違法建築物件とは?リスクやデメリット・見分け方を解説

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不動産投資用の物件を購入するため、物件ポータルサイトで検索していると、利回りが一般相場よりも高い物件が掲載されていることがあります。

たとえば人気エリアにもかかわらず表面利回り12%程度の物件が売れ残っている、ということがあります。

表面利回り12%と好条件の物件なら掲載すればたちまち売れてしまいそうですが、なぜこうした物件に買い手がつかないのでしょうか。

それは「違法建築物件」の可能性があるからなのです。

違法建築物件と聞くと、名前を聞くだけで「不動産投資には向いていない」「避けたほうが賢明」と考える方が大半でしょう。しかし、必ずしもそうとは限りません。

違法建築物件とは具体的にどのような物件なのか、どのようなリスクやメリット・デメリットがあり、どんな物件なら購入してもいいのかを詳しく解説します。

違法建築物件とは?

違法建築物件とは、建ぺい率や容積率がオーバーしていたり、防災設備が古かったり、接道義務に違反していたりするなど、建築基準法や都市計画法、消防法やその物件のある地域の条例などのどれかに、ひとつでも違反して建てられた建築物です。

違法建築物件には、たとえば容積率200%の制限がある土地に容積率400%で建てられたものがあります。こうした物件は、適法の物件よりも当然、入居できる部屋数が多くなるため、利回りも高くなります。物件情報ポータルサイトなどに利回り12%を超えるような高利回りの物件が出ている場合、違法建築物件の可能性もあるでしょう。

一方、違法建築ではないものの、よく混同されるものに、「既存不適格建築物」があります。既存不適格建築物とは、建築時には法令の範囲内で建築されたのに、その後に法令が改正されたために現在では適合しなくなったものを指します。決して違法建築ではありませんが、工事をして現行法に適合させる必要があるケースもあります。

なぜ違法建築が生まれるのか

違法建築がなぜ生まれるのか、疑問に思う方もいるでしょう。たとえば、物件を建築する前に役所に建築計画が問題ないか確認せずに建てたケース(確認済証がないもの)や、役所に提出した建築計画と異なる建物を建てたケース、建築後に違法に増改築を行ったケースなどがあります。昭和の終わりごろから平成初期にかけて、収益性を上げる常套手段としてよく行われていた習慣の名残でもあります。

完了検査を受けていない

建築基準法では、新たに建てられた建物が建築申請時に提出された図面に基づいて建てられているかどうか確認することが義務づけられており、完了検査と呼びます。一般には建築を請け負った工務店やハウスメーカーが申請を代行してくれます。完了検査が終わると、検査済証が交付されます。

この完了検査を受けていないと、即違法建築となるわけではありませんが、手続き上は違反になります。

国土交通省によって、建築確認検査制度が定められています。
https://www.mlit.go.jp/common/001279404.pdf

増改築によって違法になる

後述しますが、建物を建てる際は敷地面積に占める建築面積と延べ床面積の割合を示す建ぺい率、容積率に制限があります。増改築によってこれらの割合が増えてしまい、制限をオーバーしてしまうと違法建築になってしまいます。かつては、金融機関からの融資を受けるために、計画どおりに建築した後に確認を受け、販売の直前に増築をするといったことも行われていました。

また、10㎡以上の増築をする場合は役所に確認申請をしなければなりません。この手続きを怠ると、違法となります。

違法建築のリスク

違法建築の物件で不動産投資をする場合、知っておきたいリスクがあります。

最大のリスクは、こうした物件を購入するのに金融機関からの融資が出にくいことです。金融機関はローン債務者が支払い不能になったときに物件を差し押さえ、競売にかけて現金化し、回収します。違法建築の物件は購入者が現れにくいため、ローン返済に滞納が続いたときの回収が難しいと考えられているのです。もちろん、ご自身が売却したいときも買い手がつきにくいのは同様で、出口戦略で失敗してしまうことになります。

また、最近ではコンプライアンス重視の傾向が強く、そもそも違法建築に融資が出ないこともありますので注視しましょう。

このほか、違法建築には役所から使用禁止や是正指導が入る場合があります。最悪の場合、取り壊しの命令が出ますし、放置すれば行政代執行で解体され、費用請求されることもあります。

違法建築の物件で困ることは?

不動産投資のために違法建築の物件を購入した場合、困ることとしてどんなことがあるでしょうか。以下4つの観点から考えてみましょう。

そもそも違法建築物件を買いたい人は少ない

いうまでもないことですが、そもそも違法建築の物件を買いたいという人は少ないでしょう。

違法建築は、買い手が少ないため、想定売却価格はかなり低くしなければなりません。そうなると、トータルで見たときの不動産投資が失敗に終わる可能性があります。

買い手がローンを借りられない

さらに、せっかく買い手が現れても、買い手がローンを活用できない可能性があります。先述したように、金融機関はローン債務者が支払い不能になったときに物件を差し押さえ、競売にかけて現金化し回収するため、買い手がつきにくい違法建築の物件は融資の対象外となることが多いからです。違法建築物件とはいえ、不動産は高額ですから、現金一括で購入してくれる人は絞られてしまうでしょう。

売却できても売却価格は安くなる

買い手がつきにくいということは、よほど立地がいいなどのケースを除けば、当然、売却価格は低くしないといつまでたっても売れないことになります。出口戦略で失敗する可能性が高くなります。

違法建築物を賃貸した場合

最近、大手ハウスメーカーが違法建築をしていたことがニュースで取り上げられました。申請した建築計画と異なる設計や工事をした違法建築物の場合、建物の安全性や耐火性能が不十分なことがあり、災害が起きたときに入居者の生命を脅かすことがあります。

どんな建物が違法建築?

違法建築とされる建物は、どんなところが法令に違反しているのでしょうか。主なものとして、以下の5つがあります。

  • 建ぺい率を超えている
  • 容積率を超えている
  • 接道義務に違反している
  • 建築確認を実施していない
  • 完了検査を受けていない(直ちに違法ではない)

それぞれ詳しく解説していきます。

建ぺい率

建ぺい率とは、建築面積(建物を真上から見たときの面積)の敷地面積に対する割合です(建築面積は、軒・ひさし・出窓など突出部が1メートルを超える部分も含むため、一階部分の面積と異なることがあります)。たとえば、200㎡の土地に100㎡の建築面積の場合、建ぺい率は100㎡÷200㎡=50%になります。

建ぺい率は防災上の観点や風通しのよさ、景観などを考慮して制限がかけられます。地域ごとに建ぺい率の制限割合も異なります。この割合をオーバーしてしまうと建ぺい率違反となります。

容積率

容積率とは、敷地面積に対する延べ床面積の割合です。建ぺい率が平面的であるのに対し、容積率は空間的といえるでしょう。たとえば100㎡の土地に、1階部分が100㎡、2階部分が80㎡の床面積がある物件の場合、容積率は(100㎡+80㎡)÷100㎡=180%となります。

容積率に制限が設けられているのは、建物の規模が大きくなりすぎることで一つのエリアに人口が集中し、インフラがキャパオーバーになることを防止するためです。容積率も建ぺい率と同様、地域ごとに制限される数値が指定されています。また、建物がある敷地の前面道路の幅によっても変わってきます。

接道義務

接道義務とは、都市計画区域内で建物を建てる場合、その敷地は原則として幅員4メートル(6メートルの場合も)の建築基準法上の道路に、2m以上接していなければならないとする規定です。これを満たしていないと、建築確認を受けることができません。敷地に接している道路の幅が4メートルに満たない場合は、道路の中心線から2メートルのラインまで敷地の縁を後退(セットバック)させなければなりません。

いわゆる旗竿地や不整形な土地の場合は注意が必要です。

建築確認の実施

建築基準法では、10㎡を超えて増築する場合、役所(建築主事)に建築確認申請が必要になります。建築確認とは、建物を建てる工事の前に、建物をどう設計し、敷地内にどう配置するかなどの計画を役所に提出し、計画が法令に適合しているか確認を受けることです。建築確認に合格して「確認済証」が交付されないと工事に着手できません。この確認申請を行わずに増築を行うと、違法増築になります。また、建築時に提出した図面と異なる構造や仕様になっていたり、許可を受けた用途と異なったりしていれば、違法建築になります。

完了検査

建築基準法では、新たに建てられた建物が建築申請時に提出された図面に基づいて建てられているかどうか確認することが義務づけられており、完了検査と呼びます。一般に建築を請け負った工務店やハウスメーカーが申請を代行してくれます。完了検査が終わると、検査済証が交付されます。

建築計画に変更があった場合、変更内容が法令の範囲内であれば問題ありません。ただし、範囲外であれば完了検査に通らず、建築された物件は違法建築物となってしまいます。

ただ、完成時期が昔になるほど、検査済証が交付されている建築物は少ないのが実態です。国土交通省によると、1998年度時点の完了検査率は4割弱でそれ以前はもっと少なかったといわれています。2016年には9割強となりましたが、現在でも完了検査に通過していない物件が1割弱とはいえ存在することには注意しましょう。

違法建築の物件の見分け方

不動産投資で購入を検討している物件が違法建築かどうか、見分ける方法は簡単です。主な方法として以下2点がありますので、注意深く確認しましょう。

確認済証、検査済証があるか確認する

建物を新築する際には、作成した建築計画を役所などで事前審査を受けた上で、着工前に建築基準法に適合しているかのチェックである建築確認を受けます。ここで問題なければ確認済証を交付されます。

また、前述のように、工事完了後に問題なければ検査済証を交付されます。これらがあるかをまず確認しましょう。

増築部分を登記しているか調べる

建物の一部を増築工事すると、必ず増築登記をし、登記上の面積を修正する必要があると不動産登記法に定められています。先に10㎡以上の増築には建築確認が必要と記述しました。10㎡未満は確認申請が不要になるケースがあるだけで、不動産登記法上の増築登記は必要です。

違法建築物件の事例

違法建築物件の事例として、たとえば、5階建てマンションの1階を車庫、2~5階を住居として申請し、建築確認済証が出たのちに、収益性を上げるために1階の車庫部分を住居に変更する、などがあります。

車庫部分が容積率に算入されないことを悪用した手法で、関西の不動産業者は「車庫転」と呼びます。

1階が50㎡の車庫だった場合は、4台駐車が可能ならば、1区画月額1万円とする収入は4万円になります。これを住居に転用し、1室25㎡のワンルームを賃料5万円で貸し出せば、月の家賃収入は10万円になり、1階部分の収益性が2.5倍に上がるのです。

このように、賃料収入を違法に高める手法がかつては一部で存在したことは事実です。

違法建築物件は買ってもよい?

当社のスタンスとしては、違法物件の特性・リスクを理解した上で利回りが高ければ買ってもよいというスタンスを取っています。特に、属性が弱い方は、高利回りとなる違法物件を購入することでキャッシュフローを積み上げ、それを種銭として次の物件を購入していくフローを作ることができます。但し、違法物件の場合、一部の信用金庫や信用組合、または、ノンバンクしか融資を出してくれない可能性が高いため、注意が必要です。

まとめ

以上、述べてきたように不動産投資をするために違法建築物件を選択することは、さまざまなリスクが存在します。立地がよく高利回りの物件もあって魅力的に見えるかもしれませんが、選択する際にはその特性やリスクを十分理解した上で意思決定してまいりましょう。

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監修者

藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO

昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
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マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
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