建ぺい率と容積率とは。オーバーするとどうなる?計算方法や事例も解説します。

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建物の建ぺい率と容積率は、暮らしやすい環境を維持するために建築基準法で定められています。そのため、建物を建てる際は、用途地域ごとに定められている建ぺい率と容積率の基準を守らなければなりません。しかし、そもそも建ぺい率と容積率の違いがよく分からないという人もいるのではないでしょうか。

この記事では、建ぺい率と容積率の概要とともに、計算方法や具体例などを紹介します。建ぺい率と容積率を守りながら空間を広くするコツについても説明します。土地を購入して注文住宅を建築したいと考えている方や、相続する土地の活用方法を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

建ぺい率と容積率の基礎知識と計算方法

建築基準法によって定められている建ぺい率と容積率とは、どのようなものなのでしょうか。ここでは、建ぺい率と容積率の基礎知識と計算方法について解説します。

建ぺい率とは

建ぺい率とは、敷地面積に占める建築面積の割合のことです。敷地面積は土地の面積、建築面積は建物を真上から見た状態の面積を意味しています。

建ぺい率を計算式で表すと
「建ぺい率(%)=(建築面積÷敷地面積)×100」
となります。

建築基準法によって建ぺい率の基準が設けられているのは、敷地面積いっぱいに建物を建てると風通しが悪くなったり防災上の問題が生じたりするためです。

容積率とは

容積率とは、敷地面積に占める延床面積の割合のことです。延床面積は、建物のすべての階の床面積の合計を表しています。

容積率の計算式は
「容積率(%)=(延床面積÷敷地面積)×100」
です。

容積率の基準が設けられている理由は、人口をコントロールするためです。延床面積が多いほどたくさんの人が集まりやすくなります。その場合、ライフラインの供給が追いつかなくなったり、交通渋滞も頻繁に起きたりするでしょう。そのような状況を回避する目的で建物の容積率が定められています。

用途地域に対する建ぺい率と容積率

建ぺい率と容積率は、用途地域ごとに定められています。用途地域とは、市街地を計画的に作るために用途に応じて分けたエリアです。用途地域を設定することで建物の大きさや種類を制限し、利便性や安全性を維持しています。

用途地域に対する建ぺい率と容積率をまとめると、以下のとおりです。

建ぺい率と容積率の具体例

実際の建物の建ぺい率と容積率は、どのようになっているのでしょうか。ここでは、ケース別に建ぺい率と容積率の具体例を紹介します。

ケースA:一般的な住宅地

一般的な住宅では、建ぺい率50%、容積率100%とされている場合がよくあります。敷地面積が100平方メートルだとすると、建築面積と延床面積の上限は以下のとおりです。

  • 建築面積の上限:100平方メートル×建ぺい率50%=50平方メートル
  • 延床面積の上限:100平方メートル×容積率100%=100平方メートル

2階建てなら、各フロアを50平方メートルずつにできます。一般的な住宅であれば、十分な広さと言えるでしょう。一方、3階建てなら、たとえば1階を40平方メートル、2階と3階をそれぞれ30平方メートルにできます。どのフロアも狭く感じる可能性が高いため、空間を広く見せるための工夫を取り入れることをおすすめします。

ケースB:容積率が低い土地

用途地域によっては、容積率が低く設定されている場合もあります。たとえば、敷地面積が100平方メートルで、建ぺい率50%、容積率80%の土地の建築面積と延床面積の上限は以下のとおりです。

  • 建築面積の上限:100平方メートル×建ぺい率50%=50平方メートル
  • 延床面積の上限:100平方メートル×容積率80%=80平方メートル

2階建てであれば、1階を50平方メートル、2階を30平方メートルにできます。1階と2階の広さを揃えたいなら、各フロアを40平方メートルにしてもよいでしょう。

なお、3階建てにし、1階を40平方メートル、2階を30平方メートル、3階を10平方メートルとすることも可能です。ただし、特に3階部分はかなり狭くなる点に注意してください。

ケースC:高級住宅地や田園地帯

高級住宅地や田園地帯の建ぺい率は、30~40%に設定されている場合も多いです。敷地に対する建物の割合が低い分、緑の多い閑静な住宅街を維持しやすくなっています。

敷地面積が300平方メートル、建ぺい率が30%、容積率が80%だとすると、土地の建築面積と延床面積の上限は以下のとおりです。

  • 建築面積の上限:300平方メートル×建ぺい率30%=90平方メートル
  • 延床面積の上限:300平方メートル×容積率80%=240平方メートル

2階建てなら、各フロアを90平方メートルにできます。3階建てにすれば、1階と2階を90平方メートルにし、さらに60平方メートルの3階を設けることも可能です。いずれにせよ、ゆとりのある広々とした住宅を構えられます。

建ぺい率の緩和条件とは

用途地域によって建ぺい率が定められていますが、一定の条件を満たしていれば緩和されるパターンもあります。建ぺい率が80%に設定されている用途地域のうち、防火地域内に建てる耐火建築物の建ぺい率は100%とすることが可能です。

さらに、建築基準法第53条3項で定められている条件を満たしている場合、建ぺい率を割増できます。その条件は2つあり、いずれかを満たしていれば建ぺい率を10%割り増しできるとされています。

1つ目の条件は、防火地域内の耐火建築物または準防火地域内の準耐火建築物であることです。どちらについても、同等以上の延焼防止性能を有している建物であれば条件を満たしていると判断されます。

2つ目の条件は、特定行政庁の指定している角地であることです。地域によって異なる基準が定められているため、建物を建てる際に必ず確認しましょう。

なお、1つ目の条件と2つ目の条件の両方に該当する場合は、建ぺい率を20%割り増しできます。

建ぺい率と容積率以外の建築制限

建物を建てるときは、建ぺい率と容積率以外にも制限を受ける場合があります。ここでは、具体的にどのような制限があるのか説明します。

斜線制限

斜線制限とは、建物の高さに関する制限です。目的は高さを制限し、周囲の風通しや採光を妨げないようにすることです。また、圧迫感を軽減する狙いもあります。

斜線制限には、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線があります。それぞれについて、以下で詳しく確認しましょう。

道路斜線制限

道路斜線制限とは、建物を建てる敷地が接している道路反対側の境界線から一定の距離以内の勾配に建物の高さが収まらなければならないという制限です。具体的には、住居系地域は道路の水平距離×1.25倍、商業系地域や工業系地域などのその他の地域は道路の水平距離×1.5倍と定められています。

隣地斜線制限

隣地斜線制限とは、隣の土地に面している建物の高さに関する制限です。住居系地域の場合、20メートルを超える建物に対して制限がかけられています。一般的な戸建住宅であれば、隣地斜線制限の対象にはなりません。なお、商業系地域と工業系地域においては、31メートルを超える建物について高さが制限されます。

北側斜線

北側斜線は、建物の北側にある隣の土地の採光に配慮するための制限です。第1種低層住居専用地域と第2種低層住居専用地域は5メートル、第1種中高層住居専用地域と第2種中高層住居専用地域は10メートルより上から1:1.25の角度の勾配の内側に建物を収める必要があります。

住宅を建てる場合、日当たりをよくするために敷地の北側に建物を建て、南側に庭を作るケースがよくあります。しかし、建物の配置によっては北側斜線の制限を超える恐れがあるため、北側に寄せすぎないようにしなければなりません。

絶対高さの制限

第1種低層住居専用地域と第2種低層住居専用地域では、建物の高さの上限が都市計画で定められている10メートルまたは12メートルとなります。容積率の条件をクリアできるとしても、この高さ以上の建物は建てられません。この高さの制限は「絶対高さ」と表現されています。

10~12メートルの高さとは、木造住宅なら3階程度、コンクリート造なら4階程度です。そのため、1棟アパートや1棟マンションを建てる際は注意する必要があります。

ただし、建築審査会の同意により特定行政庁が許可を出した場合、絶対高さの制限が緩和される場合もあります。

日影制限

日影制限とは、主に住宅系地域において建物から一定の範囲に一定時間以上日影ができないようにするための制限です。日影制限の基準は、太陽の位置が最も低くなる冬至の日とされています。

日影制限の対象は各自治体の条例で定められているため、建物を建てる際は個別に確認が必要です。基本的に、一般的な2階建ての建物なら高さを日影制限の範囲内に収められる場合がほとんどです。ただし、3階以上の建物を建てる際は制限を受ける可能性があります。

高度地区の制限

高度地区は、建てられる建物の高さに制限が設けられている地区です。高度地区は用途地域とは別に定められているため、どの用途地域においても高度地区による高さの制限を受ける可能性があります。

高度地区に該当するかどうかは、各自治体の公式サイトで確認できます。

建ぺい率と容積率を守りながら広くするコツは?

建物を建てるときは、定められている建ぺい率と容積率を必ず守る必要があります。建ぺい率と容積率を守りつつ、広々とした空間を作るにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、具体的なコツを紹介します。

地下室

地下室を設ければ、建ぺい率と容積率の基準を守りながらより広い面積を確保することが可能です。住宅に地下室を設ける場合、地下室の面積を全床面積の1/3以内に収めると建築面積や延床面積の計算に含めなくてよいとされています。条件は、地下室の天井高が地盤面から1メートル以下であり、住宅として利用される建物であることです。

たとえば、地下室のある2階建ての住宅を建てるとしましょう。それぞれ100平米であれば、全床面積は「100平米×3フロア=300平米」です。地下室の面積は100平米であり、全床面積300平米の1/3以内に収まっています。よって、このケースでは延床面積は200平米とみなされます。

ただし、地下室は窓から光を取り込めないため、使い道には注意が必要です。特に1棟アパートや1棟マンションなどは、地下室を設けても活用しにくいと言えます。

ロフト

一定の条件を満たしているロフトも建築面積や延床面積の計算から除外できます。ロフトを面積の計算に含めないためには、ロフトの天井の高さが1.4メートル以下で、面積が床面積の1/2以下である必要があります。また、ロフトに移動するためのはしごが固定されていないことも条件です。

ロフトとして認められるためには天井を低くしなければならず、用途は限られます。しかし、勉強や読書のための空間、子どもの遊び場、収納スペースなど、アイデア次第でさまざまな使い方が可能です。複数の部屋を設けられない住宅でも、ロフトを設ければプライベートな空間を確保しやすくなります。

ベランダ・バルコニー

ベランダやバルコニーのように外壁から突出している部分は、突出している幅が1メートル以下であれば建築面積に含める必要がありません。幅1メートルのベランダやバルコニーは決して広くはないものの、洗濯物を干すだけであれば十分だと言えます。ただし、ベランダやバルコニーの下に柱を取り付けた場合、柱より内側は例外なくすべて建築面積に含まれてしまいます。

また、ベランダやバルコニーの幅が2メートル以下の場合、延床面積に含めなくて構いません。2メートルを超えている部分があれば、その分のみが延床面積としてカウントされます。

なお、ベランダやバルコニーだけでなく、ポーチ、ピロティ、外廊下、外階段なども同様に扱われます。外壁の外側にこれらを設ける場合は、突出する幅に注意しましょう。

吹き抜け

建物に吹き抜けを作ると床面積を減らせるので、容積率の基準を満たすために役立ちます。吹き抜けを作れば使えるスペースが狭くなるものの、下の階の天井が高くなって開放感を出せます。また、吹き抜けに窓を設けると、建物の中に光が届きやすくなり、風通しもよくなるでしょう。おしゃれで洗練された雰囲気に見せることも可能です。

吹き抜けを設けやすいのは、特に2階建て以上の戸建て住宅です。1棟アパートや1棟マンションなどに吹き抜けを設けるには、メゾネットタイプにしたり、共用部分を広くしたりする必要があります。敷地面積やニーズを考慮した場合、実現が難しいパターンもあるでしょう。

車庫・ガレージ

敷地内に一定の条件を満たす車庫やガレージを設置する場合、建築面積や延床面積に含めなくて済む可能性があります。

条件を満たしていれば、車庫やガレージの柱から1メートルまでは建築面積に含めなくて構いません。そのためには、外壁のない部分が4メートル以上連続している必要があります。また、柱と柱の間に2メートル以上の間隔があり、天井の高さが2.1メートル以上であることも条件です。加えて、建物の階数は地階を除いて1であることも求められています。

さらに、建物の延床面積の1/5に車庫やガレージを収めれば、延床面積にカウントされません。

建ぺい率と容積率をオーバーするとどうなる?

建ぺい率と容積率の基準は、建築基準法により定められています。そのため、建ぺい率と容積率の基準を守らず建てられた建物は、違法建築物とみなされます。銀行は違法建築物に対して融資を行いません。違法建築物は市場での流通が難しく、建築物が融資の担保にはならない可能性が高いためです。

建物を建てる際は必ずプロに相談し、建ぺい率と容積率の基準を守る必要があります。

まとめ

建ぺい率や容積率によって、建てられる建物の面積や大きさが変化します。建ぺい率と容積率は用途地域ごとに定められているため、建物を建てる際はその土地の建ぺい率と容積率を必ず確認しなければなりません。建ぺい率や容積率の基準が厳しい場合も、工夫すれば基準を守りながら広い空間を作ることは可能です。なかには一部の条件を満たすと建築面積や延床面積に含めなくてよいものもあるため、無理のない範囲で取り入れてください。

また、建ぺい率と容積率以外にも建築制限が設けられているケースもあります。いずれも周辺の環境や建物に配慮するための取り決めです。 土地を購入して注文住宅を建てる場合や相続した土地を活用する場合は、それぞれの基準や制限を守ったうえで建築基準法に則った建物を建てましょう。

監修者

藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO

昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
資産運用領域で日本No.1の会社を目指し日々経営にあたっている。

マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
書籍「収益性と節税を最大化させる不動産投資の成功法則」や「収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則」を発売中。

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