本業以外での収入を確保することで家計の負担を軽くし、同時に資産形成をしたいと考えている方も多いのではないでしょうか。特に不動産投資は日頃本業が忙しい方でも始めやすく、家賃収入という安定した利益を得られるというイメージがあるかもしれません。
しかし不動産投資はやれば必ず得をするというわけではなく、メリットやデメリットを理解したうえで取り組まなければ、思ったような収入に繋がらない可能性もあります。
本記事では家賃収入を得られる不動産投資の種類と、不動産投資を行うことのメリット・デメリットについて解説します。
目次
家賃収入とは
不動産投資で得られる利益として「家賃収入」という言葉を目にしたことがある方も多いと思いますが、不動産投資では家賃収入以外にも利益に含まれるものがあります。まずは家賃収入が不動産投資においてどのような立ち位置にあるのか、家賃収入のほかに得られる可能性のある収入にはどのようなものがあるかを知っておきましょう。
家賃収入は賃貸経営による売上の大部分
「家賃収入」はその名のとおり、物件を貸し出すことで収入として受け取る家賃のことを指し、賃貸経営で得られる売り上げ(不動産収入)の大部分を占めるものです。具体的な仕組みとしては、オフィスビルやアパート・マンションといった収益物件を購入して第三者に貸し出し、その対価として家賃を得ます。
賃貸経営による収入は家賃のほか、下記の項目も含まれます。
- 礼金
- 更新料
- 管理費・共益費
- その他の収入(駐車場収入・自動販売機収入・携帯電話の基地局設置料など)
賃借人と契約を締結する際に受けとる礼金や、契約更新の際に受け取る更新料だけでなく、毎月家賃とは別に支払われる管理費・共益費、入居者や外部に貸し出す駐車場の代金や、敷地内に自動販売機や携帯電話の基地局を設置することにより得られる収入も不動産収入として扱われます。
しかし、やはり賃借人から支払われる家賃が不動産収入の大部分を占めることから、家賃収入は賃貸経営の要であると言えます。
不動産所得は売上から経費を引いたもの
家賃収入について見ていくと、「不動産所得」という言葉の存在を知ることになります。「不動産収入」と「不動産所得」は一見すると同じものに見えるかもしれませんが、まったく別物であるということを知っておかなければなりません。
「不動産収入」を簡単に言うと、賃貸経営によって得られる「売上」のことです。先述した家賃・管理費や共益費・礼金・更新料・駐車場収入など、賃借人から支払われるお金が不動産収入に該当します。
それに対して「不動産所得」は、賃貸経営による売上から経費を差し引いたもので、所得税・住民税を算出するためのものです。詳しくは後述しますが、賃貸経営を行う中では下記に挙げる経費が発生します。
- 管理会社への管理委託手数料
- アパートローンの利息部分
- 保険料
- 仲介手数料
- 建物の修繕費 など
不動産を所有することにより課税される固定資産税や都市計画税などの税金も、賃貸経営における経費として計上することが可能です。
さらに、実際に手元に残るお金(キャッシュフロー)はこれとは別で、不動産収入から各種経費と利息・元本を含めたローン返済額を差し引いたものが税引き前キャッシュフローで、納税後のキャッシュフローが税引き後キャッシュフローとなります。
不動産投資における収入の内訳
不動産投資における収入は家賃収入がメインですが、家賃以外にも収入がありますのでそれを見ていくこととします。
本章では一棟アパートあるいは一棟マンションを経営する場合を想定し、どのような形で収入を得られるかを解説します。
家賃
不動産投資で得られる収入の大部分を占めるのが、入居者から毎月支払われる家賃です。
家賃は物件ごとあるいは部屋ごとに設定された金額を、ほとんどの場合前払いで支払期日までに振り込んでもらうことになります。そのため支払期日を過ぎたら、入居者から確実に当月分の家賃が振り込まれているかを確認する必要があります。なお物件の管理や入居者対応を不動産管理会社に委託する場合は、家賃の集金を管理会社に任せたり、口座振替による引落を利用したりすることで、毎月の家賃集金の手間を減らすことも可能です。
ただし賃貸物件は1年を通して常に満室ということはなく、入居者のいない部屋に関しては空室期間分の家賃を得ることができません。つまりいかに空室を減らすか、いかに早く次の入居者を見つけるかが賃貸経営において重要ということです。
礼金
賃貸借契約を締結する際に、借主から初期費用として受け取る礼金も不動産収入に含まれます。
礼金は入居者からオーナーに対して、謝礼金として支払うものです。同じ初期費用として支払う「敷金」は入居者が退去する際に返還されますが、礼金は返還せず、そのままオーナーの収入になる仕組みです。
礼金の金額は家賃の1~2ヶ月分が相場とされています。しかし礼金をもらう慣習がない地域も存在するほか、礼金を0円とすることで空室対策を行うケースも増えています。礼金があるだけで数万円~数十万円の収入になるため、物件のオーナーとしてはぜひとも受け取りたいところではありますが、周辺に類似した条件の物件が礼金なしで貸し出されていた場合、早期契約に繋げることが難しいというのも事実です。
所有する物件の空室状況や、周辺の物件の空き状況・募集状況などを踏まえて設定することが重要です。
更新料
更新料は賃貸借契約を更新する際に、入居者からオーナーに対して支払う費用です。更新料も入居者に対して返還しないものであり、そのままオーナーの収入になります。
一般的な賃貸借契約では更新時期を2年に設定していることが多く、更新を迎えるごとに更新料が発生することがあります。更新料については地域による商習慣の違いがあり、関東では家賃の0.5~2ヶ月程度が相場ですが、京都を除く関西では更新料を徴収していません。
更新料の習慣のある地域でも、最近では礼金と同様支払いに対して抵抗感を抱く入居者も少なくなく、退去を回避するために更新料を徴収しないケースもあります。更新料の設定は、その土地の商習慣や賃貸需要などを踏まえて検討する必要があります。
管理費・共益費
管理費・共益費は、収益不動産の共用部分の維持管理のために使われる費用のことで、毎月の家賃と合わせて入居者から徴収するのが一般的です。
エントランスや廊下・階段などの定期清掃やエレベーターの管理、共用部の電気・水道代に充てられることがほとんどですが、管理費・共益費の金額や使い道は法律的な定めがなく、いくら徴収するのか・どのように使うかはオーナーの裁量次第とされています。
ですので、管理費・共益費は実質的に家賃の一部ということができます。家賃と管理費・共益費を分けることで家賃を低く表示することができ、不動産ポータルサイトで家賃を基準に部屋探しをしている人向けに訴求することができる効果があります
その他の収入
賃貸経営にあたっては、上記の他にも追加で収入を得られる場合もあります。
例えば駐車場がある物件の場合は、入居者に駐車場を貸し出すことで駐車場賃料を徴収することが可能です。また敷地内に自動販売機や携帯電話の基地局を設置することでも収入を伸ばすことができます。
不動産収入の大部分は家賃ですが、その他の収入も視野に入れるか入れないかでは、長い目で見たときの利益が大きく変わってくるという点を知っておきましょう。
不動産投資における経費の内訳
次に、不動産投資を行う際に発生する経費の内訳を見ていきましょう。賃貸経営にかかった経費は収入から差し引くことができますが、会計上経費で認められるものと認められないものがあるという点に注意が必要です。
本章でも一棟アパート・一棟マンションを経営する場合を例に、経費として認められる支出について解説します。
管理会社への管理委託手数料
建物の管理や入居者募集、家賃の集金といった賃貸経営に関する業務を管理会社に委託する場合、管理委託手数料の支払いが発生します。
管理委託手数料の金額は家賃収入の3~5%が相場とされていますが、空室状況に関わらず定額としている管理会社もあります。さらに委託する業務も、管理業務のすべてを依頼せず、入居者募集だけ・集金代行だけなど一部のみ委託することも可能です。また、建物管理費(日常清掃、定期清掃、受水槽清掃、エレベーター点検費用など)については別料金になっているケースが一般的です。
管理委託手数料は毎月支払いが発生し、入居者の満足度にもかかわってくる部分のため、自身の不動産投資における収支とも照らし合わせながら慎重に検討することが重要です。
アパートローンの利息部分
物件を取得する際にアパートローン(不動産投資ローン)を利用して資金の借り入れをおこなった場合、毎月の返済額にかかる利息部分は経費として計上できます。さらに、融資を受ける際にかかる手数料も経費として計上できるという点も重要です。事務手数料の金額は金融機関によっても異なりますが、借入金額によっては10万円以上必要なケースもあるため、経費として計上するのを忘れないようにしましょう。
またアパートローンを利用する際に、建物の取得費用のほか、設計費用や古い建物を取り壊す際にかかった解体費用もローンに含めるケースもあるため、経費計上できる範囲はあらかじめ確認しておくと安心です。
なおアパートローンの元本部分は経費とは認められませんが、のちに解説する「減価償却」により経費計上できる部分もあります。
保険料
万が一の火災や地震に備えるために加入する損害保険の保険料も、賃貸経営の経費として計上することが可能です。
損害保険の掛け金は契約内容によって変動します。1年ごとの保険更新の場合は1年ごとに経費計上すれば済みますが、数年単位での保険契約の場合は、1年分の保険料を算出したうえで経費計上する必要があるという点を押さえておきましょう。
また入居者が孤独死した場合にオーナーにかかる経済的負担を軽くするため、オーナーの費用負担で「孤独死保険」に加入する場合は、孤独死保険の保険料も経費計上が可能です。
仲介手数料
不動産会社の仲介により入居者が決まった際に、不動産会社に対して支払う仲介手数料は経費として計上できます。仲介手数料は新しい入居者との契約が決まるたびに発生しますが、オーナーが自ら見つけてきた入居者と直接契約を締結する場合は、間に不動産会社が入らないため仲介手数料は不要になります。
また不動産会社に依頼して入居者募集の広告をうち入居者が決まった場合、不動産会社に対して広告宣伝費を支払う場合もあります。
修繕費
建物・設備の修繕費用のほか、入居者の退去時に行う原状回復工事にかかる費用のオーナー負担分も、「修繕費」という名目で経費計上が可能です。
ただし、一見修繕費として計上できる工事費用であっても、経費計上できないものも存在します。物件の工事費用は「修繕費」と「資本的支出」に分けられ、「資本的支出」に関しては単年での経費計上ができません。
「資本的支出」の具体例としては、物件価値の向上を目的としたリノベーション工事が該当します。リノベーション工事によって完成した部分は、複数年にわたって減価償却を行うものです。それに対して「修繕費」は、原状回復工事や修繕によって物件の価値を元に戻すためにかかった費用にあたり、工事をした年に一括で経費計上をおこないます。
多くの物件オーナーは、工事費用を経費計上することで納税額を減らしたいと考えますが、工事内容によっては減価償却の対象となるケースもあるため、慎重に判断する必要があるという点は押さえておきましょう。
司法書士や税理士への報酬
不動産を購入した際に行う所有権移転登記などの登記手続きを、司法書士に依頼する場合は司法書士への報酬、毎年の確定申告を税理士に依頼する場合には税理士報酬が発生しますが、賃貸経営においては司法書士や税理士に対する報酬も経費として認められます。
また万が一家賃滞納などにより訴訟が必要になった場合は、弁護士への訴訟依頼にかかる費用も経費計上が可能です。
通信費
賃貸経営に欠かせない通信費も経費計上が可能です。具体的には不動産会社や管理会社との連絡手段として使用する、スマートフォンやパソコンの購入代金や携帯料金・プロバイダーに支払う料金だけでなく、不動産投資についての勉強や情報収取のために活用するソフト・アプリの購入代金なども該当します。
ただし上記をプライベートでも使用している場合は、不動産投資に使用した部分のみを計算・計上する「家事按分」を行う必要があるという点には注意が必要です。
旅費・交通費
投資用不動産を購入する際には、下記のような場面で移動費用や宿泊代が発生します。
- 内覧や現地調査のための物件訪問
- 契約条件の交渉や契約締結のための不動産会社訪問
- 融資を受けるための金融機関訪問
さらに投資を開始した後も、物件の状況確認のために現地に足を運ぶ必要があり、それらにかかる費用が旅費・交通費に該当します。
具体的に計上できる項目は下記のとおりです。
- 公共交通機関の運賃
- 高速道路料金
- ガソリン代
- 駐車場代
- 宿泊費
領収書の発行がない費用に関しては、あとで何に使用した経費かがわかりやすいように「旅費精算書」を作成しておくと便利です。
図書・新聞費
不動産投資は常に新しい情報を仕入れ、勉強を積み重ねることが重要です。情報収集や勉強のために使用した書籍・新聞代や、セミナーへの参加代、コンサルティング費用は経費として計上可能です。
ただし経費として認められるのは、あくまでも「不動産投資に必要なもの」に限られます。また不動産に関連していても、資格取得費用は経費として認められないという点には注意が必要です。
交際費
賃貸経営を継続的に行うためには、不動産会社や管理会社との打ち合わせも重要になります。打ち合わせの際に飲食店を利用した場合の飲食代は、賃貸経営の経費として計上可能です。
ただし飲食店を1人で利用した場合や、家族や恋人といった不動産投資と関係のない人と食事をした場合の費用は、交際費として認められないため注意しましょう。
租税公課
不動産を購入した際に発生する税金や、不動産を所有していることで課税される税金も、経費として計上することが可能です。具体的に経費として認められる税金には、下記のようなものが挙げられます。
- 固定資産税
- 都市計画税
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 印紙税
- 自動車税、重量税(不動産投資に使用している部分に限る)
- 利子税
- 法人事業税
一方で、所得税・住民税・法人税は経費計上ができません。どの税金が経費扱いになるかを把握しておき、不動産投資によりかかった税金とプライベートでかかった税金を正しくわけておくようにしましょう。
減価償却費
投資用不動産の購入費用のうち、建物部分の減価償却費を毎年経費として計上することが可能です。
1年分として経費計上できる減価償却費は、建物の購入費用を法定耐用年数で割った金額です。法定耐用年数とは、建物が新築されてから資産価値がゼロになるまでの年数のことで、建物の構造や用途ごとに国によって定められています。例えば5,000万円の建物で、減価償却期間が20年の場合、1年で計上する減価償却費は250万円ということです。なお土地の購入は減価償却ができません。
減価償却費は賃貸経営にかかる経費の大部分を占めますが、建物の構造や用途によって毎年計上できる金額が大きく異なるため、必ず法定耐用年数を確認してから不動産投資を行うようにしましょう。
物件所有時にかかる税金
不動産投資を行う場合、先に解説した租税公課以外にも税金が発生します。賃貸経営では大きな金額が動くことから、課せられる税金も高額になります。そのためどのような税金がかかり、いくらくらい納める必要があるかを事前に知っておくことが重要です。
所得税
賃貸経営により家賃収入などの利益が発生した場合、利益が所得としてみなされ「所得税」が課せられます。賃貸経営による所得税は、家賃を中心とした収入から必要経費を差し引いた部分を「不動産所得」とし、所定の税率をかけて計算します。具体的な計算式は下記のとおりです。
不動産所得=収入-必要経費 課税所得=不動産所得+その他の所得(給与所得・事業所得など)-所得控除 所得税額=課税所得×税率-税額控除 |
住民票の税率は下記のとおり定められています。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁 No.2260所得税の税率https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
所得税は毎年確定申告を行う必要があるため、忘れずに手続きを行うようにしましょう。
住民税
不動産所得に対しては所得税のほかに「住民税」も課税され、「所得割」と「均等割」という2つの区分を合算した金額を納めます。「所得割」は前年の所得金額に対して課せられる税額、「均等割」は所得金額に関係なく均等に課せられる税額のことを言います。均等割りの金額は自治体によって異なるため、予め確認しておくと安心です。
また住民税の税率は、所得金額に応じた税率の変動がある所得税率とは異なり、所得とは無関係に一律で10%です。
住民税の納付のためには、所得税と同様で確定申告を行う必要があります。
復興特別所得税
不動産所得に対しては、所得税と住民税に加えて「復興特別所得税」という税金もかかります。
特別復興所得税とは、東日本大震災からの復興のための財源確保を目的として徴収されるもので、2037年12月31日までの間に収入が発生した場合に課税されます。
税額は基準所得税額に対して一律2.1%で、所得税や住民税と合わせて確定申告を行うことで納付します。個人の基準所得税額は下記の表のとおりです。
区分 | 基準所得税額 | |
居住者 | 非永住者以外の居住者 | 全ての所得に対する所得税額 |
非永住者 | 国内源泉所得及び国外源泉所得のうち国内払のもの又は国内に送金されたものにたいする所得税額 | |
非居住者 | 国内源泉所得に対する所得税額 |
出典:国税庁 個人の方に係る復興特別所得税のあらまし https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/fukko_tokubetsu/index.htm
個人事業税
個人事業税とは、個人事業主が得た収入に対して課される税金のことで、課税対象となる事業の中に「不動産貸付業」や「駐車場業」が含まれています。
税率は一律5%ですが、個人事業税が課せられるのは「事業とみなされる規模で賃貸経営を行う場合」に限り、数室を運用するような諸規模な不動産投資では課税されません。「事業とみなされる規模」とは具体的に、マンション経営の場合で10室以上を運用している場合が該当します。
さらに個人事業税には最大で年間290万円の控除があり、下記の式で税額を計算します。
個人事業税額=(課税所得金額-290万円)×5% |
なお290万円が控除されるのは、1年間をとおして不動産投資おこなっていた場合です。運用を始めた最初の年などは、事業として運用していた期間によって控除額が月割りになります。
消費税
不動産投資における家賃収入には、消費税がかかるものとかからないものがあります。
アパートやマンションといったいわゆる「住宅用」の賃貸物件であれば「非課税取引」、事務所や店舗などの「事業用」賃貸物件であれば「課税取引」です。誤解されがちですが、貸主や借主が個人か法人かは関係なく、利用目的が「住宅用」か「事業用」によって変わります。
不動産投資において消費税の納税義務が発生するのは、基準期間(個人の場合は原則として前々年)の課税売上高が1,000万円を超えていた場合です。課税売上高とは課税取引(ここでは家賃や礼金に消費税がかかる事業用物件の賃借)による売上高のことを指します。
一方で「住宅用」物件の賃借の場合、家賃などに消費税がかからないため、運用によって得られた売り上げは課税売上高に算入されません。つまり不動産投資による年間の売上高が1,000万円を超えていても、所有者には消費税の納税義務は発生しません。
なお、収益物件が「住宅用」とみなされるためには2つの条件を満たしておく必要があります。1つは契約書に「住宅用」であることが明記されていること、もう1つは賃貸借期間が1ヶ月以上であることです。いずれか一方でも条件を満たしていない場合は「課税取引」とみなされ、売上高によっては消費税を納税しなければならなくなる点を知っておきましょう。
なお、2023年10月から消費税に関して「インボイス制度」が開始されます。インボイスとは「適格請求書」のことで、売主が買主に発行し双方が適格請求書を保存することで、消費税の仕入税額控除が適用される仕組みです。
保有する収益物件が「住宅用」のみであれば「非課税取引」なので影響はありませんが、駐車場売上や自動販売機売上などの「課税取引」がある場合は影響がでてくる可能性があるので、対応を検討する必要があります。
家賃収入を得られる不動産投資の種類
ひとことに不動産投資と言っても、運用する物件の種類や規模によってさまざまな投資方法があります。各収益物件が持つメリットとデメリットを正しく理解し、自身に合った投資用物件を見つけることが重要です。
居住用賃貸不動産と事業用賃貸不動産
まず収益不動産は「居住用賃貸不動産」と「事業用賃貸不動産」の2つに分けられ、異なる性質を持つということを知っておく必要があります。
事業用賃貸不動産とは具体的には、オフィスビル・店舗・商業施設・工場用地などが挙げられます。事業用賃貸不動産を活用した不動産投資は収益性の高さがメリットですが、一方で物件規模が大きくローン審査が通りにくいという側面から、個人で行う不動産投資としては手を出しにくい部分が否定できません。
上記の理由から、個人の方が不動産投資を行う場合は居住用賃貸不動産を選択するケースが多く見られます。居住用不動産は衣食住に根付いていることから、需要が著しく低下するリスクが低いことが特徴です。不動産投資では「いかに空室を作らないか」が重要なため、事業用と比較して空室リスクの低い居住用賃貸不動産は、個人が行う不動産投資において取り組みやすい収益物件だと言えます。
そこで以下ではさらに居住用賃貸不動産にはどのような種類があり、どのようなメリット・デメリットがあるかについて解説していきます。
一棟アパート投資
一棟アパート投資とは、賃貸アパートを一棟まとめて購入・建築し、すべての部屋を賃貸に出す投資方法です。「一棟もの」と呼ばれる最もポピュラーな手法で、投資対象は新築アパート・中古アパートの両方があります。
収益性の高い物件を取得できれば、安定的に家賃収入を得られる点が一棟アパート投資の大きなメリットです。その反面、空室が続くことによる損失(空室リスク)やまとまった修繕費用が必要になる可能性(修繕リスク)、入居者から家賃が支払われない可能性(家賃滞納リスク)もあるということを念頭においておかなければなりません。
つまり、一棟アパート投資で損をせず安定的な収益を得ることを目指すのであれば、リスクコントロールを適切に行うことが重要ということです。
一棟マンション投資
「一棟もの」では一棟アパートだけでなく一棟マンションを活用する場合もあります。一棟アパート投資と同様、新築マンションを建築したり中古マンションを一棟まるごと購入したりして、全室を賃貸に出す方法です。
一棟マンションの物件価格は一棟アパートよりも大きくなるため、不動産投資の中でも特に投資金額が大きくなります。投資金額が大きいということはその分資産規模も大きくなるため、キャッシュフローが潤沢になるという点は注目すべき魅力です。
ただし投資総額が大きいぶん、不動産投資ローンの審査に通りにくいという点には注意が必要です。通常の住宅ローンよりも審査される個人属性の基準が厳しく、家族構成や持ち家の有無・勤務先の規模や職種・世帯年収・預貯金や株式の保有状況・借入の有無などを細かく審査されます。
しかしマンションにも大小さまざまな規模の物件があるため、マンションの規模によっては取り組みやすい投資方法であるとも言えます。
区分マンション投資
区分マンション投資とは、購入したマンションの一室(区分マンション)を賃貸に出すことで家賃収入を得るという投資方法です。単身者向けのワンルームマンションが多いため、「ワンルームマンション投資」とも呼ばれ、一棟ものと同様で新築・中古の2つのパターンがあります。
投資総額が小さいことから融資が下りやすく、比較的少額から運用開始できるということもあり、不動産投資初心者の方の中には「まずは区分マンション投資からはじめてみよう」と考える方も少なくありません。
しかし区分マンション投資は、一般的に利回りが低い部類に当たります。新築区分マンション投資は特に利回りが低く、キャッシュフローが見込めないどころか毎月手出しが必要になるケースが少なくありません。取得した部屋数が1つならば、空室が発生したとき家賃収入がゼロになってしまうなど、リスクも大きなものになります。
区分マンション投資で利益を得るためには、購入したマンションが値上がりするのを期待して根気強く待ち売却益を狙うか、築古物件を安く購入して運用するぐらいしかありません。一棟ものと比較して空室リスクが高い点や、賃貸経営における自由度が低い点においても、数ある不動産投資のなかでもリスクが高い手法であると言えます。
戸建て賃貸住宅投資
購入した戸建て住宅を賃貸に出して家賃収入を得る投資方法を「戸建て賃貸住宅投資」と呼びます。単身者向けの物件を賃貸に出すことの多いアパートやマンションと比較して、戸建て賃貸住宅投資はファミリー層をターゲットにするため、賃借期間が長く安定的な家賃収入を得られます。また都心へのアクセスがいいことや駅から近いことが求められる一棟ものとは異なり、多少不利な立地条件でも賃貸需要が見込めるという点は戸建て住宅を投資対象にするメリットと言えます。
戸建て賃貸住宅投資でも新築・中古のいずれかから選択可能ですが、中古物件を投資対象とすることで、比較的少額から不動産投資を始められます。ただし築年数が古くなると不動産投資ローンによる融資が受けにくいため、レバレッジをかけた資産拡大を目的とした不動産投資を行いたい人には不向きです。また修繕やリフォームにかかる費用が高額になる可能性もあるため、まとまった出費に備えておくことが重要になります。
不動産投資のメリット
本業以外の収入を得られる投資方法にはさまざまな種類が存在しますが、不動産投資を選択することで得られるメリットが大きく分けて4つあります。
- 安定した収入が得られる
- インフレ対策になる
- 金融機関の融資を活用できる
- 所得税節税と相続対策になる
1つずつ詳しく解説していきます。
安定した収入が得られる
不動産投資を行うメリットとして、一定の収入を安定的に得られることが真っ先に頭に浮かぶという方も多いのではないでしょうか。
マンションやアパート・一戸建てを貸し出すことで得られる家賃収入は、景気動向や物価動向による影響を受けにくいという特徴を持ちます。入居者がいる間は契約時に取り決めた家賃や管理費・共益費を継続的に受け取れるため、毎月決まった金額が収入になるという点は大きな魅力です。
特に本業として会社勤めをしている方や自身で事業を営んでいる方にとっては、本業のほかに安定した収入源があることで、本業での万が一の収入減少に対する備えにもなります。
インフレ対策になる
現物資産である不動産はインフレに強いため、不動産投資を行うことでインフレ対策をすることが可能です。
インフレの状況下では物価が上昇し相対的にお金の価値が下がるため、現金・預貯金はインフレの影響をダイレクトに受けてしまいます。その点現物資産である不動産は、インフレになったからといって価値が下落するということはほとんどありません。物価の上昇でモノやサービスの価格が上がることから、物件価格が上昇することになります。また、家賃相場の上昇も期待できます。
現物資産である不動産は、土地や建物自体に価値があるとされています。経済動向の影響を受けづらく資産価値が簡単に下がらないという点、インフレにより家賃収入の増額を見込める点が、不動産投資を行うメリットだと言えます。
金融機関の融資を活用できる
金融機関の融資を活用することで、レバレッジ効果により少ない自己資金でも大きなリターンが見込めるのも不動産投資の特徴です。
不動産投資を始める際には、一棟マンションや戸建て住宅といった収益物件を購入・建築する必要があります。借入をおこなわずに自己資金でまかなえる金額の収益物件を取得・運用した場合、自己資金×利回りの範囲でしか収益を得られません。
一方金融機関の融資により資金調達をおこなった場合、自己資金に対して何倍もの投資資金を準備でき、より資産価値や収益性の高い物件を取得できるようになります。この少ない自己資金で大きな利益を得られることを「レバレッジ効果」と呼び、レバレッジ効果があることでスピード感のある資産形成が可能になるのです。
所得税節税と相続対策になる
不動産投資を行うことで、毎年の所得税の支払額を抑えたり相続対策を行ったりすることが可能です。
まず着目すべきなのは、賃貸経営によって発生した所得は他の所得と「損益通算」ができるという点です。賃貸経営における損益通算とは、賃貸経営での所得が会計上赤字になった場合に、本業の所得(給与所得など)から差し引いて課税所得を計算できるということを指します。つまり賃貸経営における所得が会計上で赤字になっている場合、課税所得を抑えることができ、結果的に所得税の節税に繋がるのです。
さらに資産を現金ではなく投資用不動産として所有することで、相続対策にもなるという点も押さえておく必要があります。
相続税額は、相続財産の評価額(課税評価)から基礎控除額を差し引き、相続税率をかけて算出します。この際、現金や金融資産の場合は課税評価額が100%とみなされるのに対し、不動産の場合は路線価や賃貸用物件であることが考慮されることで、課税評価額が50~60%ほどになります。同じ額面を相続する場合でも、現金のまま相続するのと賃貸用不動産として相続するのとでは、相続税額に大きな差が出るということです。
このように不動産投資を行うことは、目先の収入の安定性だけでなく、将来納める必要のある税金を抑えることにも役立ちます。
不動産投資のデメリット
不動産投資を行うことで、安定した収入をはじめとしたさまざまなメリットを実感できます。しかし一方で、不動産投資は一度の投資金額が大きくなることから、どのようなデメリットやリスクがあるかも知っておく必要があります。
空室リスク
不動産投資のメリットのひとつに「安定的な家賃収入」があるということは先述のとおりですが、空室状態が続いてしまえば得られるはずの家賃収入も入ってきません。不動産投資において入居者が入らないリスクのことを「空室リスク」と呼び、確実に利益を得るためにも入居率の維持・向上を常に意識しなければなりません。
空室リスクを下げるためには、以下の3つのポイントを重視することをおすすめします。
- 賃貸需要の高いエリアの物件を選ぶ(交通の利便性がいい・生活環境が充実しているなど)
- 競合物件が過剰供給されていないエリアを選ぶ
- 室内設備・仕様を、時代に則したもの・需要の高いものに交換する
- 入居者募集や物件の維持管理・満足度向上に強い管理会社に委託する
空室リスク対策においては、空室が発生した際に素早く新しい入居者が決まることだけでなく、既存の入居者の満足度を高めて退去の頻度を下げることも重要です。
家賃滞納リスク
入居者から家賃が支払われないリスクのことを「家賃滞納リスク」と言います。家賃滞納はオーナーにとって損失になるだけでなく、回収のために膨大な労力が必要となり大きなストレスになります。さらに家賃滞納が起きた場合であっても会計上は「未収金」扱いになり、実際に支払われていなくても税金の支払い対象になってしまいます。
また入居後に考えられるリスクには「入居者信用リスク」というものもあります。入居者信用リスクとは、入居者が他の入居者の迷惑になる行為をする可能性のことです。たとえば騒音問題や不法駐輪、ゴミ置き場の利用ルールを守らないなどが迷惑行為にあたり、物件全体の入居率維持に大きく関わってくる部分です。
家賃滞納リスクや入居者信用リスクへの対策としては、入居前の審査を慎重に行うことが重要です。近年では家賃滞納リスク対策として家賃保証会社を活用するオーナーも増えており、管理会社と家賃保証会社のダブルチェックをすることでリスクを低減させることができます。
家賃下落リスク
購入時は新築で資産価値の高かったマンションや戸建て住宅であっても、年数が経つにつれてだんだんと資産価値が減少していきます。一般的には建物の築年数が古くなればその分家賃も減少する傾向にあり、これを「家賃下落リスク」と呼びます。
家賃下落リスクを少しでも減らすには、家賃が下落しにくい物件を選ぶことが重要です。都心の物件や駅近の物件は賃貸需要が高く、ある程度築年数が経過していても家賃が下落しにくい傾向にあります。また建物のメンテナンスを適切におこない、入居者が入れ替わるタイミングで設備や仕様の見直しをすることでも、家賃下落リスクを抑えることが可能です。
空室リスクと同様に、区分マンションだと家賃下落リスクのダメージが大きくなります。一棟アパート・一棟マンションのように居室が複数あれば、いっせいに家賃が下落することはありません。家賃下落リスクを低減するためにも一棟ものを選択することが重要です。
修繕リスク
賃貸経営においては、定期的な修繕やメンテナンスのほかにも偶発的な損傷や自然損耗により、想定外の補修や修繕が必要になる場合もあります。
特に築10年を過ぎたあたりから経年劣化による破損などが顕在化していき、築13~15年頃から水回りの設備の入れ替えや、屋根・外壁の大規模修繕が発生します。そのため定期修繕やメンテナンスのための費用に加え、突発的な工事に備えて一定額を積み立てておくことが重要です。
また収益物件を新築で建築する場合は、耐久性の高い建物を建ててもらえる施工会社に依頼するだけでなく、定期点検などのアフターサービスが充実している会社を選ぶことも大切です。
まとめ 家賃収入を得るには不動産投資のプロを味方につけよう
不動産投資は中程度のリスクで安定した利益を得られる「ミドルリスク・ミドルリターン」だと言われています。想定されるリスクはいくつかありますが、回避方法を知り適切なリスクコントロールをすれば、長期的・安定的に家賃収入を得ることが可能です。
しかし不動産投資初心者に限らず、これまで不動産投資を経験してきた方であっても、リスクを上手にコントロールしながら安定的な家賃収入を得るには、投資家個人のみによる情報収集や運用では不十分です。実績や経験が豊富な不動産投資会社や管理会社を味方につけ、確実に利益を得られる物件を見極めるだけでなく、物件の種類や特徴、エリアや周辺地域での賃貸需要に合わせた運用方法を模索することが重要です。
監修者
藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO
昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
資産運用領域で日本No.1の会社を目指し日々経営にあたっている。
マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
書籍「収益性と節税を最大化させる不動産投資の成功法則」や「収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則」を発売中。