不動産投資での節税はできる? 節税の仕組みや節税効果の大きさを徹底解説!

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「不動産投資は節税に効果的」ということがよく言われます。
これは本当なのでしょうか。
そして、それはどんな仕組みなのでしょうか。
ここでは、不動産投資による節税の基本スキームについて詳しく解説していきます。

節税とは

「節税」とは、税制上の仕組みを用いて税金を払いすぎないようにする行為を指し、タックスコントロール、タックスマネジメントなどとも呼ばれます。
給与所得者であれば、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)や扶養控除、生命保険料控除などが馴染みのある節税対策ではないでしょうか。
節税は、当然ですが「脱税」ではなく、定められたルールの枠内での実施する取り組みなので、後ろめたい気持ちを持つ必要は一切ありません。

不動産投資での節税とは

給与所得者は源泉徴収という仕組みのために、自営業者に比べるとできる節税対策には限度があります。
前章で住宅ローン控除、扶養控除、生命保険料控除の例を出しましたが、節税できる規模は小さく、それほど大きなインパクトにはならないのが現実です。

たとえば住宅ローン控除ですが、現行制度では「2023年までの入居」「認定住宅の取得」「5,000万円の借り入れ」という最大の条件でも年間35万円の節税にしかなりません。しかも、住宅ローン控除には所得制限があり、年収2,000万円超の人は減税の恩恵を受けることができません。

そこで、給与所得者でも大きな節税メリットを受けることができるスキームが、不動産投資による税金対策です。
収益物件を賢く運用することで、大きな節税が可能です。また、もちろん給与所得者ではない自営業者、企業経営者、個人事業主でも同様の節税メリットを受けられます。

その仕組みを次章以降、解説していきましょう。

不動産投資でできる節税を税金別にご紹介

それでは、不動産投資ではどのような節税ができるのでしょうか。
ここでは、不動産投資で取り組み可能な節税対策を、税金別に紹介します。
不動産投資に関わる税金では、不動産所得にかかる税金と資産にかかる税金に大別することができます。

所得に対するもの

まずは、所得にかかる税金について見ていきます。

所得税・住民税

不動産投資を始めて家賃収入を得るようになると、年に1回確定申告を行う必要があります。
確定申告とは、個人の1年間の所得を確定させて、税金を納めるために申告する手続きを指します。
不動産賃貸業を通じた家賃収入は不動産所得と分類されます。

不動産所得は、不動産賃貸業によって得た家賃収入から事業に要した経費を差し引いて計算することができます。この所得部分に所得税・住民税・復興特別所得税が課税されます。

不動産所得と給与所得、事業所得などは損益通算ができます。不動産所得が帳簿上赤字だとすると、給与所得・事業所得などの黒字分を引き下げることができ、所得税などの節税ができます。

たとえば年間1,000万円の給与所得がある人が、不動産投資を行い年間300万円の赤字だとすると、1,000万円から300万円を引いた700万円の所得になります。源泉徴収で1,000万円分の所得税などを納めていたら、確定申告により還付を受けられることになります。

これが不動産投資で節税を行う基本スキームです。

法人税

個人事業主として不動産投資を行うのではなく、法人を設立して不動産投資を行う場合、その所得には法人税がかかります。法人税の種類としては、法人税、法人住民税、法人事業税、特別法人事業税があります。

法人の場合は個人事業のように所得の区分がなく、法人の事業によって得た所得に法人税が課せられます。そのため、個人が不動産投資を行う際認められた経費よりも、幅広く経費計上が可能になります。

また所得税の場合、所得金額が大きくなると課税額も大きくなる累進課税制度なのに対し、法人税は基本的に税率が同一なので、不動産投資の事業規模が大きくなると節税効果が大きくなります。

資産に対するもの

つづいて、資産にかかる税金について見ていきます。ここでは、相続税と贈与税の節税を簡単に解説します。

相続税

相続税の仕組み

相続税を簡単にいうと、財産を相続した人にかかる税金です。
亡くなった親などから、お金や不動産などの財産を受け継いだ場合に、その受け取った財産から葬式費用と非課税のものとを差し引いた額に課税されます。

相続税には資産を再分配する機能があり、生まれた家庭の経済状況による格差を縮小させるため、累進課税制度を採用しています。大きな資産を持っていると、莫大な相続税が課税されることになるのですが、不動産を活用すると大きな節税効果を得られます。

相続税の計算にあたっては、まず課税される財産額から基礎控除額を差し引きます。基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人です。

相続した金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

出典:国税庁 相続税の税率

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm

不動産投資による相続税節税

なぜ不動産を活用すると相続税の節税になるのかというと、相続税評価額を低く抑えることができるからです。

現金や預貯金、株式などの金融資産は、相続税評価額が時価100%とされます。それに対して、土地・建物の不動産の場合は、相続税評価額が時価(実勢価格)ではないというところが最大のポイントです。

不動産のうち、土地部分は路線価方式(または倍率方式)で評価されます。物件により異なりますが、この評価方式により土地の相続税評価額は時価の80%程度に軽減されます。さらに、賃貸不動産用の貸家建付地だと借地権割合・借家権割合という考え方によってさらに軽減され、時価の60%程度まで低くなります。また、「小規模宅地等の特例」もあります。

不動産のうち、建物部分は固定資産税評価額で決められます。こちらは時価の70%程度になり、賃貸不動産は借家権割合によって50%程度まで抑えられます。

総合的に見て、現金などに比較すると不動産投資を行うことで、相続税評価額は50~70%程度圧縮することが可能になるのです。

贈与税

相続税を補完するものに贈与税があります。贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。法人から財産を受け取った場合は、一時所得として所得税がかかります。

贈与税には、「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの課税方法があります。暦年課税とは、1年間に受け取った財産の合計額から年間110万円の基礎控除額を差し引いた額に課税される贈与税の方式です。

相続時精算課税は、60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子・孫へ生前贈与する際、子・孫が選択することにより使える課税方式です。特別控除の限度額は2,500万円で、それを超えた分には一律20%の贈与税がかかります。贈与者が亡くなって相続が発生すると、相続税からこれまでに納めた相続時精算課税分の控除を受けることができます。

不動産投資を行って収益物件を所有するならば、それを生前贈与することにより、相続税をより節税することができます。物件を贈与することで、家賃収入も受贈者に移転することになるので、家賃収入分の現金に相続税が課税されず将来の相続税支払いの原資にすることができます。

また、価格が上昇することが見込まれる物件であるならば、相続時の評価よりも事前に贈与していたほうが評価額を下げることができます。

不動産投資の経費とは

さて、話を不動産所得にかかる所得税・住民税・復興特別所得税に戻します。不動産所得は売上から経費を差し引いて計算すると述べました。この経費が大きければ大きいほど、所得を圧縮することができます。

ただし、何でも経費にすればよいということではありません。不動産投資で認められている経費は以下のとおりです。

修繕費

収益物件の修繕費は経費として認められています。物件は経年変化により、修繕が必要とされてきます。例として、水回り設備のリフォーム、外壁の修繕・塗装などがあります。また、入居者が退去した後の原状回復工事費用のオーナー負担分も修繕費として計上可能です。

なお、物件の資産価値を向上させるようなリノベーション費用については、資本的支出として経費とは別に計上しなければいけませんので、注意しましょう。

管理会社への委託料

所有物件の管理を管理会社に委託するときの管理委託手数料も経費になります。オーナー自身が管理を行う自主管理では発生しない項目ですが、不動産投資における賃貸管理には専門的な知見も求められるので、多くの場合で管理会社への管理委託が行われます。

利息

不動産投資においては、物件を金融機関の融資を活用して取得するケースが多いのですが、月々支払うローンの利息部分は経費となります。なお、元本部分については金銭貸借なので、経費計上することはできません。

各種税金

物件を所有していると、毎年固定資産税・都市計画税を支払うことになりますが、これは経費として計上できます。また、物件購入時に一度だけ支払う不動産取得税についても経費計上することができます。

その他、登録免許税、印紙税、自動車税、重量税などの租税公課も不動産投資の事業に関与しているならば経費計上できます。

減価償却費

不動産投資における節税で核心となるのが、減価償却費です。減価償却費を経費とすることで、大きな節税メリットを得ることができるのです。この仕組みについては、次章で詳しく解説します。

火災保険・地震保険

物件を購入するときに加入するオーナー負担分の火災保険・地震保険も経費になります。この他、以下のような保険もあります。

  • 建物の老朽化や管理の不備で起こる事故に対応する「施設賠償責任保険」
  • 居室での孤独死など、死亡事故が発生したことによる空室期間の家賃収入が補償される「家主費用特約」 など

その他費用

以上の費用項目の他に、※表現要検討※ 購入時の仲介手数料は経費になりません。賃貸仲介会社に支払う仲介手数料は経費になります。入居者募集のための広告宣伝費、司法書士や税理士への報酬、通信費、旅費・交通費、図書・新聞費、交際費なども経費として認められています。

減価償却費で節税、実際はどういう意味?

不動産所得を帳簿上赤字とし、損益通算によって給与所得・事業所得の黒字を引き下げることが不動産投資による節税の基本スキームであると述べました。この場合、「帳簿上」というところがポイントであって、本当に赤字経営になってしまったら単純にお金を失うだけです。

本当は黒字経営(手元にお金を得ている状態)だけれども、帳簿上は赤字経営ということがどうしてできるのでしょうか。それを可能にするのが、「減価償却」という会計処理です。ここからは、減価償却による節税というスキームについて詳しく見ていきましょう。

減価償却費

そもそも減価償却費とは、一体どういうものなのでしょうか。

事業のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、通常時間の経過によってその価値が減っていきます。このような資産を「減価償却資産」と呼びます。

減価償却資産は取得した年に全額経費として計上せず、その資産の耐用年数に応じて費用計上していく会計処理をしていきます。このように減価償却資産の取得に要した金額を、一定の方法によって各年分の必要経費として配分していく会計上の処理が減価償却なのです。

数ある減価償却資産の中でも不動産の建物は額が大きく、節税効果も大きくなります。

減価償却費の計算方法には「定額法」と「定率法」の2種類がありますが、建物については定額法で計算することが決められています。また、建物附属設備・構造物についても、2016年4月1日以降に取得したものは定額法のみの適用となります。

定額法の計算式は次のようになります。

取得価額×償却率

この償却率は国税庁の「減価償却資産の償却率表」で定められていて、法定耐用年数に対応した償却率が計算に用いられます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_02.pdf

法定耐用年数

それでは、法定耐用年数とは何でしょうか。

減価償却資産には耐用年数(資産として使える年数)が法律で定められています。これを法定耐用年数といいますが、住宅については以下のように決められています。

鉄骨鉄筋・鉄筋コンクリート造47年
重量鉄骨造34年
軽量鉄骨造27年
木造22年

また、主な住宅設備は以下のように決められています。

電気設備(蓄電池電源設備)6年
電気設備(その他のもの)15年
給排水設備15年
衛生設備15年
ガス設備15年

出典:国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf

損益通算

先述したように、不動産所得は給与所得などの他の所得と合わせて課税される総合課税です。

不動産所得は、現実にはお金が出ていくことがない減価償却費を大きくとることによって、帳簿上赤字にすることが可能です。確定申告によって、不動産所得の赤字を給与所得や事業所得の黒字と相殺することができます。これが損益通算です。

知っておいてほしいこと

不動産投資による節税スキームについて、さらに深掘りしていくこととします。

課税所得別の所得税率・住民税率

個人の所得に課税される所得税は、累進課税制度が採用されています。累進課税制度を簡単に説明すれば、お金をたくさん稼ぐ人ほど税率が高くなる仕組みのことです。なぜそうするのかというと、納税の公平性を実現するためといえます。

所得税の税率は以下のようになります。

課税所得金額税率控除額
1,000円~1,949,000円5%
1,950,000円~3,299,000円10%97,500円
3,300,000円~6,949,000円20%427,500円
6,950,000円~8,999,000円23%636,000円
9,000,000円~17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円~39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円~45%4,796,000円

※ 2037年12月31日まで復興特別所得税がかかります。税率は所得税率に2.1%乗じたもの。

※ 住民税(所得割)は、一律10%課税。

出典:国税庁 所得税の税率

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

一方で、高額納税者に「社会に貢献した結果として収入が増えたのに、こんなに税金を取られるのは逆に不公平だ」という気持ちが芽生えるのも自然なことといえます。そうであるからこそ、「やれる税金対策はやっておくべき」ということになります。

譲渡税

不動産を売却したときの売却益を譲渡所得といいますが、この所得にも所得税・住民税・復興特別所得税が課税されます。減価償却費を活用した節税について述べてきましたが、不動産投資の「出口」である物件売却時の譲渡所得税支払い時に注意が必要になります。

その点を解説するために、譲渡所得税の算出方法について簡単に見ていきます。譲渡所得税を算出するためには、まず譲渡所得を計算します。

譲渡所得=不動産の売却価格-(取得費+譲渡費用)

問題は、この取得費の計算方法です。取得費は物件の購入価格と取得に要した費用を合計した金額なのですが、確定申告で減価償却費を計上している場合はここから減価償却費を差し引くことになっています。

減価償却を多用していると取得費が小さくなり、反対に譲渡所得が大きくなります。そうすると、結果として譲渡所得税が重くなることになります。原価償却した分がまるまる譲渡所得としてみなされ、課税されることになるため、保有期間中に節税できたとしても売却時に節税金額分を税金として納税することになります。これが「税の繰り延べ」と呼ばれる所以です。この点は留意しておきましょう。

賃貸不動産を経営中のトータルの所得税額よりも譲渡所得税額のほうが低くなるケースもありますので、その際は大きな節税メリットが生まれます。

なお、譲渡所得税は「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」の2つに区分されます。長期譲渡所得とは、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものをいいます。短期譲渡所得とは、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のものです。

長期譲渡所得の税率:所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%=20.315%

短期情緒所得の税率:所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%=39.63%

所有期間についても十分考慮する必要があります。一般的には、減価償却を活用した節税を行っているなら、長期譲渡所得になるようにします。

節税目的における物件の選び方

家賃収入などの不動産投資による営業利益をいったん度外視し、節税を主眼として収益物件を選ぶとなると、どのような選び方になるでしょうか。

減価償却を最大限に活用して節税を行うならば、法定耐用年数の過ぎた築古物件を購入することが一番合理的ということになります。具体的には、法定耐用年数超えとなる築22年超えの木造、または、築27年超えの軽量鉄骨造となります。

法定耐用年数を超えている中古物件の耐用年数は、法定耐用年数×0.2で求めることができます。木造物件は22×0.2=4.4で4年となります。物件の建物部分の購入価格が4,000万円ならば、年間1,000万円の減価償却がとれることになる計算です。

さらに、土地は減価償却できないので、購入時に建物割合を高い状態にすることが大切です。

実はこうした減価償却による節税で最適であったのが、アメリカの木造中古物件でした。アメリカの築古住宅は流通量も多く、「ヴィンテージ・ハウス」として人気があるので、売却時にも価値が下がりません。一時期、高額所得者の間でこの節税スキームはブームになったのですが、2020年の税制改正によって個人では減価償却ができない形となりました。

節税対策のシミュレーション

給与所得の税額

具体的に不動産投資による節税対策のシミュレーションを行ってみましょう。年収2,000万円の給与所得者を例に取ります。

年収2,000万円の給与所得者というと、日本では一握りしかいないエリートビジネスパーソンです。国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、年収2,000万円以上の人は給与所得者全体の0.5%しかいません(※)。それだけ、所得税額も大きいものになります。

※ 出典:国税庁 民間給与実態統計調査https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2020/pdf/002.pdf

給与収入2,000万円にまるまる課税されるわけではありません。まず給与収入から給与所得控除を差し引きます。給与収入2,000万円ですと、給与所得控除は上限の195万円になります。

さらにそこから基礎控除の48万円、社会保険料控除168万円(概算)を差し引くと、課税所得は1589万円となります。

先に挙げた所得税額の表に照らし合わせると、所得税率33%、控除153万6,000円となるので、計算式は以下になります。

1589万円×33%-153万6,000円=370万7,700円

一方住民税は一律10%ですので、以下の式になります。

1589万円×10%=158万9,000円

復興特別所得税はこの場合0.693%ですので、式は以下になります。(1,00円未満は切り捨て)

1589万円×0.693%=11万100円

合計します。

370万7,700円+158万9,000円+11万100円=530万7,800円

税額は530万7,800円となりました。

不動産投資による節税

不動産投資による節税を考えてみます。計算を簡単にするために、細かいところは省略しています。

築27年の軽量鉄骨造アパートを物件価格9,500万円、購入時諸費用で500万円(土地と建物に分けて計上)で購入。諸費用込みで土地3,000万円、建物7,000万円となります。

融資条件としては、自己資金1,000万円、借入金9,000万円、融資期間25年(元利均等返済)、金利2.0%、1年目の支払利息177万円とします。

年間満室想定家賃収入は860万円、運営費用・空室損・滞納損は年間210万円。

物件は軽量鉄骨造の法定耐用年数を超えている物件ですので、5年で償却ができます。7,000万円÷5で年間の減価償却費を1,400万円計上できます。

1年目の不動産所得は以下のように計算できます。

860万円-210万円-177万円-1,400万円=▲927万円

927万円の赤字です。これを給与所得と損益通算します。すると以下のようになります。

1589万円-927万円=662万円

課税所得は662万円となりました。所得税額の表に照らし合わせると、所得税率20%、42万7,500円となるので、計算式は以下になります。

662万円×20%-42万7,500円=89万6,500円

住民税は以下になります。

662万円×10%=66万2,000円

復興特別所得税は以下になります。

662万円×0.42%=2万7,800円(100円未満切り捨て)

合計すると、次のようになります。

89万6,500円+66万2,000円+2万7,800円=158万6,300円

実に税額は158万6,300円まで下がり、確定申告により、372万1,500円もの節税となりました。

5年間の減価償却が終わり、長期譲渡所得の税率の要件を満たした時期に物件を売却するとします。8,500万円で売却できたとすると、譲渡所得は以下のようになります。(譲渡費用を255万円とします。)

8,500万円-(10,000万円-6,999万9,999円+255万円)=5,244万9,000円(1,000円未満切り捨て)

長期譲渡所得の税率20.315%をかけて譲渡所得税を計算します。

5,244万9,000円×20.315%=1,04865万59,000円(100円未満切り捨て)

また、譲渡益から譲渡費用と借入残高を清算し、譲渡所得税を算出します。

・売却時税引き前キャッシュフロー

8500万円-譲渡費用255万円-借入残高7540万6497円=704万3,503円

・売却時税引き後キャッシュフロー

704万3,503円-譲渡所得税1065万5000円=-361万1497円

この部分と5年間のインカムゲインをすべて含めると、自己資金1,000万円の投下に対し、最終的にキャッシュフローはどれだけ得られるのでしょうか。

5年間の税金の還付金も含めた保有中の税引後キャッシュフローの累計は3,229万3513円です。売却時の税引き後キャッシュフローは-361万1497円を合算すると

最終的な手残りは2,868万2,016円となります。

節税目的で不動産投資を行うべき人

節税を目的とした不動産投資は、不動産所得を帳簿上赤字にし、給与所得・事業所得などと損益通算することによって課税所得を圧縮するスキームなので、給与所得・事業所得などが高額な人こそ取り組むべきということになります。

年収が1,500万円以上の人

それでは、どれくらいの所得の人が不動産投資による節税に向いているかというと、課税所得が900万円を超える人になります。

なぜ課税所得900万円が目安になるかというと、900万円のラインを超えた部分は所得税率が33%となり、住民税10%、復興特別所得税0.693%と合わせると43.693%となるからです。

収益物件を売却したとき支払う譲渡所得税の税率(長期譲渡所得の場合)が20.315%ですので、この数字との差が節税できる計算となります。

但し、課税所得900万円というのは目安です。実際の減価償却による圧縮を考慮すると、課税所得1,100万円、年収1,500万円を超えていた場合、節税メリットを大きく享受できるため、節税目的で不動産投資を行うのが望ましいと言えるでしょう。

年収1,500万円を超えない人

反対に課税所得が1,100万円以下の人は、不動産投資による節税対策を行ったとしても、節税メリットが小さく不動産投資を行うリスクと釣り合いません。

節税目的ではなく収益性目的にしよう

課税所得が1,100万円以下の人は、節税目的の不動産投資ではなく、適切な収益を出せる正統派の不動産投資に務めるようにしましょう。空室リスク、災害リスク、修繕リスクなどを冷静に計算し、十分なキャッシュフローを生み出す物件選びと融資戦略を立てる必要があります。

確定申告は青色申告にしよう

課税所得が比較的小さくても、不動産投資を行うことによる節税メリットがないわけではありません。不動産投資を行うことによって毎年の確定申告が義務付けられますが、この確定申告を青色申告にすることによって、青色申告特別控除を得ることができます。

青色申告特別控除とは、確定申告を青色申告にすることで最大65万円所得から控除できる制度のことです。65万円の特別控除を受けるには以下の要件が必要になります。

・複式簿記での記帳、青色申告決算書の記載
・不動産所得では事業規模が10室以上または5棟以上
・e-Tax(電子申告)での確定申告書・青色申告決算書の提出
・電子帳簿保存の承認申請書を税務署に提出し、電子帳簿保存法に対応する会計ソフトで記帳

65万円の特別控除は魅力的ですので、必ず行うようにしたいところですが、事業所得が赤字の場合には使用できませんので注意しましょう。

まとめ

以上、減価償却を活用した不動産投資による節税の仕組みについて見てきました。高額所得になればなるほど、不動産投資による節税のインパクトの大きくなることがわかったと思います。

その一方、出口戦略については注意が必要なこともおわかりいただけたと思います。さらに課税所得900万円以下であれば、節税を主目的にするのではなく、賃貸経営による収益の獲得を目指すべきであることも明らかにしてきました。

目的を間違えると、たどり着くゴールも間違えてしまいます。不動産投資は融資の力を使って行うことがほとんどなので、その分リスクも大きくなります。目的を見失わず、不動産投資成功の道を確実に歩むためにも、信頼できる不動産投資会社を味方にすることがとても大事なのです。

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監修者

藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO

昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
資産運用領域で日本No.1の会社を目指し日々経営にあたっている。

マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
書籍「収益性と節税を最大化させる不動産投資の成功法則」や「収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則」を発売中。

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