オーナーチェンジ物件のメリット・デメリット|取得の際に注意すべきポイントとは?

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不動産投資ではオーナーチェンジ物件を取得することがあります。中古物件の多くはオーナーチェンジ物件であり、その性格は新築の収益物件とは異なる点があります。

オーナーチェンジ物件のメリット・デメリット、取得時に注意すべきポイントを解説します。これから不動産投資を始めたいと考えている方はぜひ、参考にしてください。

オーナーチェンジ物件とは

オーナーチェンジ物件とは、入居者と賃貸借契約を交わしたままの状態で売りに出された物件を指します。入居者がいる状態で物件を売買するため、入居者は変わらずオーナーのみが変わるという取引形態です。入居者がいない状態で売りに出される物件は「空室物件」と呼ばれます。

アパートやマンションの場合は、いずれかの部屋に入居者がいることが多いため、ほとんどがオーナーチェンジ物件になります。入居者からしてみれば、オーナーが変わるからといって賃貸借契約に変化はありません。オーナーが変わったことに気づかない入居者のほうが多いでしょう。

オーナーチェンジ物件の魅力の1つは、新築物件よりも早く収益化することができる点にあります。

オーナーチェンジ物件を取得するメリット

オーナーチェンジ物件は、新築物件にはないメリットが存在します。ここでは、オーナーチェンジ物件を取得するメリットを4点紹介します。

家賃収入がすぐに発生する

最初のメリットとして挙げられるのは、オーナーチェンジ物件は新築物件や空室物件とは違い、入居者がすでに入居しているので取得してすぐに家賃収入が発生する点です。不動産投資を始める多くの投資家は、ローンを組むので購入直後からローンの返済が始まります。場合によっては家賃収入を得られるのが購入後の数ヶ月後になることもあり、その間は自身の貯蓄や他の収入で賄わなければなりません。それを考えると、家賃収入を購入してすぐに得られるというのは大きなメリットです。

また、入居者募集の手間もかかりません。実務は管理会社が行うことになりますが、入居者を探すには広告の作成や賃貸借契約書の準備、入居希望者の審査など手間やコストがかかります。どれだけ手間をかけても、入居者が現れないこともあります。

オーナーチェンジ物件であれば、入居者募集にかかる手間やコスト、精神的負担を省くことができます。不動産投資において「空室リスク」は深刻な問題なので、その心配がない状態で賃貸経営を始められるのは、不動産投資初心者にとってはとてもありがたいものになります。

金融機関の融資審査が通りやすい

融資を活用して不動産投資を始める場合、まず金融機関の融資を受けることが必要です。金融機関のローン審査を通過しなければ融資を受けることができず、どんなに優良な物件を見つけたとしても物件を取得することはできません。オーナーチェンジ物件はすでに入居者がいることで、金融機関の融資審査が比較的通りやすい傾向にあります。

これまで管理してきた管理会社に継続して管理をお願いできるので、管理コストや設備点検費用、原状回復費用などが予想しやすく、収支計画が立てやすいのも融資審査が通りやすい理由の1つです。もちろん、より良い管理ができる管理会社に切り替えることも可能です。

金融機関は借主の属性(年齢や経歴、年収などの返済能力に関する情報)と物件自体の資産価値や収益性などを調査して融資を実行するかどうかの判断をします。ただし、あくまで審査に通りやすいのは「収益性が高い」と判断された物件であり、オーナーチェンジ物件だから審査が通るというわけではない点は注意しましょう。

家賃の下落率は穏やか

中古の収益物件は、新築や築浅物件のような家賃の急激な下落は起きづらいといわれています。オーナーチェンジ物件は、新築プレミアムの効力が切れて新築時より家賃が下落した後のことが多いので、家賃下落率は穏やかで安定した家賃収入が期待できます。

不動産投資はこの家賃下落率もよく考えて行動しなければなりませんが、不動産会社の営業トークでは、家賃下落率のことにふれられていない場合がよくあります。特に不動産投資初心者だと家賃の下落率を予測することは難しいので、オーナーチェンジ物件であればその心配は少なくなります。

相場より低価格で取得できるケースがある

投資用不動産の物件価値を評価する方法の1つに、「収益還元法」というものがあります。これは簡単にいうと、家賃によって物件価格を割り出す方法です。

オーナーチェンジ物件はものによっては周辺相場よりも家賃設定を低くしている場合があります。そのため物件価格が低額になっているものがあります。家賃を低く設定しているので当然、家賃収入は少なくなりますが、引き継いだ入居者が退去した後ならば家賃を自由に設定することが可能です。つまり、比較的低価格で物件を取得し、既存の入居者が退去した後に家賃を値上げすることで高利回りを実現できるのです。

オーナーチェンジ物件を取得するデメリット

家賃収入がすぐに発生し、収支計画が立てやすく、不動産投資初心者に向いているといえるオーナーチェンジ物件ですが、一方でデメリットも存在します。リスクを最低限に抑えるためには、そのデメリットを知ることが必要です。ここではオーナーチェンジ物件のデメリットを5つご紹介します。

すぐに修繕が必要になることがある

オーナーチェンジ物件には中古物件があります。当然、築年数が経過するほど修繕が必要になる箇所が出てきます。前オーナーの管理状況によっては購入後、すぐに修繕が必要になる場合があります。特に前オーナーが自主管理をしていたのなら要注意です。

オーナーが短期間に何度も変わっているような物件の場合も、これまでのオーナー達が修繕をしないまま売り逃げしていることもあるので、注意しましょう。価格の安さだけで物件を決めてしまうと購入後に大規模な修繕が必要になり、結果的に割高になるケースがあります。

オーナーチェンジ物件を購入する際は、過去にどのような修繕が行われたかをしっかりと確認するようにしましょう。

室内状況の確認が難しい

すでに入居者がいることがオーナーチェンジ物件のメリットだと紹介しましたが、同時にデメリットにもなります。入居者がいることで購入前に内覧ができないのです。そのため外観や資料でしか物件の状態を知ることができません。既存の入居者が退去した後に室内を確認したところ、おおがかりな修繕が必要だったというケースもあります。

また、建物の構造自体に傾きやシロアリ被害などの問題があるケースや、室内の汚れや設備の老朽化などがある場合には、購入後に想定外のリフォームや修繕の費用が発生したり、前オーナーとの間でトラブルになったりする可能性があります。

入居者との契約内容に縛られる

賃貸借契約は売買契約に対抗できるので、前オーナーとの契約内容を引き継ぐことになります。これによって新オーナーは自らが結んだ契約でないにも関わらず、義務が発生することがあります。賃貸借契約は変更したり、破棄したりすることはできません。トラブルを避けるために必ず事前に契約内容を確認しましょう。

要注意なのは転貸借契約(サブリース契約)の場合です。サブリース契約には空室リスクを回避することができ、安定した収入が得られるというメリットがありますが、家賃見直しの際に大幅に引き下げられたり、突然契約解除をされたりする恐れもあるので十分注意しましょう。理不尽と思えるサブリース会社の振る舞いに対しても、オーナーからの契約解除は事実上できません。

サブリース契約の物件の場合は、しっかりと契約内容を確認するようにしましょう。

入居者情報が限定的なことがある

オーナーチェンジ物件を購入する際、すでに入居している入居者の属性は気になるものです。新規の入居者ならば、入居者審査によって属性の詳細が分かりますが、すでに入居している入居者の情報は前オーナーから引き継ぐ資料のみです。

中には家賃を滞納する、ルールを守らない、他の入居者とトラブルを起こすなど問題のある入居者がいるかもしれません。そういったネガティブ情報を隠される可能性があります。売却する側も、物件のマイナス評価につながることは提供したくないというのが本音でしょう。

一般的には、家賃が高額な物件では入居者属性が高い傾向があり、低額な物件では入居者属性は低い傾向にあります。賃料グレードも判断材料の1つになるでしょう。

入居者の一斉退去がありうる

物件購入後一定期間が経過した後に、入居者が一斉に退去するということがありえます。例えば付近に大学や工場があり、移転してしまったケースです。

規模の大きな大学や工場があると、そこの学生や会社員が入居者になっているケースが多くあります。大学・工場の存在が賃貸ニーズを形成していた場合、周辺の賃貸住宅がそこに依存することになりがちです。その大学・工場が移転してしまうと、巨大な賃貸ニーズが消失することになります。

このようなケースでは、入居者の一斉退去後、次の入居者がなかなか見つからない可能性があります。近所の大学・工場の存在のような特定の賃貸ニーズに依存した物件は、避けたほうがいいでしょう。

オーナーチェンジ物件を売却する目的

そもそもなぜ、オーナーチェンジ物件が売却されるのでしょうか。前オーナーが物件を売却する理由を知っておけば、物件を取得するときの判断材料になります。ここではオーナーチェンジ物件を売却する主な目的を4つご紹介します。

売却のタイミングとして最適だった

不動産投資というのは、月々の家賃収入と物件の売却益の総和で最終的な利益が確定します。地価が上昇することで物件そのものの価値が上がることもあります。そのタイミングで売却したということが考えられます。

譲渡所得税の節税を考えると、長期譲渡所得のタイミングで売却している物件は合理的と思えますが、短期譲渡所得で売却している場合は前オーナーに何か理由があって売却を急いだと考えることができます。

長期譲渡所得は不動産を譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超えるもの、短期譲渡所得は5年以内のものです。長期譲渡所得の税率は20.315%、短期譲渡所得は39.63%です。

オーナーチェンジ物件を購入する前に、前オーナーの所有期間はチェックするようにしましょう。

賃貸経営を続けるのが難しくなった

賃貸経営が上手くいっておらず、物件を手放したケースです。このケースでは入居者がいるのになぜ経営が上手くいかなかったのか、詳細を調べないと自身で購入した後も同じように上手くいかなくなる可能性があります。

経営が難しくなった理由として、例えば学生向けの物件であったが、近隣にあった大学が移転してしまった、商業施設が撤退するなど周辺の状況が変化したなどがあります。

中には、経営自体は順調だったが前オーナーの高齢化や病気、転職などで手放した場合もあります。このような場合は良い物件の可能性があるので、前オーナーへの聞き取りを行うようにしましょう。

まとまった現金が必要になった

何らかの事情で、前オーナーがまとまった現金を必要としたケースです。この場合は前オーナーの都合が大きいので、物件そのものに問題があるかどうかははっきりしません。前オーナーの事情とは別に物件をきちんと精査する必要があります。

他の物件への買い替え

事業拡大などで、他の物件への買い替えのために売却するケースです。例を挙げるならば、複数保有していた区分マンションを売却して、一棟アパートを購入するなどのケースが考えられます。

投資家が次のステップのため、複数保有する物件を組み換えたり、事業規模を大きくしたりするのは不動産投資ではよくあるパターンです。物件に問題があって売却に至ったのか、この動機だけでははっきりしないので、物件の精査はしっかりと行いましょう。

オーナーチェンジ物件を取得するとき注意すべきポイント

不動産投資初心者に向いているといわれているオーナーチェンジ物件ですが、注意すべきポイントもいくつかあります。物件を取得した後、トラブルにならないようこれから紹介する注意点を押さえておきましょう。

入居者との契約内容を確認する

オーナーチェンジ物件のデメリットでも前述したように、前オーナーと入居者との賃貸借契約は新オーナーに引き継がれます。要注意なのは、敷金の取り扱いです。地域によっては、敷金に対する考え方が違います。敷金の定義は、経年劣化や退去時に修繕が発生したときに充てるお金のことです。オーナーチェンジ物件を購入する場合、関東では売主が大家として入居者から預かった敷金は、新オーナーである買主に引き継がれます。敷金は入居者から預かっているお金なので、新オーナーに継承されるのは当然のこととされます。

しかし、関西では「敷金持ち回り」という制度があります。これは「敷金債務持ち回り」のことを指し、前オーナーから敷金が引き継がれないのにも関わらず、入居者への敷金返還債務を追うことになります。入居者数、敷金の多寡によっては大きな金額となりますので、しっかりと確認するようにしましょう。

レントロールをしっかり確認する

レントロールとは、賃料条件一覧表のことです。入居者ごとの契約賃料、契約者の属性、礼金、敷金、補償金などが記載されています。不動産投資の賃貸経営は基本的に賃料収入を目的とした事業です。年間賃料の多寡が収益物件の価格形成における大きな決定要素になります。そのため、レントロールの確認は重要になります。

前オーナーや不動産仲介会社から見せてもらい、項目内容を確認しましょう。レントロールのチェックポイントは敷金返還債務の金額や、賃料に水道光熱費が含まれていないかどうかなどいろいろありますが、1番のチェックポイントは賃料です。

賃料は周辺相場と照らし合わせて、高すぎないか安すぎないかどうかをチェックしましょう。しかし、賃料相場を調べて妥当かどうかを一般の個人投資家が判断するのは難しいかもしれません。そこでおすすめなのが物件周辺エリアの不動産仲介会社に意見を聞くことです。各エリアの賃料相場を熟知している不動産仲介会社なら賃料の相場を知っているので良いアドバイスが期待できます。

前オーナーの売却理由を調べる

前オーナーの売却理由をしっかりとヒアリングしましょう。良いと思った物件でも売却理由によっては、購入を考えたほうが良い場合があります。例えば、賃貸経営が上手くいかずに手放す場合は、物件や入居者に問題がある可能性があるので要注意です。

売主から本当の売却理由を聞き出すのは難しいことがあります。売りたい物件のマイナス評価になるような発言は極力控えるのが心情です。そのような場合は、不動産仲介会社から情報を聞き出しましょう。良心的な会社であれば、買主の立場に立って考えてくれるでしょう。

過去の運営・管理状況を調べる

購入後に入居者を募集する際の参考にしたり、家賃収入の見通しを立てたりするためにも、過去の運営・管理状況を調べることは大切です。レントロールからも分かりますが、すでに住んでいる入居者はどのくらいの期間住んでいるのか、入居者が決まりづらい部屋があるのか、その理由は何かなどが知れると今後の対策に役立ちます。

修繕履歴を確認することも大切です。今後発生が予想される修繕箇所や、工事費用がどのくらいかかるかなどが予測できます。大規模修繕のタイミングも予定することができます。

これまで管理していた管理会社の情報も確認したほうが良いです。今後も同じ管理会社に継続して任せるのか、それとも他の管理会社に任せるのかを検討することになります。

信頼できる不動産会社から購入する

ここまでオーナーチェンジ物件を取得する際の注意点をご紹介しましたが、すべてを実行するとなると手間と時間がかかり、買主にとって負担が大きいものになります。そこで物件探しにそこまで手間と時間をかけたくないのであれば、信頼できる不動産会社から購入することが大事です。

売りに出されている物件は、不動産会社が仲介している場合と不動産会社自らが売主の場合があります。仲介でも「両手仲介」(売主と買主の双方の仲介を同一の不動産仲介会社が行うこと)の場合、売主側ばかりに気を使う会社もありますので注意しましょう。

不動産選びの際に注意すべきことの1つとして、「三為業者(さんためぎょうしゃ)」の存在があります。三為業者とは「第三者の為にする契約」を行う不動産会社のことですが、「中間省略登記」によって登録免許税や不動産取得税を節約し、売却益を得ます。三為業者自体は違法ではないのですが、買主側からしたら割高な物件価格で購入してしまうリスクもあり、「売りっぱなし」で不動産売買に付随する細かなサービスを受けられないおそれがあるので、避けたほうが無難といえるでしょう。

まとめ

ここまで、オーナーチェンジ物件のメリット・デメリットを始め、取得の際に注意すべきポイントを解説してきました。

オーナーチェンジ物件は、すでに入居者がいるので入居者募集を募る手間がかからない点や購入後すぐに家賃収入が得られ、収支計画が立てやすいので不動産投資の初心者におすすめといえます。しかし一方で、事前に内覧が難しい、入居者が一斉退去するかもしれないリスクや修繕費発生のリスクといったデメリットや注意点も存在します。

オーナー物件を取得して成功するためには、信頼できる不動産会社を見つけることが何よりも大切です。オーナーチェンジ物件を取得して不動産投資を成功するためにも、不動産投資家に寄り添って賃貸経営をサポートしてくれる不動産会社と出会いましょう。

監修者

藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO

昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
資産運用領域で日本No.1の会社を目指し日々経営にあたっている。

マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
書籍「収益性と節税を最大化させる不動産投資の成功法則」や「収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則」を発売中。

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