マンションの理事会とは?理事会の詳細や総会との違いについて解説

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「マンションは管理を買え」

分譲マンションを購入しようと情報収集をしていると、このような言葉を目にしたことがある方もいるのではないでしょうか。年月がたつと劣化する建物の価値を保つには、日々の適切な管理が欠かせません。理事会は、マンションに快適に住み続けるために大切な存在です。

分譲マンション購入者はマンション管理組合への所属を求められます。その管理組合の業務を実際に行う機関が理事会になります。理事会メンバーである理事は、組合員、つまり物件を買った区分所有者の中から選出されることになります。

理事はマンションを買った人なら誰でも就任する可能性があるのです。この記事では、マンション購入を検討している人や既に購入した人など、今後理事になるかもしれない方に向けて、理事会の詳細や管理組合総会との違いなどを解説します。

仕事が忙しい人がいたり、高齢化が進んだりしていることで、就任を敬遠する人も多いのが実情です。成り手不足も指摘される中、理事を管理組合員以外に代行してもらう第三者管理方式も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

マンションの管理は住人みんなで行う

分譲マンションでは、入居者が暮らす部屋の壁や天井、床で囲まれた部分は「専有部分」と呼ばれ、区分所有者が各自で管理します。

これに対して「共用部分」は区分所有法第二条四項により、専有部分以外の建物の部分や専有部分に属さない建物の附属物が該当するとされています。

共用部分には、廊下や階段室など区分所有法の規定に基づいて共用部分としなければならない法定共用部分と、管理規約によって共用部分と定めることができる規約共用部分があります。

整理すると以下のものが共用部分にあたり、管理組合が管理するべき対象です。

(法定共用部分)

壁、支柱、屋根、基礎など専有部分以外の建物、バルコニーや電気、ガス、水道の設備など

(規約共用部分)

管理人室や集会室など共用部分とする性質の部分

マンションの管理は住民が協力し合って行うのが基本です。多くは管理会社が実務を担いますが、管理会社は管理組合から委託を受けているにすぎません。管理組合が行うべき業務は幅広く、専門性もあります。このため、多くのマンション管理組合が管理会社に業務を委託しています。最終的に管理するのは管理組合、つまり物件の所有者であるのが原則です。

マンションの管理組合とは

マンション管理組合は、建物や敷地などを共同で管理する区分所有法第三条に規定された組織であり、マンション購入者全員が加入することになっています。

建物の維持や生活に関する考え方は人それぞれです。エントランスが多少汚れていても気にならない人がいれば、きれいに植栽された出入口を求める人もいるでしょう。動物が大好きで何匹でも飼育できるようにしたいと考える人もいれば、犬や猫が苦手な人もいます。多様な世帯が入居するマンションの管理を適切に行うには、区分所有者で集まって意思統一を図る組織が欠かせません。

国土交通省の「平成 30 年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」によると、トラブルがあった場合の処理方法で最も多かった答えは、「管理組合内で話し合った」が58.9%で最も多く、「マンション管理業者に相談した」の46.5%を大きく上回りました。

意見が割れた場合、最終的な解決手段を多数決に求めるのが一般的です。マンション管理も同様で、区分所有法第三十九条では、マンションの管理運営に関する決めごとをする際、規約などに別段の定めがない限り区分所有者および議決権のそれぞれ過半数で決することができるとしています。

所有者たちの意見を適切にまとめて施設管理を行い、マンションの資産価値の維持や向上に努めながら、住民に良好な住環境を提供する役割が、管理組合にはあるのです。

マンションの理事会の役職や選任方法・任期について

分譲マンションの維持管理に不可欠なマンション管理組合の仕事を執り行うのが、理事会です。理事会は区分所有者でつくる管理組合の総会で選任された理事で構成されます。

役職

国土交通省が示すマンションの標準管理規約では、管理組合には次の役員を置くこととされています。

  • 理事長
  • 副理事長
  • 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む)
  • 会計担当理事
  • 監事

それぞれ役割を確認していきましょう。

理事長

理事長はマンション管理組合と理事会の代表者です。管理組合の総会で決定した業務、または管理規約で定めたルールに沿った業務を統括する立場になります。区分所有法では共用部分を保存し、総会の決議を実行する「管理者」を置くことと定められており、通常は理事長が管理者となります。

副理事長

理事長の補佐役を務めるのが副理事長です。病気やケガなど理事長が不在になった際には理事長業務を代行します。

理事

理事は理事会を構成する管理組合の役員です。理事長や副理事長、会計担当理事のほか、防災管理面で建物をチェックする防災担当理事などと役割分担しながら、円滑な業務運営を目指します。

会計担当理事

理事のうち、管理費の収納や支出などお金の管理を任されるのが会計担当理事です。管理組合の通帳管理や管理費の入金状況の確認などを行いながら、場合によっては、管理費や修繕積立金を滞納している人に督促業務も行います。

監事

監事は管理組合の仕事をチェックする立場であり、理事会の役員ではありません。理事会メンバーとは違う立場で会計処理に不正や誤りがないか、建物設備の管理は適切かなどを監査し、組合員に結果を報告します。管理組合に不正が疑われる時などには臨時総会を招集できます。

選任方法・任期

理事会メンバーである理事の選任方法や任期について解説していきます。

選任方法

マンション標準管理規約では、 理事や監事は管理組合の総会の決議で組合員の中から選任することとなっています。総会で選任された理事の中から、理事会で理事長や副理事長、会計担当理事などを選任します。

理事や監事を選ぶ際は一般的に次の方法が考えられます。

  • 立候補者を募る
  • 前任の役員が候補者を選ぶ
  • 輪番制で候補者を事前に決めておく

管理組合の役員は重要な役割を担うものの、仕事や生活で忙しいという人も多く、積極的にかかわりたいという人が集まらない可能性があります。このため、公平性の観点から輪番制が採用されやすくなっています。

任期

理事の任期は区分所有法では定められていません。国土交通省が示すマンション標準管理規約にも「役員の任期は〇年とする。ただし、再任を妨げない」と記されている程度です。

理事の任期は管理組合の規約で決められており、国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、役員の任期は「1年」が57.0%、次いで「2年」が36.7%となっています。

理事会役員は断れる?

分譲マンションを購入した人なら誰もが関わる可能性がある理事会役員は、法令などで就任を拒否することが禁止されているものではありません。輪番制で自分の番となる可能性がありますが、仕事や介護、育児などさまざまな理由でやむを得ず断らざるを得ないケースもあります。責任の重さなどから「できれば避けたい」と考える人も少なくないでしょう。

ただ、理事の担い手がいなくなるとマンション管理を行う管理組合を運営できなくなり、結果的に自分も含む所有者全員が不利益をこうむります。

「面倒だから」「よくわからないから」などといった正当とは言えない理由で理事会役員を断るのは、管理組合員の協力で成り立つマンション管理の考え方から離れ、反感を買う恐れがあります。やむを得ず断る場合も誠意をもって正当な理由を説明する姿勢が大切です。

管理組合によっては、役員の候補者不足を補うため報酬制度を導入するところもあります。国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、「報酬は支払っていない」が 73.3%と最多でしたが、「役員全員に報酬を支払っている」と答えた割合は 23.1%と2割を超えています。役員に一律で報酬を支払う場合の金額の平均は月額約 3,900 円、一律ではない場合の平均は理事長が月額約 9,500 円、理事が月額約 3,900 円となっています。

理事会の活動頻度

理事会は1〜3カ月に1回の頻度で開かれるのが一般的です。「平成30年度マンション総合調査結果」では開催頻度の割合の上位は以下の通りとなっています。

  • 月に1回程度開催している 36.5%
  • 2カ月に1回程度開催している 25.4%
  • 3カ月に1回程度開催している 24.3%

理事会の主な業務

ここでは、理事会が行う主な業務を解説します。マンションの維持管理を管理会社に委託するケースが多いとはいえ、理事会は管理組合を代表する立場として組合運営の責任を負います。

定例理事会の開催        

管理組合によって頻度は異なりますが、定例理事会は1〜3カ月に1回の頻度で開かれ、役員同士が顔を合わせてマンションの管理状況について意見交換や議事の決議をします。組合員が支払う管理費の納入状況や修繕積立金の積み立て状況を確認したり、維持管理を管理会社が行っている場合は管理会社からの活動報告などを受けたりします。

管理費に滞納はないか、修繕積立計画は妥当か、マンション内で起こったトラブルはないかなど、マンション価値の維持向上に向けて意見交換を行います。

マンション標準管理規約では、理事会の会議は理事の半数以上が出席しなければ開くことができないとされており、開催日時は余裕をもって周知しておくことが重要です。オンライン会議システムを使って開催する方法もあります。理事会の議事は出席理事の過半数で決することも明記されています。

マンション管理に関わる業務

理事会では、マンション管理組合の収支予算案や事業計画案などを作成します。管理会社が作成してくれる場合は、作成されたものを確認のうえ、承認しなければいけません。作成した計画は管理組合の総会などで組合員に説明する責任があります。

建物を健全に維持管理していくため事業計画の作成は重要です。管理費や修繕積立金の額は長期的に見て妥当なのか、補修が必要な箇所はないかなど、1年間の計画だけでなく、中長期を見据えた計画を定期的に見直していくことが大切です。

総会の開催

理事会の仕事で最も重要なのが管理組合員全員を対象にした総会の開催です。年に1度定期的に開く通常総会では、1年間の決算報告や活動内容の審議、次期役員の選任などが行われます。これとは別に、トラブル発生時や事業計画を大きく変更するケースなど、理事長が招集する臨時総会が必要となる場合もあります。

区分所有法第三十四条では、総会は少なくとも毎年1回招集しなければならないとされています。第三十五条では、招集通知は少なくとも1週間前に、会議の目的を示して区分所有者に発しなければならないとされています。総会での議事は原則として区分所有者および議決権の過半数で決議されることになっており、予定があり出席できない組合員が多くならないよう、余裕を持って通知することが大切です。

理事会と総会は何が違う?

理事会と総会ではその役割が異なります。総会はマンション管理組合の意思決定の場であり、理事会は決定した業務を遂行する機関です。管理組合はマンションの適切な維持管理を担うため組織され、総会で収支予算や事業計画などの重要方針を決議します。

理事は総会で決められたことを実行するために選ばれる管理組合の役員です。理事が集まる理事会では、年に少なくとも1度は開かれる総会で業務の執行状況を報告するため、マンション管理の現状や課題を整理していきます。

第三者管理方式とは?

少子高齢化などで理事の成り手不足が課題となっています。平成30年度マンション総合調査結果では、管理組合を運営していく上での将来不安な点について、「区分所有者の高齢化」が53.1%と最も多く、「居住者の高齢化」が44.3%と続きました。

そこで、理事会の運営を組合員以外に託す「第三者管理方式」が注目されています。管理を任せる第三者としては、マンション管理士や管理会社、弁護士、司法書士などの専門家が想定されます。

平成30年度マンション総合調査結果では、外部専門家の活用内容について「単発のコンサルティング業務」が61.2%、「顧問契約」が20.4%と多かった一方、理事長をはじめ理事や監事への就任も計4%ありました。外部役員に行って欲しい業務では「長期修繕計画の作成・見直し」と「大規模修繕工事の実施」が29.7%と最も多く、「理事会の開催・運営」も18.6%を占めています。

理事長は通常、組合員から選任される理事の中から選ばれますが、国土交通省が示す「マンション標準管理規約」では、外部専門家を役員として専任する場合の規約例も示されています。今後さらに活用の幅が広がる可能性がある手法です。

第三者管理方式について、こちらの記事で詳しく説明しています。

第三者管理方式とは?マンションが管理不全に陥る前に今できることは

分譲マンションにおける理事会役員のなり手不足が問題視されている近年、外部の専門家に理事を委託する「第三者管理方式」に注目が集まっています。
2011年の標準管理規約の見直しにより具体的に示されたこの方式は、外部専門家が管理組合の理事や監事に就任できるため、住人の高齢化や賃貸化といった状況を解消し、管理組合運営の適正化に役立ちます。

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マンション管理士のひと言

理事の選任は輪番制で1年交代としているマンションも少なくありませんが、マンションの将来は区分所有者自身で決めていく必要があり、実務者として理事会の役割は大変重要なものとなります。

しかしながら、マンションでは修繕に関する知識や法令など、専門的な知識も必要となり、主体性を持って管理することが難しいこともありますので、管理会社や外部の専門家に頼ることも必要でしょう。

まずは、自分自身がどのようなマンションに住みたいのか、自分が住んでいるマンションはどのような運営をしているのか知ることから始めてもよいかもしれません。

まとめ

マンション管理組合の理事会は、将来にわたってマンション価値を維持・向上させていくために大切な役割を持っています。高経年マンションが増加する中で重要性は増していくでしょう。

一方、少子高齢化の進展で理事の成り手が不足していくことも予想され、組合員の工夫や第三者管理方式の導入などを真剣に考えていかなければならなくなりそうです。

大和財託では、分譲マンション管理のコンサルティングも行っています。マンションの今後の維持管理について不安や疑問をお持ちの方は、ぜひご相談ください。

監修者

黒木 淳/大和財託株式会社 マンション管理士・マンション管理シニアコンサルタント

【保有資格】
管理業務主任者・マンション管理士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

【プロフィール】
損害保険調査業、鉄道系大手分譲マンション管理会社を経て、大和財託株式会社に入社。
所有者にとって最適な物件管理を提案することを重視し、「大切な資産」であるマンションを守るため、各オーナー様の物件管理をサポート。

【メッセージ】
分譲マンションの問題が多様化する昨今、当社は大規模修繕工事は当然、税務や管理運営まですべての分野に対応できることが強みです。
長年、マンション管理に携わってきた経験を活かし、管理組合様、理事長様のニーズに寄り添ったサービスを提供し、皆様の快適な暮らしをサポートいたします。
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