アパート経営の基本と始め方を伝授! 知っておくべきリスク対策法も解説

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「貯蓄から投資へ」というスローガンが掲げられて久しい昨今、アパート経営で資産形成していきたいと考えている方も多いのではないでしょうか。アパート経営は物件自体が資産になるだけでなく、定期的に家賃収入を得られたり、節税効果が見込めたりといったメリットがあります。

今回は、そんなアパート経営の基本やマンション経営との違い、実際に始める際の流れについて詳しく解説。経営を成功に導くためのポイントについても紹介します。

この記事を読んで、アパート経営を始めるにあたっての疑問や不安を解消していきましょう。

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アパート経営とは 

所有するアパートを賃貸して得る家賃を主な収入源として、不動産賃貸業を行うアパート経営。具体的にどのようなものなのか、事業の仕組みと利益の種類という2つの観点から解説していきます。 

アパート経営の仕組み

アパート経営とは、アパートを新たに建築、もしくは新築・中古のアパートを購入し、部屋を他人へ賃貸することにより入居者から家賃を得る不動産賃貸業の一種です。区分マンションの一室のみに投資するのとは異なり、アパート一棟を丸ごと経営します。 

安定した経営に欠かせない日常の管理運営業務は、オーナー自ら行うことも可能ですが、実際は管理会社に委託するケースが大半です。 

アパート経営は、継続的に安定した家賃収入が得られる点や節税・相続対策につながる点など、さまざまなメリットがあります。アパート経営のメリットについては後の章で詳しく解説しますが、不動産投資の中でもポピュラーな手法です。 

一棟丸ごと経営するという点ではマンション経営と共通しているものの、アパートはマンションに比べて物件価格が少額である傾向にあります。そのため、アパート経営のほうがマンション経営よりも、少ない初期投資でも始めやすいのが特徴です。 

キャピタルゲインとインカムゲイン

次に、得られる利益の種類という側面から、アパート経営の基本を確認していきましょう。アパート経営によって得られる利益は、大きく分けてキャピタルゲインとインカムゲインの2種類に分けられます。

キャピタルゲインとは、自身が保有する資産を売却することによって得られる利益を指します。アパート経営におけるキャピタルゲインは所有アパートの売却益です。売却代金から物件簿価(物件取得金額から減価償却を引いたもの)や売却諸費用、ローン残債、譲渡所得税を引いた手取りがプラスになる状態で売却できればキャピタルゲイン・売却による売却キャッシュフローを得られます。

一方のインカムゲインとは、保有している資産によって継続的に得られる利益を指します。アパート経営における主なインカムゲインは家賃収入です。

かつてのバブル期のように土地の価格が上昇し続けている場面では、キャピタルゲインを狙った不動産投資が活況でした。しかし、現在の日本では急激な資産価値向上は期待しにくく、安定してインカムゲインを得られる投資手法が主流となっています。

こうした流れの中で、家賃による安定的なインカムゲインが期待できるアパート経営も人気となっているのです。

アパート経営のメリット

アパート経営とはどのようなものかわかったところで、続いては具体的なメリットを紹介していきます。アパート経営は、次に挙げる5つのメリットが期待できます。 

  • 安定した家賃収入が得られる 
  • レバレッジ効果がある 
  • インフレ対策になる 
  • 土地活用になる 
  • 所得税節税と相続対策になる 

それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。

安定した家賃収入が得られる

アパート経営の1つ目のメリットは、安定した家賃収入を継続的に得られる点です。

アパート経営は入居者さえついていれば、毎月決まった金額の家賃収入を受け取ることができます。賃貸借の契約期間は2年更新が一般的ですが、入居者のニーズに合っていれば、長期間にわたって借りてくれる可能性もあるでしょう。

家賃収入を継続的に得られるという点では、区分マンションやオフィス・店舗に投資するのと変わりません。ただ、安定性を考えるとアパート経営はメリットが大きいと言えます。

たとえば、区分マンションの一室のみを投資対象とする場合、所有する部屋が空室になった途端に家賃収入はゼロになってしまいます。アパート経営であれば、たとえ空室が出たとしても、他の部屋からの家賃で収入を確保することが可能です。

オフィスや店舗を投資対象とする場合、景気の影響を色濃く受けます。景気が悪くなると賃料低下や空室が長期化し、経営を圧迫する事態になりかねません。

一方、住む場所は景気にかかわらず必要不可欠であるため、アパート経営は景気動向・物価動向にあまり左右されず、安定した経営が期待できるのです。

レバレッジ効果がある

アパート経営には、レバレッジ効果が働くというメリットもあります。レバレッジ効果とは「テコの原理」を指し、加えた力以上に大きな力を発揮する効果のこと。不動産投資においては、融資の活用によって手持ち資金による投資効率を何倍にもアップできる効果を指します。

投資対象となるアパートを取得する際、自己資金とあわせアパートローンを借り入れるのが一般的です。アパートローンは投資用の住宅に関連する費用を融資目的とするローン商品で、対象となるアパートの収益性や資産価値を考慮して融資が行われます。

アパートローンを活用すれば、自己資金以上の価値を持つ物件を取得できるため、自己資金のみで投資を行うのに比べ、格段に大きな投資効果が期待できるのです。

投資効果を高められるということは、よりスピーディな資産形成が可能になるということでもあります。

インフレ対策になる

賃貸不動産はインフレに強いため、アパート経営はインフレ対策になるという点もメリットです。

実物資産である不動産の価格は、一般的に物価上昇に比例して上がっていきます。アパートの場合、家賃収入もアップする可能性があります。このことから、物価上昇にともなって資産価値や収入が上昇するアパート経営は、インフレの影響を受けにくいと言えます。

一方、日本において安定資産として好まれる預貯金はインフレに弱い資産です。現金はインフレによって物価上昇が続くと、価値が急激に目減りしてしまうのです。

ちなみに、現金の価値が目減りするということは、借入金の価値も実質下がることを意味します。つまり、アパートローンで借り入れているお金の価値も目減りするので、借入金返済の実質的な負担が軽減するのです。これを「債務者利得」と呼びますが、この点からもアパート経営はインフレ対策に効果があると言えるでしょう。

土地活用になる

眠っている土地を所有している場合、アパート経営を行えば土地活用になるというのも見逃せないメリットです。 

相続などで不動産を取得したものの、使い道が特になく放置しているという方も多いかもしれません。一定の要件を満たす場合を除き、土地を所有しているだけで固定資産税・都市計画税が発生します。放置していれば収益はゼロどころか、マイナスになってしまうのです。 

アパート経営で眠っている土地を収益物件に変えることで、所有資産を有効活用できる上、不動産としての資産価値を向上できる可能性もあります。 

ただし、所有する土地の立地条件や周辺環境により、アパートとして活用できるかどうかが決まります。事前に収支をシミュレーションし、収益性がしっかりと確保できる見込みが立てば、アパート経営を検討してみるのもいいでしょう。 

所得税節税と相続対策になる

所得税の節税や相続対策が期待できるという点は、アパート経営の大きなメリットです。 

不動産所得については「総合課税方式」が採用されており、給与所得など他の所得と損益通算が可能です。所得税は課税所得が大きいほど税率が高くなる累進課税制度が採用されているため、不動産所得が黒字の場合、何もしなければ所得税の課税額が増えてしまいます。 

そこで、減価償却費を計上し不動産所得を帳簿上赤字にすることで、課税所得を圧縮できます。特に築古のアパートは減価償却期間が短く、短期間で減価償却できるのがポイント。減価償却期間中は大きな節税効果が期待できます。 

加えて、アパート経営は相続対策にもなります。預貯金や金融資産の相続税評価額は額面どおりとなるため、当然ながら相続税を圧縮する効果はありません。これに対し、不動産にかかる相続税評価額は市場における時価よりも低くなる仕組みです。 

賃貸物件はさらに評価額が低減されるため、保有資産を賃貸アパートに組み替えることで、相続税評価額を50〜60%程度に圧縮できます。 

アパート経営の4つのパターン

アパート経営には、土地所有の有無によって次の4つのパターンがあります。検討するにあたっては、パターンごとの特徴を理解しておくようにしましょう。

  1. 所有している土地にアパートを新築する 
  2. 土地を購入してアパートを新築する 
  3. 商品化された土地込みの新築アパートを購入する 
  4. 土地込みの中古アパートを購入する

1.所有している土地にアパートを新築する

アパート経営における1つ目のパターンは、相続などで所有している土地にアパートを新築する方法です。前章で紹介した、眠っている土地を活用するケースはこのパターンに該当します。元から持っている土地を活用してアパート経営を行うので、土地代が一切かからない点は大きなメリットです。 

また、更地にアパートを建設すると「住宅用地の特例」が適用されるため、土地にかかる固定資産税・都市計画税が減額されるというのもポイント。家賃収入を得られるだけでなく節税にもつながります。 

一方で、安定的な家賃収入を得るためには、立地を踏まえて賃貸需要があるのかどうかを綿密に調査しなくてはなりません。土地の面積・形状・用途地域などの要因により、建てられるアパートの内容に制限がかかる可能性もあります。 

土地ごと購入するのに比べて、アパート経営の自由度が低い点はデメリットと言えるでしょう。 

2.土地を購入してアパートを新築する

2つ目は、新たに購入した土地にアパートを新築するパターンです。このパターンでは、アパートの建築費に加えて土地の購入代金もかかるため、1つ目のパターンに比べて初期投資が多くかかります。 

土地を購入するにあたっては、アパートを建築するのにふさわしい土地探し、売買契約の締結や建築会社の選定など、数多くの手続きを行わなければなりません。コストと手間がかかるので、比較的ハードルの高いパターンと言えます。 

その分、土地選びから建物の設計に至るまで、自由度高く決められるのがポイント。中でも、立地というアパート経営にとって最も重要な部分を自分で選べる点は大きなメリットです。リスクとリターンのバランスを見ながら、自分の裁量でアパート経営をしてみたいという方におすすめの方法でしょう。

3.商品化された土地込みの新築アパートを購入する

パッケージ化された新築アパートの投資商品を購入し、アパート経営に参画するというパターンもあります。プロである不動産会社が土地をセレクトし、間取り等の商品企画まで一貫して手がけたものを購入するので、事業性や収益性を期待できるのがメリットです。 

自分で土地を購入したり、建物のプランを考えたりする必要がないため、準備にかかる手間も軽くできます。 

しかし、土地代と建物の建築費用に加え、プランニングする不動産会社の利益がプラスオンされる点は要注意。一般的にパターン2に比べて物件価格は高くなる傾向にあります。

プロの目で企画された収益性の見込める物件を経営して、より着実にインカムを狙いたいと考える方に向いている方法です。 

4.土地込みの中古アパートを購入する

4つ目のパターンとして、中古アパートを土地込みで購入するという方法があります。土地と物件を同時に購入できるので、物件探しの手間を軽くできます。新築アパートを取得するのに比べて、割安で手に入れることができるというのも大きなメリットです。 

また、オーナーチェンジ物件の場合、購入当初から家賃収入を得られる点も魅力です。 

オーナーチェンジ物件とは、既存の入居者がいる状態で売却された物件のこと。売却によってオーナーのみが変更となり、入居者からの家賃収入はそのまま新たなオーナーに引き継がれます。購入時点で一定の家賃収入が見込めるので、初心者でも資金計画が立てやすい物件です。 

ただし、既存の物件を購入するので、経営に関する自由度は高くありません。築古だと修繕費用が高くつく場合もあり、事前に老朽化の状況や欠陥の有無をしっかりと確認しておく必要もあります。 

アパート経営とマンション経営の違い

アパート経営とよく比較されるのがマンション経営です。ここでは、アパート経営とマンション経営の違いを5つの観点から解説していきます。 

なお、今回取り扱う「マンション経営」とは一棟マンションの経営を指しており、区分マンション経営のことではありません。

 アパートとマンションの違いとは

建築基準法では、同じ「共同住宅」に分類されるアパートとマンション。両者の違いについて、法律上の明確な定めはありません。 

集合住宅のうち、鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造で3階以上の規模があるものをマンションと呼ぶのが一般的です。対して、木造や軽量鉄骨造で2階建て程度の小規模な集合住宅がアパートと呼ばれます。 

これはあくまでも一般論であって、不動産会社や物件ポータルサイトによって独自の区分を設けているのが実情です。 

物件価格

物件価格で比較すると、マンションが高く、反対にアパートは低めという傾向にあります。理由としては、主に建物構造の違いと規模の違いが挙げられます。 

先ほど紹介したとおり、マンションの建物構造は鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造が中心です。対するアパートは、木造や軽量鉄骨造であるケースが多くなっています。マンションのほうが構造上、耐久性・耐火性・防音性などの性能が優れている傾向にあることから、物件価格も高めに設定されるのです。 

マンションはアパートに比べて階数が高く、物件の規模が大きいのも特徴。規模が大きい分だけ、アパートよりも物件価格は高くなる傾向にあります。 

また、マンションは設備のグレードが比較的高い傾向にあるほか、アパートにはない共用設備が充実しているケースも見られます。グレードや共用設備の充実度が高いほど、それに合わせて物件価格も高くなるのです。 

利回り

利回りの観点で比較すると、一般的にアパートのほうが利回りは高く、マンションのほうが低くなる傾向にあります。

利回り(表面利回り)は、満室稼働した場合の年間想定家賃収入÷物件価格で求められます。アパートのほうがマンションよりも分母にあたる物件価格が安い傾向にあるため、結果として利回りが高くなるのです。 

なお、表面利回りには空室リスク、滞納リスクといった各種リスクや運営コストが見込まれていません。あくまでも表面的な物件の収益性を表す指標である点に注意が必要です。

金融機関の融資姿勢

アパート経営・マンション経営どちらの場合も金融機関からの融資が前提となります。一般的に物件価格の大きいマンションのほうが、より多くの資金を借り入れることになるため、融資姿勢は厳しいと考えられます。物件価格の小さいアパートは借入金額も小さくなるため、融資のハードルは比較的低いと言えるでしょう。 

ただし、アパート経営やマンション経営への融資を目的とするアパートローンは、申込者の収入や職業のほか、保有する金融資産なども審査基準となっています。物件の良し悪しよりも申込者の属性が重視される傾向にありますので、アパートかマンションかよりも属性の良い申込者が融資金額・借入期間・金利などで優遇されることになるでしょう。

節税メリット

アパート経営とマンション経営では、所得税の節税メリットについても違いがあります。どちらも減価償却費の計上による所得税の節税が期待できますが、効き方が異なるのです。 

物件取得費用など不動産投資にかかった費用は、減価償却費として法定耐用年数に応じた期間、経費計上して所得から差し引くことができます。減価償却期間中は、減価償却費分だけ課税所得が圧縮されるため、所得税を節税できるという仕組みです。 

減価償却期間は次のような計算式で求められます。

減価償却期間(年)= 物件の法定耐用年数 – 物件の築年数 +(築年数 × 20%) 

なお、築年数が法定耐用年数を超える物件では、築年数×20%が減価償却期間になります。 

木造や軽量鉄骨造のアパートは法定耐用年数が短いため、減価償却期間も短くなるのが一般的。特に築古のアパートだと、新築物件に比べて減価償却期間が非常に短くなります。そのため、短期間で大きな節税効果を期待できるのは築古の中古アパート経営です。 

鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造が中心のマンションは法定耐用年数が長く、減価償却期間も長くなります。よってマンション経営は、長期間にわたり減価償却費の計上による節税の恩恵を受けられるのがメリットと言えます。 

アパート経営を始めるまでの流れ

実際にアパート経営にチャレンジするとなった場合、どのような流れで始めていけばいいのでしょうか。ここでは、中古アパートを購入して賃貸経営を行うケースを例に解説していきます。 

投資目的をはっきりさせる

いざアパート経営にチャレンジしようとすると、とにかく良い物件を探そうと闇雲にスタートしてしまいがちです。しかし、まずは「自身がなぜアパート経営を行いたいのか」という投資目的をはっきりさせることが大切です。 

投資目的がはっきりしないまま物件探しをスタートしてしまうと、目的から外れた物件を購入してしまい、結局当初の目標を達成できない事態に陥りかねません。 

アパート経営に乗り出す理由は、人によってさまざまです。家賃によるインカムゲインを貯蓄に回して老後に備えるためという人もいれば、家賃収入を副収入として月々のキャッシュフローを増加するためという人もいるでしょう。また、減価償却費の計上による所得税の節税や相続対策を目的とする場合もあります。 

早期かつ着実に収入を得たいのでオーナーチェンジ物件を狙う、長期的な節税効果を高めるべく物件を新築するといったように、投資目的に応じて選ぶべき物件の種類も変わってきます。 

アパート経営にチャレンジすると決めたら、最初にあらためて投資目的を明確化してみましょう。 

物件を探す

物件探しをするにあたっては、事前に物件購入にかけられる予算を設定する必要があります。自身の経済状況でいくらまで借り入れができるのかシミュレーションし、運転資金や諸費用も含めた余裕のある資金計画を立てましょう。 

予算が設定できれば、その範囲内で購入できる物件を探していきます。物件探しの方法としては、不動産会社に相談するか、健美家や楽待といった不動産投資に関するポータルサイトを通じて検索するというのが一般的。また、新聞広告や業界誌などから情報収集を行うのも効果的です。 

目的に合いそうな候補物件が見つかったら現地調査・物件内覧を実施します。物件を現地で実際に見てみることで、掲載写真や情報からだけではわからない物件の特徴や課題が見えてくるはずです。立地や周辺環境を確かめる意味でも、気になる物件は必ず現地に足を運びましょう。 

中古アパートの掲載情報には、賃貸条件を一覧にしたレントロールも含まれています。レントロールは物件の収益性を把握するために重要なものですので、しっかりと精査する必要があります。

買付証明書を提出

現地調査や物件内覧を経て購入したい物件が見つかったら、不動産販売会社・仲介会社に対して買付証明書を提出します。 

買付証明書とは、対象となる物件を購入したいという意思表明を行うための書類です。所在地や面積・建物構造といった物件概要のほか、購入したいと考えている希望金額や支払い方法、申込書の有効期限などが記載されます。記載内容をベースとして、売買契約締結に向けた条件交渉のフェーズに入っていきます。 

買付証明書は購入の意思表示をするためのものであり、法的拘束力を持ちません。そのため、提出していても購入を取りやめることはできます。裏を返せば、買付証明書を提出したからといって、必ず物件を購入できるわけではないので注意が必要です。 

アパートローンの事前審査を受ける

アパート経営を目的とした資金を融資する不動産投資ローンは「アパートローン」と呼ばれます。アパート経営用の物件を購入するにあたって、通常の住宅ローンは利用できません。物件購入に融資を活用する場合には、アパートローンに対応している金融機関へ相談しましょう。 

利用したいローン商品の目星がついたら、金融機関に不動産投資ローンを申し込んで事前審査を受けます。事前相談および事前審査に必要な書類は金融機関によって異なりますが、次に挙げるような書類は準備しておきたいところです。 

  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど) 
  • 購入予定物件の概要資料 
  • 賃貸経営の事業計画に関する資料(想定キャッシュフロー表など) 
  • 申込者の収入・資産状況に関する書類(源泉徴収票、確定申告書、納税証明書など) 

不動産売買契約を結ぶ

無事にアパートローンの事前審査を通過し、購入資金を調達できる見込みが立ったら、不動産売買契約を締結します。契約締結時には宅地建物取引士による重要事項説明が行われるので、契約内容に問題がないか、最終確認をしておきましょう。特に問題がなければ契約書に署名捺印し、正式に契約締結となります。 

契約締結時点ではアパートローンの本審査前であり、融資が実行されない可能性もある状態です。そのため契約書には、ローンの審査が通らなかった場合には契約解除となる旨を定めた「融資特約」を盛り込んでもらう必要があります。 

なお、売買契約締結時に物件価格の10%程度を手付金として支払うケースが多いため、必要な現金も準備しておくようにしましょう。手続きが問題なく進めば、手付金は売買代金の一部に充てられます。

アパートローンの本審査を受ける

不動産売買契約締結後、アパートローンの本審査を受けます。本審査のタイミングとしては、管理会社選びと並行して行うイメージです。 

本審査では、主に物件の担保価値が十分であるかという点がチェックされます。また、団信付きのローンの場合、申込者本人がローンを完済できる健康状態にあるかという点も見られます。

仮審査の項で記載した書類のほか、売買契約書・登記簿謄本・実印・印鑑登録証明書などを準備しましょう。必要書類が多いので、なるべく事前に準備しておくことで手続きをスムーズに進められます。審査期間はケースによって異なりますが、通常、審査を申し込んでから2週間〜1ヶ月程度です。 

本審査が無事通れば、金融機関と金銭消費貸借契約を締結します。 

管理会社を選ぶ

不動産売買契約を締結して物件購入が決まったら、オーナーになった後の賃貸管理についても考えていかなければなりません。そこで、賃貸経営のパートナーとなる管理会社を選んでいきます。 

自主管理によるアパート経営も可能ですが、入居者とのやりとりや問題が生じた際の初動対応など、多岐にわたる管理業務を自分一人でやるのは非常に手間がかかります。 

安定した賃貸経営を行うためには、基本的に管理会社へ管理業務を委託するようにしましょう。管理会社は空室発生時の入居者探しも担ってくれるので、空室リスクを最小化する効果も期待できます。 

なお、中古アパートの場合には、前のオーナーが委託していた管理会社に引き続き委託するのが一般的です。もちろん、旧管理会社より良いと思える会社があるのであれば、変更は可能です。

物件の引渡し

アパートローンの金銭消費貸借契約を締結し、管理会社が決定すれば、いよいよ物件の引渡しとなります。売主・買主・不動産会社の担当者・そのほかの関係者が、融資する金融機関の店舗に集まって手続きするのが一般的です。 

引渡し時にアパートローンの融資が実行されます。口座に融資金額が振り込まれたら、売買代金の残金のほか、登記に関する費用・固定資産税などの諸費用を支払います。不動産仲介会社に依頼して物件探しを行った場合には、仲介手数料の支払いも必要です。 

一連の手続きが完了すると、鍵及び必要書類が売主から引き渡され、正式に買主が物件のオーナーとなるのです。

アパート経営を成功に導くポイント

先ほど紹介した5つのメリットを中心として魅力の多いアパート経営ですが、成功させるためにはいくつかのポイントを押さえておく必要があります。この後紹介する2点を意識することで、アパート経営を成功に導けるでしょう。 

リスクコントロールを意識する

アパート経営を成功に導くために押さえておくべき1つ目のポイントは、リスクコントロールを意識した賃貸経営を心がけるということです。 

個人の入居者が支払う家賃を収入の柱とするアパート経営には、特有のリスクが存在します。主要なリスクとして挙げられるのが次の4つです。

  1. 空室リスク 
  2. 家賃下落リスク 
  3. 家賃滞納リスク 
  4. 修繕リスク 

これらのリスクはアパート経営において不可避であるため、「いかに最小化するか」「発生した場合にどう対応するか」という視点が大切。リスクを把握して適切な対策が取れれば、コントロールすることは可能です。 

4つのリスクがどのようなものであり、どのような対策が有効なのか、順番に見ていきましょう。 

空室リスクとその対策

アパート経営における4つのリスクの中でも、特に気をつけなければならないのが空室リスクです。 

空室リスクとは、物件の貸室が空室となり、その部屋からの家賃収入を得られなくなってしまうリスクのこと。アパート一棟経営では、すべての部屋が空室にならない限り家賃収入がゼロという事態にはなりませんが、1室でも空室が出てしまうとキャッシュフローに影響が出てしまいます。 

賃貸経営をする以上、常に満室稼働というのは考えにくいのが現実です。空室をなるべく発生させないことと、発生した場合にできるだけ早期に入居者を見つけることが大切になります。 

空室リスクの対策としては、以下の点を意識するといいでしょう。 

  1. 駅や生活利便施設に近いなど利便性が高く、賃貸需要のある立地の物件を選ぶ 
  2. 時代の流れやニーズに合った設備・仕様を用意する 
  3. 入居付けに強く、入居者の顧客満足度を高められる管理ができる管理会社へ委託する

こうしてみると、物件選び・設備面・管理会社選びなど、あらゆる場面で空室リスク対策を意識する必要があると言えます。 

家賃下落リスクとその対策

基本的に建物は築年数が経過するほど価値が下がっていくものです。アパート経営においても、築年数を経れば家賃は下落していく傾向にあります。これにより家賃収入が低下していくリスクを、家賃低下リスクと呼びます。 

特に新築アパートの場合、入居付けを無理に行うと入居者が退去した後家賃が一気に下落するケースが見られます。一度入居者が退去すると、いわゆる「新築プレミアム」が効かなくなってしまうため、賃料を下げないと入居付けが難しくなるのです。 

家賃下落リスクへの対策としては、空室リスクと同様、利便性が高く賃貸需要のある立地の物件を選ぶというのが最大のポイント。将来性のあるエリアの物件であれば、築年数が経過しても入居希望者が多くいるため、賃料をそれほど下げることなく経営を続けられます。

家賃滞納リスクとその対策

家賃滞納リスクとは、入居者の中に家賃を滞納する人がいて、期待していた家賃収入を得られなくなるリスクのことです。一般的に2〜3%ほどの入居者が家賃を滞納すると言われており、アパート経営を長く続けていれば、滞納の影響を受ける可能性は高いと言えます。

アパート経営の根拠法となる借地借家法は借主を保護するための法律なので、通常3ヶ月以上の滞納実績がなければ立ち退きを要請できません。関係がこじれると、最悪の場合明渡し訴訟まで発展してしまい、滞納の開始から実に10ヶ月ほども部屋を使えない期間が生じてしまいます。

こうなれば10ヶ月分の家賃収入が得られなくなるだけでなく、訴訟や強制執行に多くの人的・金銭的コストがかかってしまうのです。

また、他の入居者に対して迷惑行為を行う入居者が入る「入居者信用リスク」もあります。家賃滞納リスクや入居者信用リスクへの対策として、しっかりと入居審査を行うことが大切。家賃保証会社の利用を入居者に義務付けて、滞納時にも家賃収入を得られるようにするというのも有効です。

一般論として、家賃設定が低い物件では家賃滞納リスク・入居者信用リスクが高まる傾向にあるため、物件のグレードや家賃設定のバランスも考慮するといいでしょう。

修繕リスクとその対策

修繕リスクとは、建物や設備の劣化・不具合・故障などにより、想定外の修繕費用や設備費用が発生するリスクのことを指します。 

当然ながら、物件は経年劣化によって修繕が必要となります。退去発生時の原状回復や定期修繕以外にも、突発的に不具合が発生するリスクは避けられません。また、物件の価値向上を目的にリノベーションを実施すれば、そのための費用も見込む必要があります。 

修繕リスクへの対策としてポイントとなるのが、日常的な建物管理をしっかり行うことです。さらに、突発的な修繕が必要となる事態も想定した修繕計画を立て、資金計画に組み込んでおくようにしましょう。 

信頼できる不動産投資会社・管理会社を味方につける

リスクコントロールと並んでアパート経営の成否を左右するのが、賃貸経営のパートナーとなる不動産投資会社や管理会社の存在です。アパート経営を成功に導くためには、信頼できる不動産投資会社・管理会社を味方につけることが欠かせません。 

競争力のある物件・適切な資金計画・しっかりとした賃貸管理という要素が揃うことで、安定したアパート経営が可能となります。各要素を信頼できるプロにサポートしてもらえば、成功する確率が高まると言えるでしょう。 

たとえプロであっても、自身の目指すアパート経営のスタイルに合うかどうかはわかりません。複数の不動産投資会社・管理会社に相談しながら、信頼できるパートナーを見つけていくのがおすすめです。 

パートナーが見つかったら、こまめな情報交換を続けるなどして信頼関係を構築し、味方でいてもらえるよう、常に意識しましょう。 

まとめ

不動産投資にはさまざまな種類がありますが、中でもアパート経営はミドルリスク・ミドルリターンの手法です。空室リスク・家賃滞納リスク・家賃下落リスク・修繕リスクをはじめとする各種リスクを、しっかりとコントロールできれば、着実に資産形成を実現できるでしょう。 

アパート経営を成功に導くためには、不動産投資会社や管理会社といった信頼できるパートナーとタッグを組み、二人三脚で運営していく姿勢が重要です。 

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監修者

藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO

昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
資産運用領域で日本No.1の会社を目指し日々経営にあたっている。

マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
書籍「収益性と節税を最大化させる不動産投資の成功法則」や「収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則」を発売中。

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