【事例あり】マンションの理事会でよくあるトラブルと対処法を解説

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マンションの理事会とは、管理組合の構成員から選出された代表者による組織のことで、マンションの維持・管理に関わるあらゆる意思決定を行います。マンションの理事会ではいろいろな価値観の人と接するため、トラブルが発生することもめずらしくありません。そのため、適切な対応方法を把握しておくことが重要です。

本記事では、マンションの理事会におけるよくあるトラブルと、その対処法について解説します。安定した理事会の運営にぜひお役立てください。

マンションの理事会におけるトラブルは大きく2種類に分けられる

マンションの理事会におけるトラブルは、「理事間のトラブル」と「住民のトラブル」の2種類に大きく分けられます。それぞれに起こるトラブルの特徴を見ていきましょう。

理事間のトラブル

区分マンションを購入した場合、管理組合に必ず参加しなければならないことが「区分所有法」により定められています。管理組合の理事は、定例会で管理の方向性について議論しなければならないため、プライベートの時間を拘束されることもある役割です。

そのため、「理事になることを拒否する」、「定例会に参加しない」などのトラブルに発展するケースもあります。また、管理の方向性について理事同士で意見が対立した結果、トラブルになってしまうこともあるでしょう。このように、理事会に後ろ向きな方や、自分の意見を強く主張する方により、理事同士のトラブルが起こるケースがあります。

住民のトラブル

住民同士のトラブルを解決することも理事会の業務です。マンションの住民には年齢や価値観などが異なる人が居住しているため、意見が対立したり、クレームが発生したりする可能性があります。例えば、共有スペースの使い方や騒音問題、ペットの飼育に関する問題などです。

このようなトラブルは理事会の議題として挙げられ、規約に則った対応をしたり、適宜ルールの改正や追加を行ったりして解決する必要があります。トラブルを大きくしないように、それぞれの言い分を尊重して冷静に対応することが重要です。以上のように、理事会が対応する住民のトラブルは、マンションの共同生活に起因して発生します。

理事間で発生しやすいトラブルの具体例を紹介

理事間で発生しやすいトラブルの具体例は以下の3つです。

  • 理事になる人がいない
  • 理事間の仲が悪い
  • 役割を果たさない理事がいる

トラブルの事例を認識しておくことで、事前に対策を検討できます。

理事になる人がいない

前述した通り、理事会に参加すると定例会の参加や行事の準備などの負担が発生するため、「理事に立候補する人がいない」というトラブルが起こりがちです。住民の高年齢化が影響している場合は仕方ありませんが、立候補する人がいないからといって、同じ人ばかりが理事をしていては、不公平になりさらに大きなトラブルに発展しかねません。

解決策としては、推薦や順番に役割が回ってくる輪番制を検討するのがよいでしょう。まずは立候補を募り、候補者がいない場合は推薦や輪番制を検討します。注意点は、組合員の納得を得たうえで導入することです。輪番制や推薦により理事になる可能性があることを事前に説明しておきましょう。どうしても理事になる人が見つからない場合は、管理会社など外部の人間に依頼する方法もあります。

理事間の仲が悪い

理事会にはさまざまな人間が関わるため、なかには仲が悪い理事同士によるトラブルが起こることがあります。理事長や副理事長の仲裁により解決する場合もありますが、議論が過熱し収拾がつかない場合、なんらかの解決策を講じなければなりません。

時間をおいて再度話し合うなどの解決策もありますが、関係性が悪化し、改善が難しい場合は当事者の解任を検討する必要があります。理事の解任は、総会の普通決議で過半数の賛成を得ることで実現できます。最終的な解決方法ですが、理事会の雰囲気が悪いと適切な管理に悪影響があるため、理事の解任も検討しましょう。

役割を果たさない理事がいる

理事になったにも関わらず、課題に対してなにも行動しないというトラブルの事例もあります。例えば、「定例会にまったく参加しない」「割り振られた仕事をやってこない」などです。最悪の場合は解任の手段をとることになりますが、役割を果たさない原因をヒアリングし、解決策を検討することも大切です。

話を聞いてみると、ワンオペ育児や介護などの事情により参加が難しいのかもしれません。原因が明確になると、できる範囲の業務を割り振ったり、事情を説明して他の人に理事を依頼したりすることもできます。役割を果たしていないからといって、強く当たるとさらなるトラブルに発展するほか、理事のなり手がより減少する可能性があるため、冷静な対処が求められるでしょう。

マンションの住民のトラブル・クレームを紹介

マンション住民の主なトラブル・クレームは、「住環境に対する不満」や「理不尽な要求・クレーム」などが挙げられます。それぞれの詳しい内容を見ていきましょう。

住環境に対する不満

マンションで多いトラブル・クレームには「騒音」「ペットの飼育」「違法駐車」などがあります。具体的には以下のような内容です。

  • 足音や子どもが騒ぐ声
  • 夜間の楽器演奏
  • ペット不可のマンションでの飼育や飼育マナーの欠如
  • 敷地内の違法駐車

これらが原因でトラブル・クレームが起きた際は、理事会の議題として対処法を検討する必要があります。適切な規約の改変・追加により、快適な住環境の確保につながるでしょう。

理不尽な要求・クレーム

適切な要求・クレームであれば問題ありませんが、なかには理不尽な要求・クレームを行いトラブルを起こす居住者も存在します。例えば以下のような内容です。

  • 共用部が汚れているから管理会社を変えるよう要求
  • 駐車場が狭くて車をぶつけたので修理代を出すよう要求
  • いつも受付に管理人がいないから交代するよう要求
  • 理事長が気に入らないから新しい人を選出するよう要求
  • 自分の玄関は念入りに掃除するよう要求

理事会に上げて丁寧に議論するのであれば問題ないケースもありますが、強引な内容であれば悪質な要求と判断できます。内容があまりにもひどい場合は、理事会だけで対応せずに管理会社へ相談するとよいでしょう。

マンションの理事会担当者必見!適切なトラブルの対処法とは

マンションの理事会でトラブルが起きた際の適切な対処法は以下の4つが挙げられます。

  • 話を冷静に聞く
  • 1人で対応しない
  • 理事を解任するのも1つの方法
  • マンション管理士などの専門家に理事長代行を依頼する

以上を意識することで、事態を悪化させずに解決できる可能性を高くできます。

話を冷静に聞く

住民からクレームを受けた際は頭ごなしに否定したり、即答したりするのではなく、冷静に話を聞くことが大切です。住民のクレームが理不尽なものであっても、その人なりの理屈があり話をしにきています。

話を遮らず、一旦すべて受け止めることで、住民も冷静さを取り戻して考えを改めてくれるかもしれません。そもそも、話を聞いてもらうことが目的の場合もあるので、事態を悪化させないためにもまずは話を聞くように意識しましょう。

1人で対応しない

クレームに1人で対応すると、感情的になったり意見が偏ったりする恐れがあります。また、管理組合における規約の変更には「総会で議決権の4分の3以上」の同意が必要なので、1人で判断してはいけません。

その場はクレームを聞くに留め、理事会で議論する旨を話し、複数人で対応できる体制を整えることが大切です。進行役や議事録係がいる環境で議論することで、論点を整理しながら冷静に対応できるでしょう。

理事を解任するのも1つの方法

問題がある理事がいる場合は、解任を検討することも理事会の秩序を守るために重要な選択肢です。理事の解任には、管理組合の総会決議で普通決議の過半数をとる必要があります。

また、総会を開く際は、「理事長へ開催を求める」「監事が開催を求める」「区分所有者が開催を求める」のいずれかの方法を選択しましょう。適切なマンション管理を実現するには、管理組合の積極的かつ適正な活動が必要です。解任の手続きはハードルが高い面もありますが、快適な住環境の確保やマンション価値の維持・向上のためにも、最終的な手段として認識しておきましょう。

マンション管理士などの専門家に理事長代行を依頼する

理事長の代行とは、マンションの管理組合員以外の第三者に理事長の業務を委託することです。主にマンション管理士や管理会社、弁護士などへの業務委託となり、「第三者管理方式」と呼びます。通常であれば、理事長は管理組合の役員から選出されますが、2011年・2016年の標準管理規約の改正により外部の専門家への委託が可能となりました。

第三者管理方式は、理事長のなり手不足の解消や管理組合の負担を軽減できます。また、専門家に委託することで、適切なマンション管理が期待できるでしょう。しかし、管理費が高額になることや、第三者への委託により利益相反が発生する可能性があります。特に、工事業者の選定などでインセンティブが発生する関係はないかなど、チェック体制を整えることが大切です。

以上のように、理事長の代行は管理組合の負担を軽くできる方法ですが、委託先の選定やチェック体制には十分注意が必要となります。

当社マンション管理士のひと言

マンションは、管理組合が主体となって運営していく必要がありますが、実働している理事会が機能することが重要です。マンション全体の目指すべき方向性を決めたうえで、管理会社への委託業務を精査し、第三者の意見も聞きながら理事会運営が出来れば、よりよい組合運営に近づいていくでしょう。

まとめ

マンションの理事会は、理事間の対立や住民からのクレームなど、さまざまなトラブルに見舞われるものです。マナーに起因する住環境への不満や、理不尽な要求・クレームを受けることもあるでしょう。

トラブルが発生した際は、管理規約に沿って複数人で議論し、冷静に対応することが重要です。また、解決できない理事間のトラブルが起きたときは、理事の解任も検討しなければなりません。

しかし、日常生活を送るなか、理事会だけですべてのトラブルに適切な対応をとるのは難しいでしょう。そのようなときは、第三者へ理事長の委託を検討してみてください。専門家へ委託することで、理事会の負担を減らしつつ管理の質が向上する可能性があります。

大和財託では、マンションの管理改善・修繕などのサービスを提供する「やまとのマンション管理」を運営しています。マンション管理士をはじめとするプロフェッショナルが在籍しているので、理事会の課題やマンションの特性に合わせたご提案が可能です。また、マンション管理士による理事長代行や、アドバイザーとしてのサポートにも対応しています。

監修者

黒木 淳/大和財託株式会社 マンション管理士・マンション管理シニアコンサルタント

【保有資格】
管理業務主任者・マンション管理士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

【プロフィール】
損害保険調査業、鉄道系大手分譲マンション管理会社を経て、大和財託株式会社に入社。
所有者にとって最適な物件管理を提案することを重視し、「大切な資産」であるマンションを守るため、各オーナー様の物件管理をサポート。

【メッセージ】
分譲マンションの問題が多様化する昨今、当社は大規模修繕工事は当然、税務や管理運営まですべての分野に対応できることが強みです。
長年、マンション管理に携わってきた経験を活かし、管理組合様、理事長様のニーズに寄り添ったサービスを提供し、皆様の快適な暮らしをサポートいたします。
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