実家を相続するときの選択肢・手順とは?相続税の節税方法を解説

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実家を相続する際は、さまざまなことを考えなければなりません。相続人同士での話し合いや相続税の計算などもあります。この記事では、実家を相続する場合のスケジュールや、実家の相続に伴って発生する税金の種類について解説します。相続した実家をどのように扱えばいいかについての選択肢も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。 

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そもそも相続とは

相続とは、亡くなった人の財産について権利や義務を引き継ぐことです。相続において、亡くなった人は被相続人、財産を引き継ぐ人は相続人と呼ばれています。たとえば、ある人が亡くなって被相続人になった場合、その人の配偶者や子どもなどが相続人になります。また、相続により引き継がれる権利や義務とは、現金、預金、有価証券、債務(借入金など)、権利(貸借権など)などです。 

実家を相続する際に押さえておきたいスケジュール

実家を相続することになった場合、基本的に以下の流れで手続きが進みます。 

1.被相続人が他界する 

2.遺言書の有無を確認する 

3.遺産・債務の有無を確認する 

4.相続放棄・限定承認の手続きをする 

5.準確定申告を行う 

6.遺産分割協議書を作成する 

7.相続税の申告・納付を行う 

期限が設けられている手続きもあるため、被相続人が他界したら漏れのないように対応しなければなりません。それぞれの手続きの内容について、以下で詳しく解説します。 

被相続人が他界する

被相続人が他界すると相続が発生します。葬儀の準備とともに、相続の手続きについても検討する必要があります。

遺言書の有無を確認する

相続については基本的に法律に基づいて対応しますが、遺言書がある場合はその内容が優先されます。そのため、被相続人が他界したら、最初に遺言書の有無を調べましょう。エンディングノートには法的拘束力がありませんが、作成されている場合は確認しておくと手続きをスムーズに進められます。 

遺産・債務の有無を確認する

被相続人が契約や取引をしていた銀行、証券会社、保険会社などの金融機関へ連絡し、遺産・債務の有無を確認します。 

相続放棄・限定承認の手続きをする

被相続人の財産を引き継ぐかどうかは、それぞれの相続人が自分の意思で決められます。多額の債務があると、相続放棄や限定承認などが行われる場合が多いです。相続放棄とは、被相続人の権利と義務の引き継ぎをすべて拒否する方法です。相続放棄については、各相続人が単独で手続きできます。一方、限定承認とは、被相続人のマイナスの財産をプラスの財産で精算し、それでもプラスの財産が残る場合のみ承継する方法です。マイナスの財産とプラスの財産のどちらが多いか分からない場合、ひとまず限定承認を選択して細かく計算するケースがあります。相続放棄や限定承認ができるのは、相続の開始を知ってから3カ月以内です。

準確定申告を行う

準確定申告とは、被相続人が亡くなった年の所得金額と税金を計算し、申告と納税をする手続きです。1月1日から亡くなった日までに確定した分を対象に行います。準確定申告の期限は、被相続人が相続の開始を知ってから4カ月以内です。 

ただし、被相続人が亡くなった年の年金収入が400万円以下、その他の所得が20万円以下であれば、準確定申告は必要ありません。 

遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議書とは、被相続人の遺産を相続人でどのように分け合うかをまとめる書類です。被相続人が遺言書を作成していなかった場合は、遺産分割協議書を作成する必要があります。遺産分割協議書を作成するには、相続人全員での遺産分割協議が必要です。全員の合意を得たうえでその内容を遺産分割協議書にまとめ、さらに全員の署名押印も行わなければなりません。 

遺産分割協議について期限は定められていないものの、相続税の金額に影響を与えるため、早めに対応すべきです。予期していない人物が相続人に該当することが判明し、連絡ややり取りに時間がかかるケースもあります。遺産分割協議書の作成に悩む場合や、手続きの進め方が分からない場合などは、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家へ相談しましょう。なお、実家の相続については、2024年4月から相続登記が義務化される見込みです。適切に対応するためには、疑問や不安があれば積極的に専門家を頼るのがおすすめです。 

相続税の申告・納付を行う

相続においては、相続税の申告や納付が必要です。期限は、相続の開始を知ってから10カ月以内とされています。 

ただし、相続する財産が相続税の基礎控除額の範囲に収まっていれば相続税は発生しません。申告も不要です。相続税の基礎控除額は「3,000万円+法定相続人の人数×600万円」で計算できます。相続については複雑な部分も多いため、必要に応じて税務署や税理士などにも相談しながら対応を確認しましょう。

実家の相続にかかる税金の種類とは

実家を相続する場合、相続税と登録免許税がかかる可能性があります。それぞれどのような税金なのでしょうか。以下で詳しく解説します。

相続税 

相続税とは、被相続人の財産を取得した人がその評価額に応じて納める税金です。すでに触れたとおり、財産が相続税の基礎控除額の範囲内であれば、相続税は発生しません。実家の評価額は、土地は路線価、建物は固定資産税評価額によって算出できます。 

なお、実家以外の財産も相続した場合、相続した財産すべてをまとめた評価額に対する相続税を納める必要があります。 

相続税額早見表

相続税を算出するには細かい計算が必要ですが、国税庁が公開している相続税額早見表により相続税の総額を把握できます。法定相続分に応ずる取得金額に対する税率や控除額をまとめると、以下のとおりです。 

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額 
1,000万円以下 10% - 
1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円 
3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円 
5,000万円超から1億円以下 30% 700万円 
1億円超から2億円以下 40% 1,700万円 
2億円超から3億円以下 45% 2,700万円 
3億円超から6億円以下 50% 4,200万円 
6億円超  55% 7,200万円 

たとえば、相続人の子どもが1人であるとします。法定相続分は配偶者と子どもでそれぞれ2分の1ずつです。被相続人の財産が1億円の場合、子どもは5,000万円を相続できます。納める税額は「5,000万円×20%-200万円=800万円」であると分かります。

登録免許税 

登録免許税とは、登記の手続きにおいて納める税金です。相続登記における登録免許税の税額は、不動産の固定資産税評価額の0.4%とされています。 

売買や贈与によって所有権を移転する際の登記における登録免許税の税額は2%であり、相続登記の登録免許税は税額が低く押さえられています。 

実家の相続で役立つ相続税の節税方法を解説

実家を相続する際は、工夫次第で節税も可能です。実家の相続における節税方法は主に4つあります。ここでは、それぞれの節税方法について解説します。

節税方法1:小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、被相続人が所有していた自宅などの土地の評価額を減額できる特例です。被相続人の死亡により実家を相続する場合、特定居住用宅地等に該当する土地は、330平方メートルまでについて評価額を80%減額にできます。たとえば、実家が建っている土地の評価額が4,000万円であれば、小規模宅地等の特例の適用により評価額が800万円とみなされます。 

基本的に、小規模宅地等の特例を利用できるのは、亡くなった被相続人と同居していた配偶者などです。亡くなった被相続人と同居していなかった子どもが利用するには、一定の条件を満たす必要があります。具体的には、マイホームを保有しておらず、被相続人に配偶者がいないことが条件です。 

節税方法2:相続空き家の3,000万円特別控除

被相続人が亡くなって空き家になった実家を売却する場合、3,000万円特別控除を受けられます。売却益から3,000万円を差し引けるため、仮に売却益が3,000万円以下なら所得税はかかりません。 

ただし、この特別控除を適用できるのは、被相続人が生前一人暮らしだったケースのみです。また、昭和56年5月31日以前に建築された住宅であり、令和5年12月31日までに売却する必要があります。さらに、売却金額が1億円を超える建物については適用できません。 

節税方法3:配偶者の相続税額の軽減

被相続人の配偶者に対しては、相続税額を軽減する優遇が設けられています。法定相続分相当額または1億6000万円のうち多い金額までについて、被相続人の配偶者は相続税が発生しません。 

配偶者の相続税額の軽減を適用するには、3つの条件を満たしている必要があります。 

1つ目の条件は、法律上の配偶者であることです。婚姻届を出している必要があり、事実婚や内縁関係では適用できません。 

2つ目の条件は、相続税の申告書を提出することです。相続税がかからないとしても、配偶者の相続税額の軽減を受けるには申告が必要となります。 

3つ目の条件は、遺産分割協議が完了していることです。相続人全員での話し合いにより、それぞれが相続する財産の割合が決定していなければなりません。 

節税方法4:相続財産譲渡時の取得費の特例

相続財産譲渡時の取得費の特例とは、相続した実家を相続税の申告期限から3年以内に売却した場合、相続税の一部を取得費に加えて計上できる制度です。 

不動産の売却益は、売却金額から取得費や譲渡費用などを差し引いた金額です。相続によって取得した実家については、被相続人の取得費がそのまま引き継がれています。相続財産譲渡時の取得費の特例を利用すれば、被相続人の取得費だけでなく、相続税額の一部も売却金額から差し引けます。売却金額から差し引ける金額が増えるため、税金を抑えることが可能です。 

ただし、相続財産譲渡時の取得費の特例は、相続空き家の3,000万円特別控除との併用は認められません。 

実家の相続における注意点を解説

実家を相続する際は、気をつけたいこともあります。相続が発生するとトラブルや課題も生じやすいため、状況に応じて対処しましょう。ここでは、実家の相続における注意点について詳しく解説します。 

共有名義はトラブルになりやすい

実家の相続においては財産の分割が難しく、共有名義が選ばれるパターンもあります。共有名義とは、複数人で1つの不動産の所有権を持つ方法です。ただし、共有名義はトラブルにつながりやすいため、実家を相続する際は可能な限り避けましょう。 

たとえば、共有名義となっている実家を後から売却したくなった場合、共有している全員が同意する必要があります。1人でも反対すれば売却できません。関係が希薄な人物がいたり、共有名義の誰かが認知症になったりすると、スムーズな売却が難しくなるリスクがあります。 

実家を放置して空き家にしない

実家を相続したものの、その後どうすればよいか分からず放置してしまうケースもあります。放置して空き家のままになると、建物の劣化やシロアリの被害の発生などさまざまな不都合が発生するため、要注意です。2015年2月には「空き家対策特別措置法」が施行され、特定空き家に該当すればペナルティの対象にもなります。相続してから3年以内なら売却についてさまざまな支援を受けられるため、早めに対応を考えましょう。

建物を壊すと固定資産税が上がる

無計画に実家の建物を壊せば、固定資産税が上がります。住宅が建っている土地の固定資産税は、最大で土地評価額の1/6に減額される特例があるためです。実家を相続した時点では特例が適用されており、土地の固定資産税が減額されている状態となっています。 

空き家として放置してはいけないものの、実家の建物を壊す際はその後の土地の活用方法についてあらかじめ検討しておく必要があります。 

相続財産はできるだけ平等に分ける

相続におけるトラブルを防ぐには、財産をできるだけ平等に分けることが大切です。しかし、実家の土地や建物をそのまま相続するとなると、平等に分けるのは難しいでしょう。とはいえ、共有名義はあまりおすすめできません。 

分割が難しい財産を平等に分ける方法として、代償分割があります。代償分割は、相続した財産の価値にばらつきがある場合、多く相続した人が少なく相続した人に対して差額を補填する方法です。たとえば、相続人のうちの誰かが1人で実家を相続したうえで、それぞれの相続人の取り分を現金で補填するパターンがあげられます。 

実家を相続する!考えられる5つの選択肢とは 

相続した実家の活用方法として、5つの選択肢があります。ここでは、それぞれの方法について解説します。 

選択肢1:自分・兄弟が住む 

実家を相続し、建物に自分や兄弟が住む方法があります。実家をそのままの状態で維持できます。 

選択肢2:貸し出す

相続した実家を活用し、他人に貸し出すのも1つの方法です。すでに自分の自宅がある場合、実家を相続しても持て余してしまうでしょう。実家を貸し出せば賃料を得られるため、メリットがあります。ただし、古い実家を貸し出すにはリフォームが必要なケースも多いです。費用や手間もかかるので、それに見合う賃料を得られるかどうかも考慮しましょう。

選択肢3:土地活用する

実家を相続した場合、建物を壊して土地活用するのもおすすめです。古い実家は貸し出しが難しい場合もありますが、更地にすれば活用の幅が広がります。たとえば、新しい建物を立てて貸し出し、不動産投資に取り組む方法もあります。 

一般的に、新しく不動産投資を始めるには、土地の取得が必要です。しかし、相続によりすでに土地を保有している状態なら、費用を抑えつつ土地を有効活用できます。 

選択肢4:売却する

相続した実家の活用が難しいなら、売却するという選択肢もあります。実家に住む予定がなく、立地や土地の形状なども不利な場合は、不動産を保有していてもうまく利用できない可能性が高いです。思い入れのある実家をなかなか手放せないという人も少なくないですが、空き家のまま放置するとさまざまな問題につながります。売却すればその分の対価を得られ、それまで発生していた固定資産税を支払う必要もなくなります。状況に応じて売却も検討しましょう。

選択肢5:相続放棄・限定承認する

被相続人の財産の状況によっては、相続放棄や限定承認を選択するのがベストなケースもあります。実家という財産以外に多くの負債を残して被相続人が亡くなった場合、その負債を引き継がないようにするには相続放棄が必要です。 

また、マイナスの財産とプラスの財産のどちらが多いか分からない場合は、限定承認も選択肢に入ります。可能であれば実家を相続したいと考えているなら、ひとまず限定承認を行って財産を正確に計算してみるとよいでしょう。マイナスの財産よりもプラスの財産が多ければ、実家を相続して引き継げる可能性もあります。 

まとめ

実家を相続するうえでは、さまざまなことに配慮する必要があります。実家以外の財産についても確認し、どのような手続きをすべきか検討することが重要です。また、相続した実家の活用方法はさまざまあります。たとえば、土地活用により不動産投資を始めることも可能です。実家の土地に新しい建物の建てて貸し出すと、賃貸経営による収益を得られます。相続した財産を有効活用する方法としておすすめなので、ぜひ検討してみてください。 

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監修者

藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO

昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
資産運用領域で日本No.1の会社を目指し日々経営にあたっている。

マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
書籍「収益性と節税を最大化させる不動産投資の成功法則」や「収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則」を発売中。

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