年収2,000万円の税金対策! もっとも有力な節税は不動産投資であることを解説 

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日本は所得が高くなるほど税率が高くなる「累進課税制度」を採用している国です。「年収は満足しているが、税金が重くて大変」と感じている人も多いのではないでしょうか。 

この記事では、年収2,000万円の人の場合、どの程度の税金がかかるのかを紹介します。取り組みやすい節税方法とともに、不動産投資による節税方法についてシミュレーションをしながら詳しく解説します。 

年収2,000万円超の人はどれくらいいるか 

現在、年収2,000万円超の人が日本にどのくらいいるのか、国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」をもとに人数と割合を見ていきましょう。

統計では給与所得者の0.6%

2022年時点で、日本の給与所得者5,078万人中、年収2,000万円超2,500万円以下の人は13万1,000人、年収2,500万円超の人は17万人で合計30万1,000人います。構成比にすると全体の0.6%です。 

なお、年収2,000万円超を含め、年収の分布を確認すると、以下のようになっています。 

年収 人数 構成比 
100万円以下 398万5,000人 7.8% 
100万円超200万円以下 643万3,000人 12.7% 
200万円超300万円以下 717万9,000人 14.1% 
300万円超400万円以下 839万5,000人 16.5% 
400万円超500万円以下 778万9,000人 15.3% 
500万円超600万円以下 551万1,000人 10.9% 
600万円超700万円以下 350万4,000人 6.9% 
700万円超800万円以下 243万7,000人 4.8% 
800万円超900万円以下 167万5,000人 3.3% 
900万円超1,000万円以下 111万6,000人 2.2% 
1,000万円超1,500万円以下 201万9,000人 4.0% 
1500万円超2,000万円以下 43万1,000人 0.8% 
2,000万円超2,500万円以下 13万1,000人 0.3% 
2,500万円超 17万人 0.3% 

出典:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」 
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2022/pdf/002.pdf 
 
最も多いのが300万円超400万円未満で840万人(構成比16.5%)、次いで400万円超500万円未満の779万人(構成比15.3%)となっており、年収2,000万円超の人は非常に少ないことが分かります。 
 

給与所得者では非常に難しい年収 

調査結果から考えられるのは、会社員の給与所得だけで年収2,000万円を超えるのは非常に難しいということです。もし年収2,000万円以上を目指すのであれば、給与所得だけに頼るのではなく、他にしっかりとした収入源を持つ必要があるといえます。 

収入源として考えられるものには以下があります。 

  • 副業を行う 
  • 起業する 
  • 株式や投資信託、不動産などへの投資で収入を得る 

上記の中でも、爆発的に収入が増やせるのが「起業して経営者になる」という選択肢ですが、「事業を成功させる」という難しいミッションをこなさなくてはなりません。 

年収2,000万の所得税を計算 

年収2,000万円を達成した場合、所得税がどの程度かかるのかが気になります。インターネット上では年収や社会保険料の金額、控除額(基礎控除、配偶者控除、保険料控除など)を入力すると、課税される所得税や手取り額を算出できるシミュレーションや早見表がありますので、興味がある方は試算してみるとよいでしょう。

所得税は33%、住民税は10% 

国税庁は課税所得に対してかかる所得税の税率を以下のように公表しています。 

課税される所得金額 税率 控除額 
1,000円~194万9,000円まで 5% 0円 
195万円~329万9,000円まで 10% 9万7,500円 
330万円~694万9,000円まで 20% 42万7,500円 
650万円~899万9,000円まで 23% 63万6,000円 
900万円~1,799万9,000円まで 33% 153万6,000円 
1,800万円~3,999万9,000円まで 40% 279万6,000円 
4,000万円以上 45% 479万6,000円 

出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」 
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm 
 
年収2,000万円の場合、課税所得は1,600万円ほどです。よって、所得税率は33%、控除額は153万6,000円となります。 
 
また、課税所得にかかる個人住民税の所得割の税率は10%(道府県民税4%、市町村民税6%、政令指定都市は道府県民税2%、市民税8%)です。課税所得が1,600万円の場合、160万円となります。 
 
その他、以下の税金も課せられます。 
 
個人住民税(均等割):4,000円(道府県民税1,000円、市町村民税3,000円) 
森林環境税:1,000円 
復興特別所得税(2037年まで):基準所得税額×2.1% 

手取り額を計算 

では、給与収入のみ(通勤手当除く)で年収2,000万円の場合、手取り額がどの程度になるかを試算してみましょう。 

【条件】 

  • 年齢:20~40歳(介護保険料なし) 
  • 賞与:なし 
  • 配偶者控除・扶養控除・ひとり親控除・障害者控除・生命保険料控除・その他控除:なし 

概算ですが、結果は表のようになりました。 

年収 2,000万円 
所得税 371.1万円 
住民税 160万円 
厚生年金 71.3万円 
健康保険 83.2万円 
手取り額 1,302万円 

出典:あなたの手取り・税金・社会保険料はいくら?【年収別】早見表一覧 
https://www.mmea.biz/5330/ 
 
年収が2,000万円の場合、手取り額は1,302万円となり、税金や年金、保険料で700万円近く引かれます。少しでも手取り額を多くしたいのであれば、節税に力を入れる必要があるといえそうです。 

給与所得者は確定申告が必要 

多くの給与所得者は勤務先が源泉徴収を行い、所得税額や社会保険料などを計算して納税を行いますが、年収2,000万円を超える場合、給与所得者であっても確定申告が必要になります。 

確定申告とは、毎年1月1日~12月31日の所得から所得税額等を計算して申告するというものです。詳細を以下で確認しましょう。 

申告期間 毎年2月16日~3月15日 
申告書の作成方法 ・手書き ・会計ソフトで作成 ・確定申告書作成コーナーで作成 ・税理士に依頼 
申告の方法 ・所轄の税務署へ持参 ・税務署へ郵送 ・電子申告(スマートフォン、パソコン経由) 

申告書は手書きだけでなく、会計ソフトで作成ができます。また、電子申告が可能なため、税務署に行く必要もありません。今後のために、確定申告の方法をチェックしておくことをおすすめします。

給与所得者でもできる所得税を節税する方法 

所得控除を利用することで所得税の節税ができます。青色申告をする事業者と比較すると給与所得者が使える控除方法は限られていますが、以下のようなものがありますので、最大限利用してください。 

  • 特定支出控除 
  • 医療費控除 
  • 生命保険料控除 
  • 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除) 
  • iDeCo(個人型確定拠出年金) 
  • NISA 
  • ふるさと納税

特定支出控除 

給与所得者のその年の特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1(最大で125万円)を超える場合、確定申告をすることで、超えている部分を控除することができます。なお、特定支出にあたるのは以下の支出です。 

通勤費 通常必要であるとされる通勤のための支出 
職務上の旅費 勤務地を離れて職務を行うために必要な旅行のための支出 
転居費 転勤に伴う転居のための支出 
資格取得費 職務に必要な資格を取得するための支出 
研修費 職務に必要な知識等を得るための研修にかかった支出 
帰宅旅費 単身赴任などで自宅から離れている場合、勤務地から自宅に戻る際にかかった支出 
勤務必要経費 書籍代、衣服費、交際費など、職務に直接必要なものの購入費 

医療費控除 

1月1日~12月31日までの1年間に自己や生計を一にする家族のために支払った医療費が10万円を超えると医療費控除が受けられます。医療費控除の金額は次の計算式で算出してください。 

1年間の医療費の合計額-保険金などの金額-10万円=医療費控除の金額 

医療費控除できる金額は最大で200万円となります。 

生命保険料控除 

生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合、所得控除が受けられます。控除額は以下で算出した金額の合計額となりますが、所得税控除の上限額は12万円です。 

生命保険料控除額は、毎年生命保険会社から郵送される「生命保険料控除証明書」をもとに計算しますので、なくさないように保管しておきましょう。(電子データで送られる場合もあります。) 

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除) 

住宅ローン返済中であれば、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けられる可能性があります。住宅ローン控除とは、住宅ローンを使って住宅を取得(新築・増改築含む)した場合、13年間(中古住宅の場合10年間)、毎年の住宅ローン残高の0.7%が所得税から控除されるという制度です。所得税から引ききれない時は住民税からも控除されます。かなり節税効果の高い制度となっているため、住宅を取得するならばぜひ利用しましょう。

なお、住宅ローン控除の控除率は、今後も下がる可能性がありますので、動きを注視しましょう。 

iDeCo(個人型確定拠出年金) 

iDeCoは私的年金制度の一種です。公的年金(厚生年金・国民年金)とは別に、掛金や運用商品を自分で決め、運用することができます。老後の生活資金作りを目的とした制度のため、60歳までは原則資産の引き出しができません。 

iDeCoの大きな特徴は、掛金は全額所得控除の対象という点です。また、運用中の運用益も非課税となっており、受取時にも税制の優遇があります。

加入資格により拠出限度額が月額1.2万円~6.8万円と異なってきます。例えば、確定給付型企業年金と企業型DCに加入している会社員の場合、拠出限度額は月額1.2万円ですが、自営業者の拠出限度額は月額6.8万円です。 

NISA  

NISAとは少額投資非課税制度のことです。NISAを利用して投資した場合、運用益(売却益・配当益・分配金)にかかる税金20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)が非課税となります。 

つみたて投資枠 

NISAのつみたて投資枠の特徴は次のとおりです。 

年間投資枠 120万円 
投資対象商品 長期の積立、分散投資に適した一定の投資信託 (2024年6月現在293本) ※取扱商品の種類は各金融機関で異なります 

つみたて投資枠は、毎月決まった金額分の投資信託を購入する「積立投資」で利用できる枠です。短期間での値上がり益を狙うというより、長期間保有し、少しずつ資産を増やしていきたいという方におすすめです。金融機関によっては100円程度から積み立てられるところもありますので、気軽に始められるのもメリットといえるでしょう。 

成長投資枠 

NISAの成長投資枠の特徴は次のとおりです。

年間投資枠 240万円 
投資対象商品 上場株式(日本株・外国株) ETF(上場投資信託) REIT(上場不動産投資信託) 投資信託 

成長投資枠は、株式・ETF・REIT・投資信託を取引する際に利用できる枠です。 

以前のNISAの場合、非課税期間が5年間だったため、5年を超すと新たな非課税枠に移管する必要がありました。しかし、新NISAの成長投資枠の非課税期間は無制限です。よって、手続きなしで長期間保有が可能です。また、年間投資枠が大きいため、一度にまとまった資金を運用したい方にもおすすめです。 

ふるさと納税  

ふるさと納税とは、自治体ごとの税収の偏りを是正するために生まれた制度です。納めるべき税金の一部を自分の好きな自治体に寄付できます。寄付した金額は自己負担分の2,000円を除き、「寄付金控除」の対象となるため、所得税還付や住民税の控除が受けられます。また、寄付した人は自治体から寄付金額の3割以内の金額の「返礼品」を受け取ることができます。返礼品がある点もふるさと納税の人気がある理由です。 

控除を受ける方法は以下の2つとなりますので覚えておきましょう。

確定申告 確定申告を行うと所得税還付と住民税の控除が受けられる 
ワンストップ特例制度 ・確定申告を行う必要がない給与所得者でふるさと納税を行った自治体数が5団体以内の場合に利用できる制度 ・ふるさと納税をした自治体ごとに「ワンストップ特例申請書」と本人確認書類を提出することで確定申告が不要になる ・住民税からの控除が受けられる(所得税還付はなし) 

もっとも効果的な節税は不動産投資 

ここまで、さまざまな節税方法をご紹介しましたが、どの方法を利用しても、大きな金額の節税は難しいといえます。 

より大きな金額を節税したいと考えるのであれば、不動産投資を検討してはいかがでしょうか。不動産投資が効果的な節税方法である理由をご紹介します。 

不動産所得は損益通算が可能  

不動産投資を始めて収入を得るようになると、年に1回確定申告を行う必要があります。不動産賃貸業を通じた得た所得は、不動産所得と分類されます。 

不動産所得は、不動産収入から事業に要した経費を差し引いて計算します。この所得部分に所得税・住民税・復興特別所得税が課税されるのですが、不動産所得は給与所得や事業所得など他の所得と損益通算が可能です。 

損益通算とは、各種所得金額の計算時に発生する一定の損失について、他の各種所得の金額から控除したうえで総所得金額を計算できる制度のことです。ある種類の所得金額がマイナスになったとき、その分を所得金額から差し引いて総所得金額を圧縮できるので、所得税などの節税につながります。 

ちなみに、帳簿上不動産所得が赤字となるのは、不動産収入より経費が上回る場合です。経費として認められるものには以下の費用があります。 

  • 減価償却費 
  • 金融機関からの借入金にかかる金利(ただし、不動産所得が赤字の場合、土地部分の金利は損益通算不可) 
  • 火災保険料・地震保険料 
  • 固定資産税 
  • 修繕費 
  • 管理費 
  • 広告宣伝費 
  • 仲介手数料 
  • 管理会社への管理委託料 
  • 減価償却費 
  • 司法書士や税理士に支払う報酬 
  • 不動産投資のために使った通信費 
  • 不動産投資のための勉強費用(書籍代、セミナー参加費用など) 
  • 固定資産税・都市計画税 
  • 不動産取得税・登録免許税・印紙税など不動産取得に関わる税金 
  • 不動産投資のために利用した自動車の自動車税・重量税 
  • 法人事業税 
  • 利子税 

税金の中には経費として認められるものもありますが、所得税・住民税・法人税は経費と認められません。 

減価償却は帳簿上の支出  

前節で紹介した経費のほとんどは実際にお金が出ていくものですが、「減価償却費」に関しては、会計処理で帳簿上赤字になるのみで実際のお金は出ていきません。帳簿上だけで赤字が出る減価償却費が経費と認められるため、不動産投資は非常に節税効果が高いといえるのです。 

給与所得で源泉徴収を受けている場合、確定申告で所得税の還付請求が可能です。還付請求により、まとまったキャッシュを得られる一方、6月以降は給与から控除される住民税が減額されるようになります。 

不動産投資における減価償却費は建物価格や築年数、法定耐用年数をもとに算出します。法定耐用年数は国税庁のホームページで確認可能ですが、住宅に関するものについて以下で簡単にご紹介します。 

【住宅用建物の法定耐用年数】 

建物の種類 年数 
木造 22年 
軽量鉄骨造 27年 
重量鉄骨造 34年 
鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄筋コンクリート造 47年 

出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数」 
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf 
 
新築の場合、上記の法定耐用年数が「減価償却期間」となりますが、中古住宅の場合は次の式で減価償却期間を計算してください。 
 

(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20% 

上記を踏まえて、1年間の減価償却費を計算します。 

建物価格÷減価償却期間=1年間の減価償却費 

減価償却費は「定額法」で計上されるため、減価償却期間の間は上記で算出された1年間の減価償却費を毎年計上できます。 

※以前は「未償却残高×定率法の償却率」で1年間の減価償却費を算出する「定率法」もありましたが、2016年(平成28年)税制改正により、定額法のみとなっています。 

家賃収入というインカムも実現  

不動産投資の魅力は節税効果が高い点だけではありません。毎月「家賃」という安定収入が入るというメリットもあります。物件を借りた人が数ヶ月などの短期間で出ていくことはあまりありません。多くの人が年単位で入居することが一般的です。何年もの間、安定的に収入が入ります。 

株式投資などは、株価の変動で利益額が大幅に異なってくることがありますが、家賃収入については、極端な値下がりはありませんので、収入額が大幅に減ることはありません。反対に、極端な値上がりもないため、堅実に資産運用したい方に向いています。 

融資を活用できる  

不動産投資を始める際、ほとんどの人が金融機関の融資を利用して不動産投資を行います。不動産投資のための融資審査は住宅ローン審査よりも厳しくなるのが一般的ですが、年収2,000万円以上の人であれば、属性評価が高くなるため、審査に通りやすくなると考えられます。さらに、融資を受けられる場合も金利の優遇や長期間の借り入れも期待できます。 

不動産投資による節税の重要ポイントと注意点 

不動産投資の節税についてポイントと注意点を解説します。どのような物件を選ぶべきか、また、物件購入時に意識しておきたいことについてもチェックしていきましょう。 

築古物件を取得する  

先述したとおり、不動産投資では減価償却期間の間、毎年、減価償却費を経費計上できます。減価償却を最大限に利用するためには、すでに法定耐用年数を超えた築古物件を取得し、1年分の減価償却費を増やすことを検討しましょう。 

法定耐用年数を超えた物件の減価償却期間は「法定耐用年数×20%」で計算できますので、以下のようになります。※小数点以下は切り捨てます。 

【法定耐用年数を超えている場合の減価償却期間】 

建物の種類 年数 
木造 4年 
軽量鉄骨造 5年 
重量鉄骨造 6年 
鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄筋コンクリート造 9年 

建物価格が大きい物件にする  

建物については減価償却の対象となりますが、土地部分については減価償却の対象となりません。売買価格のうち、建物価格が大きい物件ほどより効率的に減価償却費を計上することが可能になります。よって、減価償却費を利用した節税効果を高めるためには、建物価格が大きい物件を選んでください。 

例えば、同じ1億円の土地+建物でも、建物部分の価額によって減価償却費は次のように変わります。 

【条件】 

  • 建物の種類:軽量鉄骨造 
  • 減価償却期間:5年(法定耐用年数を超えた物件) 
  1. 土地価格3,000万円 建物価格7,000万円の場合 

1年間の減価償却費→7,000万円÷5年=1,400万円 

  1. 土地価格5,000万円 建物価格5,000万円の場合 

1年間の減価償却費→5,000万円÷5年=1,000万円 

同じ取得価額でも、建物の価額が2,000万円違うと1年間の減価償却費が400万円も違ってきます。 

売却時は長期譲渡所得になるようにする  

将来的に物件の売却を検討している方は、売却時の譲渡所得が長期譲渡所得になるよう意識しておく必要があります。長期譲渡所得と認められるのは、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合、つまり正月を6回越えた場合です。なお、5年を超えない譲渡で得る所得は短期譲渡所得となります。 

長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率を確認しましょう。 

【長期譲渡所得の税率】 

所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=20.315% 

【短期譲渡所得の税率】 

所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=39.63% 

※復興特別所得税の徴収期間は2037年12月31日までです。「所得税額の2.1%」で計算されます。 

ご覧のとおり、長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率は20%ほど違います。特段の事情がない限り、物件は5年超保有した方がよいでしょう。 

収益性のない物件を選ばない  

不動産投資には長期間安定的に家賃収入が入るというメリットがありますが、収入が入るのは入居者が入っている場合です。空室リスクが高い物件は避けるようにしましょう。 

空室率が高くなると、期待していた収入が得られず損失が膨らみますので、気をつけてください。 

物件選びをする際は、節税を意識するだけでなく、収益性も必ず確認しましょう。 

デッドクロスを意識する  

不動産投資における「デッドクロス」とは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回ることです。デッドクロスが起きると、税引き前のキャッシュフローに変化がなくても課税所得が多くなり、所得税等の税金が高くなります。 

デッドクロスが起きる原因を2つご紹介します。 

・金融機関からの借入金の返済が進み、利息が減るため 

先述したとおり、不動産投資を行うための借入金の利息部分は経費扱いとなります。利息が減ると経費も減るため、課税所得が増えるということです。 

特に、返済が進むにともない利息が減る「元利均等返済」を選択している場合は要注意です。 

・減価償却期間が終わったため 

建物の種類や築年数などにより減価償却期間が決まっています。帳簿上、支出があったわけではありませんが、減価償却期間が終わると、経費として計上できる金額が減るため、課税所得も増えます。 

節税を大きな目的として不動産投資を行うのであれば、デッドクロスを意識し、減価償却期間終了時点で売却を検討した方がよいでしょう。 

不動産投資による節税に詳しい不動産会社を味方につける  

不動産投資による節税の仕組みを理解している不動産会社から物件を購入する、管理委託をすることが重要です。 

「不動産会社は皆不動産投資と節税の仕組みを理解しているはず」とは限りません。大手不動産会社であったとしても、不動産投資と税金の関係は意外と知らないものです。 

これまで解説してきた①築古物件を取得する、②建物価格が大きい物件にする、③売却時は長期譲渡所得になるようにする、④収益性のない物件を選ばない、⑤デッドクロスを意識するのポイントをすべて理解している不動産会社は少数派とすらいえるでしょう。 

年収2,000万円あり、不動産投資による節税を検討している人は、不動産投資と税金に詳しい不動産会社とタッグを組み、戦略的なパートナーとするようにします。 

不動産投資による節税のシミュレーション 

実際に不動産投資を行った場合、どの程度節税できるかシミュレーションしてみましょう。今回は、単年での試算、5年後売却する際の試算をします。(試算を簡単にするために現金購入としています。) 

物件の想定

以下の条件の物件を購入した際、どの程度節税できるか計算します。 

●築27年・軽量鉄骨 

●減価償却期間 5年 

●物件金額 9,500万円 

●購入諸経費 500万円(土地と建物に按分) 

●投資総額 1億円(土地4,000万円、建物6,000万円) 

●現金購入 

●年間満室想定賃料 650万円 

●空室損・滞納損 40万円 

●運営費用 170万円 

※※土地取得負債利の損益通算の特例については考慮していません。 

単年の試算  

まずは、NOI(純営業収益)を出します。年間満室想定賃料が650万円、空室損・滞納損が40万円、運営経費が170万円のため、以下のようになります。 

650万円-40万円-170万円=440万円 

次に減価償却費ですが、6,000万÷5年=1,200万円です。 

よって、課税所得は440万円-1,200万円=-760万円となり、不動産投資での課税所得はマイナスになります。 

次に、給与にかかる所得税を計算します。年収が2,000万円(課税所得額1,591万円)あると仮定した場合、所得税は以下の計算式で算出されます。 

1,591万円×33%-153万6,000円=371万4,000円(1,000円未満切り捨て) 

同様に住民税を計算します。 

1,591万円×10%=159万1,000円(同) 

不動産投資でマイナス所得損失が760万円出ていることになるため、給与所得と通算すると、次の所得金額が出ます。 

1,591万円-760万円=831万円 

831万円にかかる所得税は以下のとおりです。 

831万円×23%-63万円6,000円=127万5,000円(同1,000円未満切り捨て) 

住民税は以下のとおりです。 

831万円×10%=83万1,000円(同) 

給与所得のみの場合と不動産投資と損益通算した場合で、所得税・住民税がどれくらい節税できるか計算しましょう。 

(371万4,000円+159万1,000円)-(127万5,000円+83万1,000円)=319万9,000円

1年間で319万9,000円の節税が可能です。 

毎年、年収(課税所得金額)、NOIなどが変化しないと仮定すると、減価償却期間の5年間で以下の金額の節税ができます。 

319万9,000円×5年間=1,599万5,000円

5年後売却後の試算  

長期譲渡所得制度があるため、保有期間が5年を超えると、譲渡所得にかかる税率の優遇があります。 

上記で取得した物件を5年後、長期譲渡所得の税率になった段階で、8,500万円(約10%値下がり)で売却したとして試算をします。売却時には手数料などで譲渡費用として255万円かかったとします。 

譲渡所得の計算式は以下のとおりです。 

8,500万円-(9,500万円+500万円-6,000万円)-255万円=4,245万円 

譲渡所得を計算する際に注意すべきポイントは、減価償却費の総額6,000万円を取得費から差し引く点です。取得費が小さくなり、譲渡所得が相対的に大きくなることで、不動産譲渡税が大きくなってしまうのです。 

長期譲渡所得の不動産譲渡税の税率は20.315%のため、税額が出ます。 

4,245万円×20.315%=862万3,000円(1,000円未満切り捨て) 

単年の試算で計算したように、5年間で節税できた金額は1,599万5,000円でした。トータルで考えると、440万円×5年=2,200万円の家賃による収益のほかに1,599万5,000円-862万3,000円=737万2,000円の節税ができたということになります。 

まとめ

年収2,000万円を超えると、かかる税金が高くなり、負担感も相当増すと思われます。NISAやiDeCo、ふるさと納税を利用して節税するという方法もありますが、効果は小さいといわざるをえません。 

もし、大きな節税効果を狙っているのであれば、不動産投資を検討してください。不動産投資の場合、管理費や保険料などで支払った費用以外に、減価償却費も経費扱いになるという利点があります。 

不動産投資で節税するためには、信頼できる不動産投資会社やコンサルタントを味方に付けることが重要です。大和財託では、不動産投資に興味がある、節税効果について知りたいという方のために手厚いサポートを行っています。ぜひ、一度ご相談ください。 

監修者

藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO

昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
資産運用領域で日本No.1の会社を目指し日々経営にあたっている。

マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
書籍「収益性と節税を最大化させる不動産投資の成功法則」や「収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則」を発売中。

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