不動産投資を進めるにあたり、多くの方が必ず考えるのが「法人での物件購入」です。
個人名義で購入するよりも、資産管理法人を設立して法人名義で購入した方がいくつかのメリットを受けられるため、多くの方が検討されます。
ただし、そのメリットも受けられる方と受けられない方がいるため、ご自身の今の状況を理解した上で、検討しなければなりません。
「法人化」には大きく3つのメリットがあります。
①税金が抑えられる(個人に比べて税率が低い)
②経費の範囲が広がる
③融資面で有利(継続融資が受けやすい)
今回は、「法人で不動産投資をする3つのメリット」について詳しく解説します。
目次
法人で不動産投資をするメリット①税金が抑えられる
日本の税制は今後、個人は増税、法人は減税という方向に向かいます。
よって税金の面を考えれば、法人名義で物件を購入する方が有利となります。
ただし、全ての方が有利となるわけではございません。
課税所得1500万円(ご年収約1800~2000万円)の方のケースで個人名義と法人名義の実効税率の差を見てみましょう。
<課税所得1500万円のケース>
【個人の場合】
納税金額(所得税・住民税)
=1500万円×43%-153.6万円=491.4万円
【法人の場合】
納税金額(法人税等)
=400万円×25.89%+400万円×27.57%+700万円×33.80%
=103.56万円+110.28万円+236.6万円
=450.44万円
本業の年収が高い方が収益物件を個人名義で取得すると、物件から生み出されたキャッシュフローの大部分を納税しなければならず、税引後キャッシュフローを最大化することができません。
目安としては、給与所得と不動産取得から社会保険料などの控除を引いた課税所得が900万円を超える方、(額面年収で約1,200万円以上)は、融資面で問題なければ1棟目から法人での取得がよいでしょう。
上記、税制面のみでなく、「経費」や「融資」の面でも「法人化」は有利となります。
法人で不動産投資をするメリット②経費の範囲が広がる
法人にすることでどこまで経費としての範囲が広がるのか説明いたします。
不動産投資での経費の種類
まず、不動産投資での経費には一般的に以下のようなものが挙げられます。
- 減価償却費
- 修繕費
- 借入金利息
- 管理費
- 損害保険料
- 租税公課
- 交通費
- 消耗品費
- 接待交際費
- 新聞図書費
- 税理士への報酬等
ただし、これらは個人の場合と法人の場合とで経費として認められる範囲が大きく変わってきます。
個人と法人での経費の範囲
個人の場合は、収益を生む為に必要であった経費しか経費化できません。
それに対し、法人の場合は経費化できる範囲が広がるため、節税効果が大きくなります。
たとえば、個人であれば自家用と業務用を兼ねた自動車にかかった費用を全額経費として計上しようとする場合、指導されることがあります。
もし、「月に4回、車で物件の巡回を行っているとして、それが認められれば、「30日分(1か月分)のうち4日なので、車にかかる費用全体の2/15だけ経費で落としていいですよ」と指導されるのです。
通信費、水道光熱費においても同様で、全て経費とするのは難しくなります。
また、個人では打ち合わせという名目で友人との食事をした場合においても食事代を経費とは認められにくいものです。
これが法人であれば、「必ず」というわけではありませんが、ある程度業務上において、必要なものだと示すことができればほとんど否認されることはありません。
一部、経費化が制限されているものもありますが、個人より交際費など経費にできる範囲が広くなります。
法人名義の領収書がある以上、「業務関連外」であることを立証する方が難しいですので、よほど執拗な税務調査官でない限り問題なく経費として認められます。
また、法人であれば経費として範囲を広げられるものの一つに生命保険料があります。
個人であれば所得税4万円まで、住民税2.8万円までの控除が可能ですが、法人の場合は、生命保険の種類にもよりますが全損タイプの保険の場合は全額損金計上が可能です。
なお、生命保険料の額に上限はありません。
法人活用による経費の拡大は常識の範囲内であれば問題なし
経費として認められるかどうかについて明確な基準があるわけではありませんが、常識の範囲内であれば特に問題になることはありません。
「経費」の観点における個人と法人の違いを知って頂き、上手に「経費」を利用し、節税することで、
理想のキャッシュフローに近づけましょう。
法人で不動産投資をするメリット③融資面で有利(継続融資が受けやすい)
資産規模を拡大しようとすれば、どこかのタイミングで必ず「法人化」する必要があります。
なぜなら、個人であれば信用力が限られてしまい、いくら属性が良くても2~3億円が融資を引ける上限となってしまうからです。
その後に個人で融資を受けようとすると金融機関から「少し借りすぎでは?」と見られてしまい、追加融資を受けることが難しくなってしまいます。
そこで、法人を設立し「不動産賃貸業を事業として始めます」とすることで、金融機関からの信用力が増し、追加融資を受けやすくなります。
もちろん個人の金融資産や所有不動産の経営状況なども考慮され、総合的に判断されます。
そして、法人で不動産賃貸業の実績を着々と積むことで信用力が増していき、その後も追加融資を受けることができるので、資産規模をどんどん拡大していくことが可能になります。
今回ご紹介した「法人化」のメリットですが、まずご自身が達成したいキャッシュフローを逆算して、どれくらいの資産規模になるのかを算出します。
資産規模に応じて、必要な融資を受けるために「法人化」を選択する必要があります。
資産規模の算出で悩まれる方も多くおられますが、大和財託なら、プライベート相談にてお客様のご状況やご要望に最適な資産運用プランのご提案が可能です。
法人化を使った2つのスキーム
法人で不動産投資をする3つのメリットを紹介してきましたが、ここからは法人化を使った2つのスキームをご紹介します。
1つは自己資金を抑えられる有効なスキーム、もう1つはお気をつけ頂きたいグレーなスキームです。
法人活用による消費税還付スキーム
このスキームは物件の建物価格に含まれている消費税を、一定の条件を整えることで、支払った消費税の還付を受けられるものです。
還付が実現出来れば自己資金を増やすことができ、再投資の原資も早期に貯まりやすいため、投資規模の早期拡大が可能になります。
消費税還付スキームでは税制改正の可能性や消費税還付を受けたあとの判定基準によっては還付消費税を返納しなければならないなど一定のリスクを理解しておく必要があります。
さらに詳しく知りたい方は、無料で利用できるプライベート相談にてご相談ください。
「1法人・1物件・1金融機関」スキーム
資産管理法人を活用して融資を有利に進め、短期間に資産規模を拡大できる方法に「1法人・1物件・1金融機関」スキームというものがあります。
ただし、当社はこの方法には反対です。
このスキームは金融機関別に法人を複数作り、融資を受ける金融機関にはほかの法人の存在を伏せながら物件を買い進める方法となります。
物件を複数法人で保有する方法は相続税対策などでは一般的ですが、この手法は金融機関に他の法人の借入を伏せていることに問題があります。
不動産会社の中には、このようなグレーな手法を勧めてくる業者もあります。
その際はデメリットやリスクを十分に把握した上で、検討することをおすすめします。
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監修者
藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO
昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
資産運用領域で日本No.1の会社を目指し日々経営にあたっている。
マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
書籍「収益性と節税を最大化させる不動産投資の成功法則」や「収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則」を発売中。