管理組合とは、マンションにおける快適な住環境の確保や資産価値の維持・向上を目指すためのものです。管理組合が正しく機能することで、共用部や各種設備が適切に管理され、清潔・安全に利用できます。しかし、「役割や仕組みがわからない」「トラブルに巻き込まれそう」などの不安を持つ方もいるでしょう。
そこで本記事では、管理組合の仕組みや具体的な役割、管理組合が正しく機能することでもたらされるメリット、トラブル事例などを解説します。管理組合に関わる際の参考としてお役立てください。
目次
管理組合とは
管理組合とは、マンションの区分所有者によって構成される団体のことを指します。
「マンションの管理は管理会社が行うもの」と考えがちですが、管理の当事者はあくまでも区分所有者からなる管理組合です。
管理組合の目的はマンションを維持・管理し、快適な住環境や健全な資金運用を行うことです。具体的には、共用部の清掃や設備の管理、会計処理など多岐に渡ります。またマンション内で起こるトラブルを解決する役割も担い、例えば騒音トラブルがあった際に注意を促すなどの対応も求められるでしょう。
法律で設置が定められている
管理組合は民法の特別法である「区分所有法」により設置が定められています。区分所有法で定められている内容は主に以下の要素です。
- 専有部分や共用部分、建物の敷地に関する権利関係について
- 規約や集会、管理組合等について
- 建替えや大規模修繕について
管理組合はこの区分所有法の内容に沿って管理規約を策定し、マンション管理を行わなければなりません。つまり、管理組合は任意での設置ではなく「法律で定められた義務」ということになります。
全区分所有者が加入する
管理組合への加入は区分所有法により定められており、区分マンションを購入した時点で管理組合員となります。以下は区分所有法第3条からの引用です。
” 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。” 原文ママ
購入したマンションを賃貸に出している場合でも、所有者が管理組合に加入する必要があります。一方、賃借している入居者は加入できません。あくまでも「区分所有者全員」が加入するのがマンションの管理組合です。
管理組合の役割
管理組合が担う役割には、以下のようなものがあります。
役割 | 内容 |
管理規約の作成 | ・「マンション標準管理規約」を基に作成するマンション内のルール ・マンションの特性に合わせ適宜ルールを追加する ・トラブルの抑止、対処の指針として活用する |
共用部分の管理 | ・共用部分の清掃やエレベーター、消防設備の維持・管理など ・法律で義務付けられた点検・調査などもある ・快適な住環境や安全の確保が目的 |
管理費・修繕積立金の徴収と管理 | ・区分所有者からの管理費徴収、未納者への督促など ・「月次収支報告書」「年次収支報告書」などの作成 ・マンションの適切な維持・管理を行うための資金運用が目的 |
なお、上記の業務を必要に応じて管理会社へ委託するのが一般的です。
管理組合の運営
区分所有者の全員が管理組合に加入しますが、管理自体を全員で行うのは難しいでしょう。そこで、組合員のなかから理事や理事長、副理事長、監事などの役員を選出し、選ばれた役員が主体となって運営するのが一般的です。
選出方法は立候補や推薦、輪番制など管理組合によって異なりますが、一定の周期で役員になる機会が巡ってきます。マンションは区分所有者の全員で管理する意識が大切なので、役員になることを求められた際は、できるだけ断らずに引き受けたほうがよいでしょう。
管理組合との関わり方は全部で2つ
管理組合との関わり方は以下の2つです。
- 役員として関わるケース
- 一区分所有者として関わるケース
それぞれ解説します。
役員として関わるケース
理事会の役員になると、マンションの資産価値向上のために維持・管理についての方針を決めなければなりません。理事会の人数はマンションの規模により異なりますが、50戸未満では3〜4人程度が一般的です。
月に1〜2回や数ヶ月に1回程度の会議により活動方針を決めていきますが、組合員全体へ活動報告を行う事業報告や、次年度における活動の説明を行う「通常総会」などに参加することも業務の1つです。また、緊急を要する案件がある場合は「臨時総会」を開くこともあります。
一区分所有者として関わるケース
管理組合に加入しても、役員でなければ基本的に日常的な業務はありません。しかし、1年に1度開かれる「通常総会」において、理事会の提案に意思決定に賛否を表すかたちでマンション管理に関わります。
他にも、マンション全体の大掃除やアンケート回答などで参加することが考えられるでしょう。管理方針の決定は将来のマンション価値に影響する要素なので、役員でなくとも主体的に関わることが求められます。
マンションの管理組合が正しく機能することによるメリット
マンションの管理組合があることによるメリットは以下の3つです。
- 快適な住環境の維持が可能
- マンションの資産価値の維持・向上につながる
- 所有者同士のトラブルを防止できる
管理組合が正しく機能することによるメリットを認識することで、参加する意義を感じられるでしょう。
快適な住環境の維持が可能
管理組合が共有スペースの維持や修繕、生活ルールの策定や運用、施設や設備の運営管理などを適切に行うことで、快適な住環境の維持が実現できます。
例えば、エントランスや廊下、ジム、コミュニティルームなどが清潔に管理されていることで安心して利用できる他、日々の点検により不具合の発見にもつながり安全性の確保にも寄与します。
もし管理組合が存在しなければ、マンションの管理は個々の倫理観に任せることになり、快適な住環境の維持は難しいでしょう。このように管理組合によるルール策定や運営管理により、長期的に快適な暮らしが実現できます。
マンションの資産価値の維持・向上につながる
マンションにはさまざまな設備があり、適切に管理されていなければ経年劣化は早くなります。管理組合により定めた管理規定に従い建物・設備を管理することで、マンションの資産価値の維持・向上につながるでしょう。
また、管理組合による会計や資金運用が適切になされることで、予想外の修繕や将来の大規模修繕に対応でき、資産価値の維持・向上が可能となります。マンションの資産価値は建物や設備の状態だけでなく、修繕積立金などの財務状態も影響するため、管理組合の存在は欠かせないものといえるでしょう。
所有者同士のトラブルを防止できる
マンションに適した管理規約を策定することで、区分所有者間のトラブルを抑えられる他、トラブルが起きたときに解決するための指針としても活用できます。
例えば、施設の利用時間やペットの飼育など生活に関する規約や、修繕積立金の額などマンションの資産価値に影響する規約などです。このようなルールを管理組合が定め、運営するなかで議論・改善することで、所有者同士のトラブルを防止できます。
マンションにおけるルール・マナーを区分所有者が共通認識として持つことは重要であり、そのための起点として管理組合は重要な役割を果たしています。
管理組合の役員になった場合の役割とは
管理組合の役割は肩書きによって異なります。理事・理事長・副理事長・監事それぞれの具体的な業務内容は以下のとおりです。
理事の役割
マンションの管理事務全般を行うのが理事の業務です。例えば、管理規約の作成や共用部分の管理、会計業務などが挙げられます。その他に、住民からの苦情対応や要望のすり合わせ、理事会への出席なども理事の業務です。
理事長の役割
理事を代表し、意見の取りまとめや参加者の収集を行うのが理事長の役割です。理事長は区分所有法で定められた以下の義務を果たす必要があります。
- 通常総会や臨時総会の招集
- 業務内容を報告する「報告義務」
- 規約・議事録などの請求に対応する「閲覧義務」
- 管理者としての責務を果たす「善管注意義務」
副理事の役割
理事長を補佐したり、緊急時に職務を代行したりするのが副理事の役割です。自治体との窓口やマンションの防火管理者などを任されるケースが多くあります。
監事の役割
管理組合の健全性を監査することが監事の役割です。業務の執行状況や財務状況、理事会の内容などを監査し、総会で報告します。監事は理事と兼務できず、決議には参加できません。
このように役員それぞれの役割を果たすことで、適切なマンション管理を実現できます。
管理組合と管理会社の関係性
管理組合と管理会社は業務委託の関係です。管理会社への報酬を管理費から支払うことで、管理組合の業務の一部、もしくは全部を委託します。
マンションの維持・管理は原則として管理組合が行うものですが、生活や仕事をするうえで管理組合の業務に充てられる時間は限られています。また、会計業務や長期修繕計画など役員だけで対応するのが難しい場合もあるでしょう。このような対応が難しい業務を管理会社に委託するわけです。
しかし、管理会社に全てを任せてしまうとリスクを伴うケースがあります。例えば、「本来は支払う必要のない高額な修繕費用が発生する」などです。管理会社への委託はあくまでも管理のサポートであることを忘れずに、主体的なマンション管理を行うことが重要です。
管理組合で起きやすいトラブルの事例とは
管理組合の役員は、属性や管理への考え方など異なるためときにはトラブルに発展する場合もあります。特に起きやすいトラブルの事例は以下のとおりです。
- 理事間の仲が悪い
- 役割を全うしない理事がいる
それぞれ解説します。
理事間の仲が悪い
管理組合は管理方針や具体的な規約の策定について議論するため、ときには理事同士で口論になったり険悪な雰囲気になったりするケースがあります。考え方の違いにより管理方針で対立する場合や、規約の追加において利益相反が発生し決議できない場合などもあるでしょう。
このような事態になった場合、まずは理事長・副理事長が仲裁に入り、論点の整理や基準の明確化を行い冷静な議論を促します。
役割を全うしない理事がいる
管理組合は役員がそれぞれの役割を全うすることで機能しますが、専任されたにも関わらず適切に業務を行わない理事も存在します。例えば、「理事会に出席しない」「決められた業務を行わず放置する」などです。
そのような理事を放置していると、他の組合員にも悪影響が及ぶ可能性があるため適切な対処が求められます。しかし、理事解任の決議を取ることはほぼありません。解任したい理事がいたとしても、新たな役員を総会で再度選出することが実態です。
管理組合に関わる際の注意点を確認
管理組合に関わる際には、「助け合い・コミュニケーションを大切にする」「マンション管理に関心を持つ」という2点を押さえたうえで取り組むことが重要になります。管理組合の業務は自身の生活を豊かにするだけでなく、資産価値の維持・向上に直結する要素です。
そのため、理事同士でしっかりとコミュニケーションを取り、助け合いの気持ちを忘れないようにしましょう。また、マンション管理は多くの要素が関連するため難易度の高い部分があります。「よくわからないから」と議論に参加しない役員が増えると、管理組合としての役割を果たせません。自身の住環境に直接関わるという認識を持ち、マンション管理に関心を持つことが大切です。
管理組合に関わる際は事前に知識を付けておくことも大切ですが、主体的に取り組む姿勢も重要になります。
当社マンション管理士のひと言
組合員である区分所有者となった時点で管理組合の一員となります。組合員全員が積極的に管理組合運営に関わることが、マンション全体の未来をより良くするものといっても過言ではありません。逆に、管理組合運営に無関心な組合員ばかりのマンションは、適切な管理がされず、将来的に管理不全に陥ることも考えられます。マンション管理に関心を持つことが、大切な資産を守ることにつながります。
まとめ
管理組合はマンションの快適な住環境や資産価値の維持・向上に関わる重要な要素です。区分所有者の全員が加入・運営しなければなりません。適切なマンション管理を行うためには、それぞれの役員がマンション管理に関心を持ち主体的に議論することが重要です。
とはいえ、マンション管理の業務は多岐に渡るうえに専門知識が必要なケースもあります。管理組合で対応が難しい場合は、信頼できる管理会社に相談するとよいでしょう。
大和財託は、マンションの管理改善・修繕に関わるサービス「やまとのマンション管理」を運営しています。プロのコンサルタントがお悩み、要望をヒアリングしたうえで、マンションの状況に適したご提案をさせていただきますのでぜひご相談ください。
監修者
黒木 淳/大和財託株式会社 マンション管理士・マンション管理シニアコンサルタント
【保有資格】
管理業務主任者・マンション管理士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
【プロフィール】
損害保険調査業、鉄道系大手分譲マンション管理会社を経て、大和財託株式会社に入社。
所有者にとって最適な物件管理を提案することを重視し、「大切な資産」であるマンションを守るため、各オーナー様の物件管理をサポート。
【メッセージ】
分譲マンションの問題が多様化する昨今、当社は大規模修繕工事は当然、税務や管理運営まですべての分野に対応できることが強みです。
長年、マンション管理に携わってきた経験を活かし、管理組合様、理事長様のニーズに寄り添ったサービスを提供し、皆様の快適な暮らしをサポートいたします。
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