マンションの管理規約とは?使用細則との違いや確認方法解説

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マンションには管理規約が設けられており、区分所有者や住民はそれに従ってマンションを利用する必要があります。しかし、マンションの管理規約について、よくわからないという人も少なくないでしょう。この記事では、マンションの購入にあたり管理規約について詳しく知りたい人に向けて、管理規約の概要や確認方法などを解説します。ぜひ参考にしてください。 

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マンションの管理規約とは何か 

マンションの管理規約とは、マンションの管理や使用について定めたルールです。各マンションの構造や立地などをもとに個別に定められています。マンションの管理規約が適用されるのは、マンション全体です。 

マンションの管理規約は「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」の内容を前提とする必要があります。区分所有法は昭和37年に公布、昭和38年に施行され、それ以来、時代の流れに合わせて複数回にわたって改正されています。たとえば、マンションにおける禁止行為が定められており、管理規約においてもこの禁止行為は認められません。 

また、建設省(現在の国土交通省)は、昭和37年に区分所有法に基づく「中高層共同住宅標準管理規約」を作成しました。これはマンション管理のガイドラインであり、マンションの管理規約を作成する際の指針として参照されています。「中高層共同住宅標準管理規約」についても何度も見直しが行われており、現在では「マンション標準管理規約」となっています。ただし、このガイドラインはあくまでも指針であり、マンションの管理規約において必ずしもすべてを標準管理規約に揃える必要はありません。区分所有法の範囲内であれば、各マンションで個別の内容を管理規約として定められます。 

マンションの管理規約の主な内容

ここでは、マンションの管理規約において一般的に定められている内容について解説します。 

①専有部分と共有部分の区別に関する事項

マンションには専有部分と共用部分があります。専有部分とは、それぞれの区分所有者が個別に独占して使用できるエリアです。それに対して共用部分は、専有部分以外のエリアすべてを指しています。 

マンションの管理規約では、専有部分と共有部分の区別が明示されています。図面を使用し、それぞれの分類が示される場合が多いです。特に専有部分と共有部分の境界については、詳細に規定されています。たとえば、天井、壁、床については、躯体部分は共有部分に含まれ、それ以外は専有部分にそれぞれ該当すると示されています。また、窓ガラスや窓枠については専有部分の壁についているものも含め、すべてが共有部分とされます。 

②区分所有者の費用負担に関する事項

マンションでは区分所有者が管理費や修繕積立金などを負担するため、費用負担に関するルールも管理規約で定められています。具体的な金額をはじめとする詳細については、管理規約で定める場合もあれば管理組合総会で決定する場合もあります。

③管理組合に関する事項  

管理組合とは、マンションの建物や設備などを維持管理するための組織です。管理組合の概要や業務内容についても、管理規約で定められています。たとえば、組合員の資格、業務範囲、役員の専任方法、管理組合総会の運営方法、理事会の運営方法などについてです。 

④区分所有者の禁止事項

マンションの管理規約においては、区分所有者に対する禁止事項も定められています。区分所有法では禁止行為について定められており、管理規約ではその内容を基本として禁止事項がまとめられています。たとえば、専有部分の耐力壁の撤去、共有部分の不当な占拠、専有部分の暴力団事務所としての使用などが区分所有法で禁止されています。 

また、各マンションの管理規約においては、区分所有法で規定されていない禁止事項を定めることも可能です。たとえば、管理規約においてペットの飼育を禁止しているマンションも存在します。なかには、専有部分について居室以外の利用を認めず、事務所や店舗としては使用できないようにしているところもあります。区分所有者は、所有するマンションの管理規約に必ず従わなければなりません。

⑤区分所有者に対する措置に関する事項 

管理規約においては、禁止事項とともに違反者に対する制裁についても定めています。基本的には区分所有法57〜60条の内容に従い、禁止事項の停止やその行為によって生じる結果の除去などが求められます。状況によっては専有部分の使用の禁止や引渡しが請求される可能性もあるため、注意が必要です。 

標準管理規約の種類

標準管理規約には、単棟型、団地型、複合型の3種類があります。それぞれについて以下で説明します。 

標準管理規約の種類1:単棟型

単棟型の標準管理規約は、1つの敷地に1棟のマンションが建てられている場合を想定して作られています。このマンションは居住が前提となっています。建物が1棟しかないため、単棟型の標準管理規約は、比較的シンプルでわかりやすくまとめられているところが大きな特徴です。特別なルールは少なく、マンションにおける一般的な取り決めが中心です。 

また、単棟型の標準管理規約は、以下で説明する団地型や複合型の標準管理規約の基本にもなっています。単棟型の内容を基本とし、それぞれのマンションの特性に合わせたルールが適宜設定されています。 

標準管理規約の種類2:団地型

団地型の標準管理規約は、1つの敷地に複数のマンションが建てられている場合を想定して作られています。建物が複数あっても、基本的には1つの管理組合ですべてを管理する必要があります。しかし、マンションが作られてからある程度の年月が経てば、建物によって異なる状況になる可能性もあるでしょう。たとえば、複数のマンションがある場合、それぞれ修繕計画を立てて実行していかなければなりません。団地型の標準管理規約においては、各マンションの状況に即した対応をするための規定が設けられています。 

標準管理規約の種類3:複合型 

複合型の標準管理規約は、居住用のスペースだけでなく、店舗や事務所として活用されるスペースもあるマンションを想定して作られています。例えば、建物の1階に店舗や事務所が設けられているマンションがよくみられます。 

複合型の標準管理規約が設けられているのは、居住のスペースと店舗や事務所として活用されるスペースには設備の改修時期について違いがあるからです。マンションの設備を適切に維持管理するため、管理規約で基準を示しておく必要があります。 

なお、管理組合には、住居部会と店舗部会が設置されます。住居部会は住戸部分の区分所有者で構成する組織、店舗部会は店舗部分の区分所有者で構成する組織です。ただし、マンション全体に関わる意思決定は、管理組合全体で合意して取りまとめなければなりません。

マンションの管理規約が必要な理由とは

マンションの管理規約が必要な理由は、マンションではさまざまな人が同じ建物で一緒に暮らすからです。世帯によって、生活スタイルや考え方などはそれぞれ異なります。マンションの利用方法について明確なルールがない場合、住民同士のトラブルが発生しやすくなります。事前に詳細な決まりを定めて全員がそれを遵守すれば、トラブルも未然に防ぐことが可能です。また、管理規約があると、万が一トラブルが発生してもルールに従って適切な対応を取れます。 

管理規約と使用細則の違いを解説

マンションのルールとしては、管理規約の他にも使用細則が設けられています。使用細則は、管理規約をもとに作られたより詳細な決まりです。具体的には、建物、敷地、附属施設の管理方法や使用方法などについて詳しく定められています。マンションに住むうえでは使用細則の内容をよく理解し、それに従って建物や設備などを利用する必要があります。 

具体例

マンションの敷地内に自転車置き場を設ける場合、管理規約では自転車置き場を使用する住民の権利が示されます。使用細則で定められる内容は、自転車置き場を使用するための手続き、自転車置き場の使い方のルール、使用料金などです。 

また、ペットの飼育を認める場合、管理規約ではその旨が示されます。使用細則で定められる内容は、ペットを飼育する際に必要な書類の提出方法、飼育を認めるペットの種類、ペットを無断で飼育した場合の罰則などです。 

変更時の手続き

マンションの管理規約や使用細則を変更するには、管理組合総会で一定以上の賛成を得る必要があります。管理規約は議決権の3/4以上、使用細則は議決権の過半数の賛成で変更が可能です。基本的に、管理規約は頻繁に変更されることはありません。しかし、使用規則は住人の考え方や環境などに応じて適宜見直すべきであるため、比較的柔軟な変更がしやすくなっています。 

マンションの管理規約を確認する方法・入手方法とは

各マンションの管理規約は、利害関係人が閲覧できます。利害関係人とは、専有部分の担保権者、差押え債権者、賃借人など法律上の利害関係がある人のことです。区分所有者については、購入する際に分譲会社や前の所有者などから写しを受け取れます。管理規約が変更された場合、変更が承認された総会の議事録が配布されるため、確認しましょう。

マンションの購入を検討していて管理規約を確認したいなら、不動産会社に依頼すると閲覧できます。希望すれば総会議案書や議事録などの閲覧も可能です。マンションのルールそのものだけでなく、ルールに沿ってどのように管理されているかについても確認できます。 

マンションの標準規約は改正されている

マンションの標準管理規約は、改正が行われています。以下で詳しい内容について解説します。 

2017年(平成29年)の改正内容

2017年(平成29年)に住宅宿泊事業法が成立し、いわゆる民泊について定められました。これを受けて、マンションの標準管理規約も一部改正されています。マンションの専有部分を利用する民泊についてのトラブルを防ぐため、住宅宿泊事業を認めるケースと認めないケースの両方についての規定例が新しく示されました。 

2021年(令和3年)の改正内容

2021年(令和3年)には、管理組合でのITの活用に関するルールがマンションの標準規約に盛り込まれました。背景には、新型コロナウイルスへの対応の必要性や、マンションの建て替えの円滑化に関する法律の改正などがあります。具体的には、ITを活用する総会・理事会のルールや、置き配に関する注意事項などについて追記されました。

マンションの管理規約には法的効力がある!違反した場合はどうなる? 

マンションの管理規約には法的効力があるため、違反すると大きな問題になる可能性があります。ここでは、管理規約に違反するとどうなるのか解説します。 

管理規約の法的効力

管理規約は各マンションが個別に定めており、法律ではありません。しかし、管理規約は区分所有法に則って作られており、裁判に発展した際も管理規約の内容が根拠とされるケースが多いです。そのため、実質的には管理規約には法的効力があるといえます。 

たとえば、区分所有者が管理費を滞納した場合、管理規約において遅延損害金を請求できると管理規約で定めているマンションも多いです。また、迷惑行為があった場合、最終的には強制競売も可能としているところもあるでしょう。実際に管理費の滞納や迷惑が発生すれば、管理規約の定めをもとに法的措置が実行されます。 

規約違反時の対応 

管理費を滞納したり、禁止されている危険物を持ち込んだりすれば、規約違反とみなされます。ただし、管理規約に違反したからといって、すぐに法律による対処が行われるわけではありません。まずは違反している内容を改めるよう請求されます。応じない場合、専有部分の使用禁止の請求に移ります。それでも状況が変わらなければ、競売の請求です。競売を実行するために裁判も行われます。 

管理規約に対する違反が発覚すると、このように段階的に対処が進みます。それぞれの請求を無視し続ければ最終的に競売が行われ、強制退去となる可能性があるでしょう。 

管理規約をチェックする際に気を付けたい注意点とは

管理規約については注意点もあります。気をつけたいポイントを解説します。 

注意点1:内容に誤りがないか

管理規約はマンションに関する重要な取り決めであるため、誤りがないかよく確認しましょう。誤字脱字だけでなく、細かい内容についても詳しくチェックすべきです。 

共有部分の数字についての誤謬誤理がないかについては、特に入念に調べましょう。誤りがある場合、議決権の割合の計算に影響する可能性もあるからです。必要に応じて専門家にも相談するとより安心です。

注意点2:民法や区分所有法に違反していないか

管理規約は区分所有法をもとに作成しますが、それ以外にも個別のルールを追加できます。しかし、区分所有法や民法などをはじめとする法律に違反する内容は、認められません。裁判に発展した際も、法律に違反する管理規約の内容は無効となります。 

標準管理規約に加筆している場合は、法律に違反する内容が含まれていないかよく確認しましょう。問題がありそうな内容を見つけたら、その時点で問い合わせたほうがよいです。 

マンション管理士のひと言

マンションは様々な方が一緒に生活をするものです。標準管理規約は定められていますが、個々のマンションによって重要視するポイントや方針はことなります。組合員一人一人が主体性を持って組合活動に参加し、管理規約も作り上げていく意識を持つことが重要となります。 

まとめ

マンションの管理規約においては、マンションの利用に関するルールが定められています。管理規約はさまざまな人がトラブルなく過ごすためにあるため、マンションの区分所有者は必ず確認が必要です。 

標準管理規約に沿って作成される場合が多いですが、マンションによっては個別の決まりが加えられている可能性もあります。詳細までよく確認し、正しく理解したうえでマンションを所有しましょう。 

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監修者

黒木 淳/大和財託株式会社 マンション管理士・マンション管理シニアコンサルタント

【保有資格】
管理業務主任者・マンション管理士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

【プロフィール】
損害保険調査業、鉄道系大手分譲マンション管理会社を経て、大和財託株式会社に入社。
所有者にとって最適な物件管理を提案することを重視し、「大切な資産」であるマンションを守るため、各オーナー様の物件管理をサポート。

【メッセージ】
分譲マンションの問題が多様化する昨今、当社は大規模修繕工事は当然、税務や管理運営まですべての分野に対応できることが強みです。
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