マンション管理士とは?仕事内容や求められる役割、管理業務主任者との違いを徹底解説!

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マンション管理について専門家に相談をしたくても「誰に相談すれば良いか分からない」とお悩みの方もいるでしょう。

マンション管理に関することは、管理全般の知識を有する「マンション管理士」への相談が適切といえます。

この記事は、マンション管理士の役割や仕事内容、管理業務主任者との違いを徹底解説する内容です。

マンション管理士を利用する具体的なイメージができるため、マンションの管理にお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

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マンション管理士とは

マンション管理士とは、管理組合のサポートを行うマンション管理の専門家です。ここでは、マンション管理士の概要や役割、マンション管理士になる方法を紹介します。

マンション管理におけるアドバイザー

マンション管理士とは、マンションの適切な維持、管理の提案を行う「マンション管理全般におけるアドバイザー」です。

マンション管理組合の役員や、区分所有者などから以下のような相談を受けます。

  • 会計処理について
  • 大規模修繕工事の計画立案
  • マンション管理組合の運営方法
  • マンションでの生活に関わる相談

以上のように、マンション管理において幅広い相談に対応してくれます。そのためマンション管理士は「住民の快適な生活環境を守るためのアドバイザー」といえるでしょう。

マンション管理士が求められる役割

マンション管理士に求められる役割は、2つに分けられます。

1つ目は管理組合のサポートによる「マンション管理の適正化」、2つ目はマンション管理適正化による「良質なマンションストックの形成」という将来に向けた役割です。

マンション管理の大部分は管理会社へ外部委託し、サポートを受けることが一般的です。しかし、それだけでは適切な管理が難しいため、マンション管理士のサポートも重要になります。

そして、管理組合をサポートすることにより適切なマンション管理が行われると「将来的に良質なマンションストックを形成できる」という訳です。

国土交通省の調査によると、2021年時点でのマンションストックは「685.9万戸」存在し、国民の約1割以上が居住しているといわれています。その中で、築40年以上のマンションは「115.6万戸」です。さらに10年後には「249.1万戸」、20年後には「425.4万戸」になると予想されています。

出典|国土交通省:分譲マンションストック戸数

出典|国土交通省:築後30、40、50年以上の分譲マンション戸数

上記のように、マンションの老朽化が進む一方需要は増加しており、良質なマンションストックの形成はますます重要になっていくでしょう。

このようにマンション管理士は「管理組合のサポートによるマンション管理の適正化」と「良質なマンションストックの形成」が役割といえます。

マンション管理士になるには国家試験に合格する必要あり

マンション管理士になるには、年に一度行われる国家試験である「マンション管理士試験」に合格する必要があります。受験資格に制限はなく、誰でも挑戦できる資格ですが、合格率は10%未満と難易度の高い資格です。

試験科目は

  • マンションの管理に関する法令および実務に関すること
  • 管理組合運営の円滑化に関すること
  • マンションの建物および附属施設の構造や設備に関すること
  • マンション管理適正化法に関すること

など、幅広い試験範囲となっています。

そのため、マンション管理士を取得している方は「マンション管理において幅広い知識を持っている」といえるでしょう。しかし、実際のマンション管理には実務経験が欠かせません。管理を依頼するときは「マンション管理の実務経験を積んだマンション管理士」に依頼しましょう。

マンション管理士の仕事内容について

マンション管理士の仕事は、管理組合へのアドバイスだけではありません。マンション管理に重要な修繕工事の計画や会計管理など多岐に渡ります。それぞれ具体的に見ていきましょう。

管理組合の運営やアドバイス

管理組合の役員などからの相談に対応する業務です。具体的には、マンション管理に関する運営方法や会計処理などのアドバイスを行います。

マンションの管理組合は区分所有者が運営しているため、マンション管理の専門家ではありません。マンション管理の専門家がいない状態では、適切な管理を行うことは難しいでしょう。そこで、専門家であるマンション管理士からアドバイスをもらい、適切な管理・運営を行います。

マンションの修繕工事の計画

通常、マンションは老朽化に備え、大規模修繕を含む「長期修繕計画」を作成しなければいけません。長期修繕計画は、マンション管理において重要な要素とされており、一般的には10〜30年程度の期間を対象に計画します。

修繕工事の例は以下のとおりです。

  • 鉄部等の塗装工事
  • 外壁工事
  • 屋上防水工事
  • 給水管工事
  • 排水管工事

工事時期に一般的な目安はあるものの、マンションの建築仕様や設備により異なるため、専門家への相談が必要です。また、修繕時期の計画に加え、適切な収支計画を定めておかないと、修繕積立金が不足する可能性があります。

国土交通省の調査によると、修繕計画に対する修繕積立金が不足している割合は「34.8%」と、多くのマンションが資金不足の状態です。このような状態では、将来的に大規模修繕ができずマンションの老朽化が加速する恐れがあります。

出典|国土交通省:平成 30 年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状

マンション管理士は、上記のような「重要で難易度の高い長期修繕計画の作成や見直し」も業務の一環です。

管理組合の会計管理

マンション管理士は、健全な管理に欠かせない会計管理業務も行います。マンションの管理や修繕は区分所有者から集めた資金で賄われるため、健全な会計管理が欠かせません。とはいえ、管理組合の役員だけで会計管理を行うのは難しいものです。

マンションの会計管理は「管理費」と「修繕積立金」の2つに分類されます。

管理費の例は以下のとおりです。

  • 管理会社の管理委託費用
  • 管理組合で使用する備品代
  • 共用部の清掃費
  • 設備の保守・点検費用
  • 共用部の水道・光熱費

このような、日々の管理に使われる費用のことを指します。

続いて修繕積立金の使用例は以下のとおりです。

  • 建物全体の老朽化防止
  • 大規模な修繕工事
  • 外壁塗装や防水工事

大規模修繕は「数千万円規模の資金」が必要になる場合もあるため、長期修繕計画を元にした「適切な会計管理」を行う必要があります。

以上のように、マンションの健全な管理に重要な会計管理も、マンション管理士の重要な業務です。

管理規約や使用細則の運用

管理規約や使用細則とは「住民がマンション生活を快適に送るためのルール」のことです。管理規約などの取り決めがないと、住民間のトラブルが起こったときに対処が難しくなります。この管理規約や使用細則の内容を精査することもマンション管理士の業務です。

まずは、管理規約と使用細則の概要と違いを解説します。

管理規約とは、マンションの管理や使用に関して定められる基本的なルールのことです。

たとえば

  • 共用部分の変更
  • 建て替えの議決案件
  • 費用の負担額
  • ペットの飼育可否

など、マンション運営や管理組合員の権利などに関わる重要な項目が中心です。そのため、管理組合員が自由に決めて良い訳ではなく「建物の区分所有等に関する法律」をベースに定められます。

しかし、法律を適切に読み解き管理規約に反映させることは簡単ではありません。そこで、国土交通省により管理規約の標準モデルとして「マンション標準管理規約」が作成されました。この規約を参考に作成していきます。

管理規約はルールの大枠を決める規約です。その他の細かいルールは「使用細則」により定められます。

たとえば

  • ゴミ捨ては当日の朝9時までに行う
  • 夜8時以降は楽器の演奏をしてはいけない
  • 小鳥や観賞魚以外の動物を飼育してはいけない

など、具体的で細かなルールです。

以上のように、管理規約で「ルールの大枠」を定め、使用細則で「細かなルール」を定めるという違いがあります。

このような、マンションの住み心地に関わる管理規約や使用細則の精査や見直しも、マンション管理士の業務です。

管理委託契約のチェック

管理委託契約とは「賃貸物件や分譲マンションなどの管理」を管理会社へ委託するための契約です。管理会社へ委託する業務は

  • 事務管理業務
  • 管理員業務
  • 清掃業務
  • 建物・設備管理業務

などが一般的です。すべての業務を委託する場合や、一部の業務だけを委託する場合があります。

管理会社と締結する管理委託契約の内容が適切であるかを、一定の法律知識を持つマンション管理士がチェックします。

管理委託契約は、管理組合と管理会社、双方の合意に基づいて契約を交わすものです。その際、管理会社側にとって都合が良い契約内容になることを防ぐため、国土交通省が定めた「マンション標準管理委託契約書」をベースに作成します。

このように一定の平等性は確保されていますが、契約内容の精査は必要です。

たとえば

  • 解除に関する損害賠償などの記載
  • 契約解除の申入れ期間に関する記載
  • 滞納者へ督促を行う期間に関する記載
  • 災害など緊急対応時に関する記載

など、重要な箇所は慎重にチェックしなければいけません。

以上のような管理委託契約のチェックを行うことも、マンション管理士の重要な業務です。

住民同士のトラブル解決

マンションは多くの住民が共同生活を送るため、住民同士のトラブルが起きやすい環境といえます。平成30年に行われた国土交通省の調査によると「トラブルのないマンションは23.2%」しかありません。さらに、発生するトラブルの中で「居住者間のマナーをめぐるトラブルは55.9%」です。

トラブルの内訳も見ていきましょう。

  • 生活音:38%
  • 違法駐車・違法駐輪:1%
  • ペット飼育:1%
  • 共用部分への私物放置:1%

出典|国土交通省:平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状

上記のデータから、多くのマンションが住民同士のトラブルに悩まされていることが分かります。このような住民同士のトラブル解決も、マンション管理士が対応する業務です。

マンション管理士と管理業務主任者の違い

まず、管理業務主任者について解説します。

管理業務主任者とは、マンション管理業者においての「重要事項説明」や「管理事務報告」を行う際に必要となる資格です。

マンション管理士と同様、国家資格である「管理業務主任者試験」に合格しなければいけません。そのため、資格取得者は「マンション管理に関する一定の知識を有している」といえます。

管理業務主任者の具体的な仕事内容は、マンションの管理を管理会社として受託し、重要事項説明等を含む管理業務を行うことです。

続いて、マンション管理士との違いを解説します。

主な違いは「独占業務の有無」と「サポートにあたる立ち位置」です。

マンション管理士には独占業務がありません。しかし管理業務主任者には、以下の独占業務が存在します。

  • 管理組合に対して行う管理事務の報告
  • 管理受託契約書への記名・押印
  • 管理受託契約に関する重要事項の説明
  • 管理受託契約に関する重要事項説明書への記名・押印

さらに管理業務主任者には「30管理組合につき1人以上の割合で管理業務主任者を設置する」という義務がありますが、マンション管理士には設置条件がありません。

次は「サポートにあたる立ち位置」について解説します。マンション管理士は「管理組合側の立場」に立って建物の保全、管理運営に関するアドバイスを行います。

一方、管理業務主任者は管理会社に所属し「管理業務の立場」に立って受託契約上の説明や管理に関するサポートを行うという違いがあります。

上記のような違いがある「マンション管理士」と「管理業務主任者」ですが、試験内容は共通する部分が多く、いずれもマンション管理のエキスパートといえるでしょう。

マンション管理士の必要性

マンション管理士を活用すれば、マンション管理全般の助言や指導を受けられるメリットがある一方、コストがかかるなどのデメリットもあります。

それぞれ具体的なメリット・デメリットを見ていきましょう。

マンション管理士を利用するメリット

マンション管理士を利用すると「マンション管理を適正化できる」「管理組合員、管理会社の負担が減らせる」などのメリットがあります。

マンション管理士を利用することで、管理組合員が行う日々の業務から長期修繕計画などの重要な項目まで、管理組合の立場に立って助言や指導をしてくれます。それにより、マンション管理全般を適正化できることに加え、管理組合員にノウハウが蓄積され主体的な運営にも繋がるでしょう。

また、適切な助言により管理組合の負担を減らせるほか、住民からのクレームなどにも対応するため管理会社の負担も減らせます。さらに、管理組合と管理会社の折り合いが付かない場合の調整役としても活躍してくれるでしょう。

以上のように「マンションの管理全般を適正化できる」「管理組合、管理会社双方の負担を減らすことや、信頼関係を築くサポートをしてくれる」などのメリットがあります。

マンション管理士を利用するデメリット

マンション管理士を利用するデメリットは「コストがかかること」です。

依頼するマンション管理士やマンションの規模により異なりますが、助言や指導を受けられる顧問契約は「月額30,000〜100,000円程度」が相場です。また、管理規約の見直しや改正業務、大規模修繕工事のサポートなどの業務を依頼するには、別途数十万円必要になります。

しかし、コストがかかる一方、スムーズなマンション管理の運営や無駄な支出の削減などが期待できるため、一概にデメリットとはいえません。実際に、大和財託が提案した大規模修繕において「工事期間3ヶ月、見積価格5,000万円」の工事が「工事期間2ヶ月、見積価格3,000万円」になった事例もあります。

このように、コストがかかるデメリットはありますが、信頼できるマンション管理士に依頼できるとコストを上回るメリットがあるでしょう。

マンションの自主管理について

マンションの自主管理とは、管理会社を利用せずにマンションの管理・運営を行う方法です。マンション管理会社を利用した場合と比較した自主管理のメリット、デメリットを紹介します。

マンションを自主管理する際のメリット

自主管理を行う一番のメリットは「管理コストを抑えられること」です。管理会社を利用する際に発生する「管理委託費用」が自主管理では発生しません。そのため、毎月の管理費を抑えられるでしょう。

また、管理組合のみで運営を行うため、居住者のマンション管理に対する意識が高い傾向があります。さらに、管理に対する意識が高いと居住者同士のコミュニケーションも活発になるでしょう。日頃から話し合う機会を持つことで、管理に対する認識の違いや緊急時のスムーズな対応に役立つと考えられます。

マンションを自主管理する際のデメリット

 自主管理を行うデメリットは「適切な管理が難しい」ところです。日常的な清掃作業はもちろん、適切なタイミングの設備点検を主体的に行う必要があります。また、問題なく管理ができていたとしても、長期に渡りマンション内で管理作業を行う人材を確保しなければいけません。

自主管理が原因でマンションの建物や設備に不備が出ると、資産価値の下落にも繋がります。以上のように、長期的に見るとデメリットが大きくなる可能性があるため、信頼できる管理会社に委託する方が、住民の安全・安心に繋がるでしょう。

当社マンション管理士のひと言

従来のマンション管理は、ディベロッパーの系列会社である管理業者が管理を行い、所有者も、管理会社にすべて任せておけば大丈夫という意識で行われてきました。

しかしながら、経年マンションでは積立金の不足などの問題が生じたり、採算の取れない組合に対して管理会社側から管理の解約を提示したりするなど、様々な問題が起きています。

今後はさらに管理組合の自主性が求められ、所有者自身が管理組合の運営に関心を持ち、積極的に関わっていくことが必要と考えられます。

その際には、マンション管理士等の専門家の活用が必要になってくるでしょう。

まとめ

マンションの管理は、多くの知識や経験が必要となる難しい業務です。適切な管理や資産価値の維持を考えると、マンション管理士などの専門家へ相談することが合理的といえます。

日常の管理に関わる幅広い相談に加え、管理規約の見直しや長期修繕計画の立案など、マンション管理の重要な項目も委託可能です。

大和財託株式会社では、資産運用のほか分譲マンション管理のコンサルティングを行っています。「マンション管理士や管理業務主任者の資格を保有する専門家」も在籍しておりますので、マンション管理でお悩みの際は、大和財託までお気軽にご相談ください。

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監修者

黒木 淳/大和財託株式会社 マンション管理士・マンション管理シニアコンサルタント

【保有資格】
管理業務主任者・マンション管理士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

【プロフィール】
損害保険調査業、鉄道系大手分譲マンション管理会社を経て、大和財託株式会社に入社。
所有者にとって最適な物件管理を提案することを重視し、「大切な資産」であるマンションを守るため、各オーナー様の物件管理をサポート。

【メッセージ】
分譲マンションの問題が多様化する昨今、当社は大規模修繕工事は当然、税務や管理運営まですべての分野に対応できることが強みです。
長年、マンション管理に携わってきた経験を活かし、管理組合様、理事長様のニーズに寄り添ったサービスを提供し、皆様の快適な暮らしをサポートいたします。
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