかった太陽光発電に、一定の事業センスが求められるということです。逆にいえばこれまでビジネスで培った経験を生かし、より収益性の高い事業を行えるチャンスともいえます。
コンビニ
実は農振農用地であってもコンビニエンスストア建築が認められるケースがあります。主要道路沿いで立地がよければ、コンビニを検討してみる価値があるでしょう。場合によってはコンビニFCの本部に連絡すると、借り上げを検討してくれることもあります。
ただしロードサイドのコンビニ用地はかなりの面積が求められるため、土地面積は200~300坪程度はあった方がいいでしょう。また開発許可申請には年単位の期間がかかる場合もあります。
サテライトオフィス
コロナウイルス感染症の拡大により、事務所を地方に設置する企業も増えました。Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせたワーケーションという言葉も生まれ、観光庁が力を入れています。
田舎でも観光資源があるエリアなら、企業のサテライトオフィスとして貸し出しできる可能性があります。また、観光地にコワーキングスペースを開設して成功している事例もあります。
キャンプ場
コロナ禍で注目を浴びたキャンプ場経営。屋外で感染リスクが低いことから、キャンプを楽しむ人口も増えました。日本オートキャンプ協会の調査では、2020年から2021年にかけて、参加人口が23%も伸びたと報告されています。
ただしキャンプ場を設置する場合、立地によっては森林法や自然公園法の制限を受けることがあります。法令の制限がない場合でも「事前に相談して欲しい」と呼びかける市町村が増えました。
キャンプ場開業を計画する場合は、市町村役場のヒアリングからスタートしてください。
サバイバルゲーム場
キャンプ場に比べて専有面積が少なく、比較的手軽に始めやすいことから、サバイバルゲーム場を検討する人も多いようです。新島など東京都の島嶼部で、自治体が積極的にサバゲー場を誘致したことも注目を集めました。
その他の自治体でも、サバイバルゲームをマウンテンバイクやトレイルランなどと同じ森林スポーツととらえ、意外と積極的に誘致している場合があります。
森林法の制限などを受ける場合があるので、具体的に計画する場合は綿密な下調べが必要です。
アスレチック施設
森林をそのまま活用したアスレチック施設が注目を集めています。地方の林地であれば、同様のコンセプトで地形や森林を生かしたアスレチック施設を運用するプランが考えられます。こういった屋外施設運営は、ウィズコロナの時代に有望な土地活用方法といえるでしょう。
ただし毎年事故が起きている点は注意が必要です。一部損保会社がアスレチック施設の損害補償リスクに備える保険を商品化しているので、加入しておいた方がいいでしょう。
里山レストラン
地方都市レベルではなく山深い田舎の場合は里山レストランという選択肢も考えられます。なかなか海外旅行ができない現在、国内旅行に注目が集まっており、特徴のある里山レストランもにぎわっています。
事業が軌道に乗った場合は宿泊施設の併設を検討するなど、多角的展開の可能性も魅力です。ただし、メニューの開発や広告宣伝などには、通常の飲食店経営と同等の経営能力が求められます。
サブスク住宅
最近注目を集めているのがサブスク賃貸住宅です。利用者は5~10万円程度の定額で、全国どこにでも住むことができます。物件は家具家電を備えており、気軽に転居できるのが特徴です。
もし土地上に古家など空き家が立っている場合は、サブスク住宅もおすすめです。ADDressなどのサブスク賃貸住宅運営会社では、空き家提供の窓口を設けています。少ない手間で低リスクの不動産活用ができるので、検討してみる価値はあるでしょう。
田舎で土地活用する際の注意点とは
田舎の土地活用と都市部の土地活用を比べて、いちばん違うのは「多様性」。田舎にはさまざまな地域特性があります。
目的に合った土地活用の方法を選択する
田舎の土地活用を検討する場合、その土地に合った活用方法を選ぶ必要が出てきます。反面、うまく企画が立てられれば、その地域でしかできない土地活用が可能になるかもしれません。
最初から1つの方法に限定しない
そこで、最初から1つの方法に限定して計画するのではなく、さまざまな選択肢の中から、その土地にあった方法を選ぶ方がいいでしょう。間口を広げてさまざまな可能性を排除せず、徐々に計画を絞り込むのがおすすめです。そのために、次のようなステップをふんでください。
地元に詳しい不動産業者の意見を聞く
田舎の土地は、その土地ごとの特色があり、また各種法令上の制限があることはすでに述べたとおりです。そこで、地方の事情に詳しい不動産のプロに相談することは必須です。優秀な宅建業者であればその土地にどんな事業が適しているか提案でき、さらに法令上できることと、できないことを切り分けてくれます。
土地活用に関するプロの意見を聞く
セカンドオピニオンとして土地活用のプロに相談することも大切です。地元の不動産屋さんは幅広い知識を持っていますが、トランクルームの開業や老人福祉法に基づく施設の開業について、専門的な知見は持っていません。
その点、さまざまな業態で土地活用を行う事業者が土地提供を募っています。特にトランクルームは低リスクで始められる業態なので、多くの業者が管理運営を行っています。業者のウェブサイトから手軽に連絡できるので、意見を求めてみるといいでしょう。
不動産の一括査定サイトの中にも土地活用の相談を受け付けている所があります。この場合は駐車場経営やアパート経営など、都市型の土地活用になってしまいますが、大手仲介業者を含めた事業者が活用方法を提案してくれます。
補助金の有無・内容を事前に確認する
サービス付き高齢者向け住宅や太陽光発電については、条件があえば補助金を受けることができます。補助金の申請にはタイミングがあり、建築に着手してしまうと受けることができません。サ高住では建築価格の1割または1,000万円の低い方を上限とする、かなり高額な補助が受けられる反面、計画の初期段階で都道府県の審査を受け、登録通知を出してもらう必要もあります。
また、住宅金融支援機構の融資を受けるにあたり「サービス付き高齢者向け住宅整備事業に係る補助金の交付決定を受けていること」も要件に加わりました。支援機構との事前相談も必要です。
このように、田舎の土地活用においては、早めの事前準備も大切になります。
田舎の土地活用の一般的な流れを確認
田舎の土地活用も、都市部の場合と手順はあまり変わりません。通常は次のようなステップで活用方法を決め、事業化していきます。
1.専門家に相談する
2.市場調査を実施する
3.契約を結ぶ
4.施工を開始する
こういった手順は地域を問わず同じですが、田舎では専門家との相談が特に重要です。田舎に行けば行くほど地域の特性が大きくなり、専門家の意見を聞く必要が増すからです。
1.専門家に相談する
おそらく、ここまで読み進めて「田舎の土地活用は意外と手ごわそうだ」と感じる人も多いでしょう。しかし、不動産や法令に詳しい専門家に相談すれば、多くの疑問を解決できます。その土地ごとに特有の制限や市場性を専門家に判断してもらえば、あとは通常の土地活用と変わるところはありません。信頼できる専門家さえ見つかれば、土地活用に関する迷いを軽減できます。
2.市場調査を実施する
では、土地活用の専門家はどのように仕事を進めているのでしょうか?プロは市場調査にかなりの時間と労力を割いています。
たとえばアパート建築の事業計画を立てる場合には、データで分析するほか、現地を訪問して町を歩きます。現在稼働しているアパートを調べ、築年数や規模をリストアップするほか、カーテンの有無など現況から空室を割り出すといった地道な調査も行っています。綿密な調査で実際の空室率や収益を推定し、それを元に事業計画を立案します。
3.契約を結ぶ
事業計画が決まり融資の見通しも立ったら、いよいよ施工会社等との契約に進みます。賃貸住宅経営であれば建築会社と、駐車場経営であれば管理業者と契約を締結し、事業に着手することになります。太陽光発電についても施工会社と契約を結び、建築に進みます。
契約の前に、複数社の提案を比較検討することは忘れないようにしてください。建築の場合は価格や施工レベルの違いが気になります。太陽光発電の場合も、どんなメーカーのどんなパネルを設置するのかなど、相見積をとって比較した方がいいでしょう。
4.施工を開始する
施工開始後にオーナーがすべきことはありませんが、事業によっては収益が発生するまでの期間が長くなることがあります。
一般的な賃貸物件の建築でも6か月から1年ほどはみておく必要がありますし、農振地域など制限が多い立地の場合は開発許可申請にかなり時間がかかることもあります。あらかじめ事業開始までに必要な期間を見積もっておき、その間の資金計画を立てておくようにしましょう。
田舎の土地活用が難しい場合の対処法
ここまで解説してきた方法を試してみても、活用しづらい土地もあります。建築基準法上の道路に接していない土地や、過疎化が進み需要がない土地では、そもそも打つ手が限られてしまいます。
そうした場合、ただ土地を所有していても、生い茂った雑木や土地上の古家の崩壊などで近隣に迷惑をかけてしまうことが心配です。それなら、何らかの方法で手放した方がいいかもしれません。
対処法1:売却する
土地を手放す場合、まずは売却を検討すべきでしょう。
活用方法が難しい土地に、無理をしてアパートや施設を建てて赤字経営を続けるよりも、その土地を必要とする人に売却する方がリスクも少なく、損失を出さずに処分できます。建築が可能な地域であれば、田舎であっても一定の価格で売却できる可能性は十分あるでしょう。
また建築が認められず、一見すると活用方法のない土地であっても、売却できないとは限りません。一般に都市部の土地に比べて売却にかかる期間は長くなりますが、仲介を引き受けてくれる宅建業者が見つかるようなら相談してみてください。市街化調整区域や都市計画区域外の土地を取り扱う業者は、それなりに知識が豊富で、場合によっては新たな活用方法を提案してくれるかもしれません。
ただし、注意点としては仲介業者選びが難しいことが挙げられます。一般に大手仲介業者は田舎の土地、特に市街化調整区域や都市計画区域外の土地を積極的には扱いませんので、地元密着型の業者のなかから信頼できる会社を探すことになります。
対処法2:寄付する
どうしても売却が難しい場合は、何らかの方法で寄付や無償譲渡を検討することになります。とはいえ現状では市町村で寄付を受け付けてくれることはほとんどありません。管理費がかかる上に、市町村有地になると固定資産税も発生せず、税収が減ってしまうからです。
しかし2021年2月の法制審議会答申で、所有者の申請により所有権を国庫に帰属させる制度の新設が盛り込まれました。今後は一定の条件を満たせば国に引き取ってもらえる制度が整備されるはずです。
「それまで待てないので、親戚や知人に譲ってしまおう」という話になった場合は、贈与税に注意してください。市町村役場で固定資産税評価証明書を取得し、110万円を超えている場合は課税対象となる可能性があります。また、無償で譲った土地でも名義変更(所有権移転登記)には費用がかかるので、あらかじめ誰が費用を負担するか決めておく必要もあります。
対処法3:所有権を放棄する
現状で、確実に所有権を放棄できるのは相続が発生した時です。ただし「この土地はいりません」というふうに個別の財産を選んで放棄することはできず、被相続人の財産に対する相続権の一切を放棄することになります。現預金などプラスの財産も放棄せざるを得ず、また一度相続放棄すると、撤回することはできません。
相続放棄のタイミングも決まっており、自分のために相続が発生したことを知った時から3か月以内に申述する必要があります。相続放棄の申述は、家庭裁判所に対して行います。
まとめ
この記事では田舎の土地活用について、法令上も社会的需要についても、さまざまな制限があることを解説しました。その上で具体的な活用事例を挙げ、土地活用のヒントを提供しています。
田舎の土地活用はその土地の特性次第で変わってきますから、まずは地元に詳しい不動産業者や土地活用の専門家に相談してみてください。
ここに挙げた15の活用事例からアイデアを広げて、その土地を生かした事業計画が立てられるかもしれません。事業計画を実施に移す段階では、都市部でも田舎でも手順は変わりません。ただ、補助金や助成金がもらえる場合は、計画の早い段階で調査し対応するようにしてください。
田舎の土地活用に関するよくある質問
最後に、田舎の土地活用に関してよくある質問と回答をまとめておきます。特に上物が立っている土地をお持ちの方は注意してください。
Q1.田舎では土地活用すべきですか?
土地活用をすべきかどうか、最終的には所有者の判断になりますが、一般論としては何らかの活用を検討すべきでしょう。少なくとも固定資産税分を捻出することが期待できますし、何もせず放置しているよりも周辺に迷惑をかける確率を減らすことができます。
遠方にある実家の土地などであっても、駐車場やトランクルームとしての活用はできます。自宅近くの土地であれば、アイデア次第でさまざまな活用方法が考えられるでしょう。
Q2.建物がある場合は更地にすべきですか?
土地上に古家がある場合「ひとまず更地にした方がいいでしょうか?」という相談はよくあります。しかし、簡単に更地にすることはおすすめできません。
一般に住宅が立っている土地は、小規模宅地の特例などにより、固定資産税が6分の1(または3分の1)に軽減されています。建物を撤去すると税額が本則に戻ってしまい、これまでの6倍もの課税額となってしまいます。
土地を売却する場合も、更地にした方が売りやすい場合と、古家を残した方がいい場合があります。信頼できる不動産業者と相談した上で、建物を解体すべきかどうかを判断してください。
監修者
藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO
昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
資産運用領域で日本No.1の会社を目指し日々経営にあたっている。
マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
書籍「収益性と節税を最大化させる不動産投資の成功法則」や「収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則」を発売中。