年収3,000万円からの賢明な節税方法 不動産投資で効率的に節税を! 

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「年収3,000万円」ともなれば一般的には富裕層とされ、憧れられる存在といえます。しかし、現実に年収3,000万円を達成された方にとっては税負担が想像以上に重く、思い描いていた余裕のある生活とはほど遠いと感じている方も多いのではないでしょうか。 

日本の所得税は累進課税制度となっているほか、各種の優遇制度に所得制限が設けられており、高所得者の税負担が重くなりやすい仕組みです。こうした税負担をどうにか軽減できないのでしょうか。 

この記事では、年収3,000万円の人が取り組みたい所得税の節税方法を紹介。中でも高い効果が期待できる、不動産投資による節税方法とシミュレーションについて詳しく解説します。 

年収3,000万円の人はどんな人か 

年収3,000万円というと一般的に高収入とされます。年収3,000万円の人はどういった職業で、日本にどれくらいいるのか見ていきましょう。 

年収3,000万円の人の職業

一般の会社員で年収3,000万円に達する事例は少なく、これだけの年収を稼ぐ人の職業は限られます。統計から年収3,000万円に達すると考えられる職業を2つ紹介します。 

経営者

1つ目の職業が「経営者」です。企業の規模によって経営者の報酬額にも違いが見られますが、一定規模以上の企業であれば経営者の年収は3,000万円を超えるケースが多いでしょう。 

「民間企業における役員報酬(給与)調査」(令和元年度)によれば、企業における肩書と報酬額の全規模平均は次のとおりです。 

会長 6,354万5,000円 
副会長 5,246万4,000円 
社長 4,622万1,000円 
副社長 3,923万6,000円 

また、全規模平均では専務も3,000万円を超えています。さらに従業員3,000人以上の大企業では常務・監査等委員・専任執行役員も年収3,000万円超となっており、大企業の役員レベルでも年収3,000万円に達する可能性があります。 

出典:人事院「民間企業における役員報酬(給与)調査」(令和元年度) 

医師

年収の高い職業の代表として医師が挙げられます。医師と一口にいっても、自らクリニックなどを経営する開業医(病院長)と勤務医(医師)では給与水準に大きな開きがあります。 

中央社会保険医療協議会の「第23回医療経済実態調査(医療機関等調査)」によると、一般診療所全体での給与年額と賞与を合わせた役職別給与は次のとおりです。 

院長 2,692万1,114円 
医師 1,068万5,590円 

この数字を見ればわかるとおり、大病院のトップや開業医の場合には年収3,000万円に達する人も多くいると考えられます。一方、勤務医に関しては年収1,000万円を超える程度で、3,000万円以上の年収がある人は少ないと見てよいでしょう。 

出典:中央社会保険医療協議会「第23回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告-令和3年実施-」 

年収3,000万円の人はどれくらいいるか

年収3,000万円以上の稼ぎを得ている人は、会社経営者や医師といった職業の人に多いことがわかりました。それでは、日本には年収3,000万円以上の人がどれくらいの割合でいるのでしょうか。国税庁が公表している「令和43年分 民間給与実態統計調査」をもとに実態を確認していきます。 

同調査によると、20221年時点の給与所得者数は全体で5,967万人です。年間を通して勤務した給与所得者に限った場合、男女計の平均給与は年間458万円、正社員(正職員)に限定しても523万円であり、3,000万円には遠くおよびません。このことからも年収3,000万円はかなりの高所得と考えられます。 

給与階級別で見ると年収400万円以下の人が半数以上を占めており、2,500万円を超えるのは17万人と全体のわずか0.3%に過ぎません。年収3,000万円以上となればさらに割合は少なくなります。それだけ年収3,000万円は日本の収入において高水準といえるでしょう。 

出典:国税庁 令和4年分 民間給与実態統計調査 

年収3,000万円の人は確定申告が必要

通常、給与所得者は源泉徴収方式により所得税は毎月の給与から天引きされます。納税額に過不足がある場合も勤務先が年末調整で処理するため、給与所得者が自ら手続きをする必要はありません。そのため副業や投資などで一定以上の収入があったり、住宅を取得して新たに住宅ローン控除を申請したりといった事情がない限り、給与所得者は確定申告が不要です。 

しかし、年収3,000万円の人は給与所得者であっても確定申告が必要になります。なぜなら、年間給与収入が2,000万円超の場合、勤務先で年末調整ができないからです。勤務先で発行された年末調整されていない源泉徴収票をベースに自分で確定申告しなければなりません。 

また、副業により20万円を超える収入がある人、2ヶ所以上から給与の支払を受けていて従たる給与が20万円を超える人なども確定申告が必要になります。 

年収3,000万円の所得税はどれくらいか

給与所得者のわずか0.3%以下に過ぎない年収3,000万円の高所得者ですが、所得の少ない人に比べて税負担が重くなります。年収は税金などを差し引く前の収入額であり、実際の手取り額は3,000万円を下回るものです。年収3,000万円の人が節税せずに原則どおりの税額を納める場合、どのようになるのか見ていきましょう。 

所得税は累進課税

日本では所得税と相続税に累進課税制度を取り入れており、収入が高くなるほど税負担が重くなる仕組みです。これは税金が「公平の原則」「中立の原則」「簡素の原則」の三原則を前提とするものとされているからです。とりわけ1つ目の「公平の原則」が深く関わっています。 

公平の原則の根底には、経済力が等しければ同じ負担をすべきという「水平的公平」と、経済力を持っている人に大きな負担を求める一方で経済力に乏しい人の負担を軽くする「垂直的公平」の2つの考え方があります。累進課税制度は「垂直的公平」を保つための重要な仕組みといえるでしょう。 

税金は全国民に関係する社会保障などの費用に充てるために徴収するもの。納税を通じた人と人との「支え合い」が日本の社会を成り立たせています。累進課税で高収入の人により大きな税負担を求めることで、所得や資産を社会に再分配するというのも税金の重要な役割なのです。 

年収3,000万円の所得税を計算すると

所得税は累進課税制度により高収入の人ほど負担が重くなります。年収3,000万円の人が原則どおり所得税を納める場合、どれくらいの税額になるのでしょうか。 

所得税額は年収に対してかかるのではなく、年収から各種控除を差し引いた課税所得が税額計算のベースになります。年収3,000万円であっても3,000万円に税率をかけるのではなく、そこから控除を差し引いた額に税率をかけたものが納税額となるのです。 

年収から差し引く控除としては給与所得控除・社会保険料控除・生命保険料控除などが挙げられます。給与所得控除は年収に応じて控除額が定められており、年収3,000万円の場合は上限額の195万円です。3,000万円から195万円を差し引いたうえで、社会保険料控除や生命保険料控除などの所得控除分を除いて課税所得を求めます。 

実際に計算すると年収3,000万円の給与所得者の課税所得は約2,640万円。課税所得が1,800万円以上4,000万円未満の場合の所得税率は40%、税額控除279万6,000円が適用されるため、年収3,000万円の給与所得者の所得税額は約780万円となります。 

出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」

出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」 

さらに住民税・復興特別所得税の納税も

納めるべき税金は所得税だけではありません。居住している自治体に支払う住民税、復興特別所得税も納める必要があります。住民税・復興特別所得税ともに所得税同様、課税所得をベースに税額を計算します。 

住民税は累進課税制度が採られておらず、所得額に関わらず税率は一律10%(うち市区町村民税6%、都道府県民税4%/政令指定都市を除く)です。これは住民税のうち「所得割」と呼ばれるもので、さらに均等割がプラスされます。均等割は所得金額に関係なく一律で課される税額で通常年額4,000円、2023年分までは自治体の防災費用確保を目的に5,000円に増額されています。 

復興特別所得税は、東日本大震災からの復興施策に関する財源確保を目的に2037年分まで設けられている税制度です。税額は所得税の2.1%となっています。 

年収3,000万円では住民税が約260万円、復興特別所得税が約16万円となり、所得税と合計で約1,000万円納めなければなりません。 

日本は年収が高いと不利になる制度が多い

所得税と相続税の累進課税制度以外にも、日本は年収が高くなるほど不利になる制度が多くあります。特に最近は国民間での格差が社会問題化しているため、高所得者の負担を重くする動きが続いています。この章では高所得者が不利になる制度の一例を紹介しましょう。 

給与所得控除が固定

所得税・住民税・復興特別所得税のベースとなる課税所得を計算するにあたっては、先ほど紹介したように給与所得控除が年収から差し引かれます。給与所得控除額は収入額に応じて、以下のとおり定められています。 

給与等の収入額 給与所得控除額 
162万5,000円以下 55万円 
162万5,000円超180万円以下 収入額×40%−10万円 
180万円超360万円以下 収入額×30%+8万円 
360万円超660万円以下 収入額×20%+44万円 
660万円超850万円以下 収入額×10%+110万円 
850万円超 195万円(上限額) 

出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」 

収入額が増えるほど控除割合が低下し、年収850万円を超えると195万円で固定されます。つまり、収入額が増えるほど相対的に税負担が重くなるということです。2019年分までの「収入額1,000万円超で上限額が220万円」から上限額が引き下げられ、高所得者に対する課税がいっそう厳しくなっています。 

住宅ローン控除が受けられない

年収3,000万円の人は住宅ローン控除が受けられない点も注意が必要です。住宅ローン控除の正式名称は住宅借入金等特別控除といい、個人の納税者が住宅ローンを利用して住宅を取得した場合、取得した年から一定期間所得税の控除が受けられる制度です。所得税から引ききれないときは、住民税からも控除される仕組みとなっており、大きな節税効果が期待できます。 

住宅ローン控除を受けるには、返済期間が10年以上の住宅ローンを利用すること、取得する住宅の床面積が原則50平方メートル以上であることなど、いくつかの要件を満たしていなければなりません。条件を満たしていれば新築住宅で最長13年間、中古住宅では10年間にわたり、毎年の住宅ローン残高の0.7%相当額が所得税から控除されます。 

しかし、住宅ローン控除には「合計所得金額が2,000万円以下」という所得要件が設けられており、年収3,000万円の人は対象外となってしまうのです。この点についても、2022年税制改正でそれまでの「合計所得金額3,000万円以下」から上限額が引き下げられており、高所得者に対する締め付けが強まっています。 

配偶者控除が受けられない 

年収3,000万円の人は配偶者控除も対象外です。配偶者控除とは、所得金額が一定以下(給与所得者の場合は103万円)の配偶者がいる納税義務者が受けられる所得控除のこと。控除の基準以上の所得がある配偶者がいる場合でも配偶者特別控除が受けられる可能性もあります。 

配偶者控除は配偶者側の収入だけでなく、控除を受ける納税義務者自身の収入にも要件があるため注意が必要です。配偶者控除の控除額は納税義務者本人の所得金額に応じて、以下のように定められています。 

納税義務者本人の合計所得金額 控除額(カッコ内は老人控除対象配偶者の場合) 
900万円以下 38万円(48万円) 
900万円超950万円以下 26万円(32万円) 
950万円超1,000万円以下 13万円(16万円) 
1,000万円超 なし 

出典:国税庁「No.1191 配偶者控除」

上の表のとおり、納税義務者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合、たとえ配偶者側の所得金額が要件を満たしていたとしても配偶者控除・配偶者特別控除は受けられません。 

児童手当が支給されない

2023年現在、年収3,000万円の人は児童手当も支給対象外です。児童手当とは、子育て支援として中学生以下の子どもがいる世帯に対し、児童一人あたり一定額の現金を給付する制度のことをいいます。児童手当の具体的な支給額は次のとおりです。 

子どもの年齢 児童手当の月額(一人あたり) 
3歳未満 一律1万5,000円 
3歳以上小学校修了まで 1万円(第3子以降は1万5,000円) ※第3子とは、高校卒業までの子どものうち3番目以降の子を指す 
中学生 一律1万円 

出典:内閣府「児童手当制度のご案内」 

児童手当には所得制限限度額と所得上限限度額が設けられており、所得額が所得制限限度額以上・所得制限上限額未満の場合、児童一人あたり月額一律5,000円に支給額を減額。所得上限限度額以上では支給されません。たとえば児童が2人・配偶者の年収が103万円以下の場合、所得制限限度額は960万円、所得上限限度額は1,200万円です。 

限度額は扶養親族等の人数(子どもの数、配偶者控除対象の配偶者の有無など)によって異なりますが、年収3,000万円では支給されません。 

ただし、岸田内閣が推進する「異次元の少子化対策」の一環として、2024年10月から所得制限が撤廃される予定となっています。

高校無償化が受けられない

高校無償化とは2010年に開始した「高等学校等就学支援金制度」と呼ばれる制度のことです。当制度では一定の在学要件と所得要件を満たしていれば学費に対する支援が受けられ、学費の安い公立高校であれば実質無償で通学できます。 

所得要件は「保護者等の課税所得額×6%−市町村民税の調整控除額」が30万4,200円未満となる世帯の生徒であること。高校生が1人の世帯の場合、夫婦共働きなら年収約1,030万円以下、夫婦のどちらかのみ働いているケースでは約910万円以下が対象となります。 

児童手当と同様、子どもや扶養控除対象者の人数によって所得基準が異なりますが、年収3,000万円の世帯は子どもの人数に関係なく対象外です。 

不動産投資はインパクトが大きい節税方法

ここまで見てきたように、年収3,000万円の人は税負担が重いわりに各種の優遇制度を受けられないという状況に置かれています。年収3,000万円の人にとって、節税(タックス・マネジメント)がいかに重要かということがわかります。 

節税方法にはさまざまなものがありますが、中でも不動産投資はインパクトが大きくおすすめです。続いて不動産投資が節税につながる理由を解説します。 

給与所得・事業所得との損益通算

不動産投資が大きな節税につながる1つ目の理由は、不動産所得を給与所得・事業所得と損益通算できるからです。 

損益通算とは、各種所得金額の計算時に発生する一定の損失について、ほかの各種所得の金額から控除したうえで総所得金額を計算できる制度のことです。ある種類の所得金額がマイナスになったとき、その分を所得金額から差し引いて総所得金額を圧縮できるので、所得税の節税につながります。 

不動産投資で発生する不動産所得は損益通算の対象とされており、給与所得や事業所得との損益通算が可能です。帳簿上の不動産所得が赤字であれば、損益通算により課税所得を圧縮することができ、結果的に所得税を節税できます。給与所得者が源泉徴収で所得税を先払いしているケースでは、確定申告することで過納税額が還付されます。 

減価償却の仕組み

2つ目の理由は減価償却ができるからです。 

1つ目の理由で「不動産所得が赤字であれば節税につながる」と紹介しましたが、本当に赤字経営だったとすると資産が減ってしまうことになり、不動産投資が成功しているとはいえません。重要なのは「帳簿上」の不動産所得を赤字にするという点です。「実際には黒字だが帳簿上は赤字」の状態を可能にするのが減価償却という会計の仕組みなのです。 

減価償却とは、減価償却資産額を規定の方法によって、必要経費(減価償却費)として複数年にわたって配分していく会計処理の方法をいいます。減価償却資産を取得した年に一括で経費計上するのではなく、複数年に分割した減価償却費として経費計上するのです。減価償却資産の中でも不動産の建物は金額が大きく、減価償却費も必然的に大きくなるため、高い節税効果が期待できます。 

減価償却はあくまでも会計上の処理であり、実際に支払いが発生するのは取得する年のみ。それ以降の年は減価償却費を計上して帳簿上は赤字としつつ、キャッシュフロー上は黒字経営という状態を作れるというスキームです。 

これにより不動産経営でしっかりと収益を上げながら、損益通算で節税もできるようになるのです。 

好条件で融資を利用できる

3つ目の理由が、高収入だと好条件で融資を利用できるからです。 

不動産投資では、物件取得に大きな費用がかかることから金融機関による融資を活用することが一般的です。融資を活用することでレバレッジ効果が働き、高い収益性を実現できます。レバレッジ効果とは少ない資金でより大きな収益を得られる効果のこと。不動産投資は自己資金と融資を併用するため、自己資金以上の投資効果が期待できるというわけです。 

年収3,000万円ともなれば金融機関の属性評価が高くなるので、好条件で融資を受けられます。低金利かつ長い融資機関で借り入れられれば、より投資効果の高い物件に投資できるのです。 

また前節でも述べたように、現実にキャッシュアウトすることなく減価償却費を計上することで節税できるのですが、節税の側面においても投下した現金以上のレバレッジ効果を上げることができるのです。

不動産投資による節税のポイント

不動産投資に取り組めば大きな節税につながる可能性があります。節税目的で不動産投資を行う場合、次に挙げるポイントを意識するとよいでしょう。 

個人(個人事業主)として行う

先ほどから紹介している不動産投資の節税方法は、減価償却で帳簿上の不動産所得を赤字にして損益通算することで、源泉徴収されている所得税の還付を受けるというものです。そのため、必ず個人(個人事業主)として不動産投資を行うようにしましょう。年収3,000万円の人であればインパクトのある節税が期待できます。 

ちなみに、不動産投資を活用した節税方法として、個人が保有する資産を管理するために資産管理会社を設立するやり方もあります。法人化した場合に課税される法人税は実効税率で20〜30%台。所得税と違って累進課税制度が採られていないので節税につながるのですが、個人の給与所得とは損益通算ができません。 

節税目的で不動産投資に取り組むなら、不動産所得が赤字になる初期段階は個人事業主として賃貸経営を実施して、本業で納税した税金の還付を目指します。賃貸経営が軌道に乗り、事業規模が大きくなった際には、資産管理会社を設立して法人化する流れがおすすめです。 

法定耐用年数が終了した物件を取得

減価償却による節税効果を最大化するには、法定耐用年数が終了した物件を取得するとよいでしょう。 

法定耐用年数は、減価償却資産の価値を公平に評価するため、資産の種類や構造・用途ごとに国が定めている年数です。木造住宅であれば22年、鉄骨造であれば骨格材の肉厚に応じて19・27・34年のいずれか、鉄筋コンクリート造の集合住宅であれば47年となっています。 

新築物件の場合、減価償却期間は法定耐用年数となります。新築の木造アパートを取得したケースだと、取得にかかった費用を22年かけて減価償却することになるでしょう。これでは物件取得費用がどれだけ大きかったとしても、課税所得の圧縮効果は小さくなってしまいます。 

一方、法定耐用年数以上の築年数が経っている中古物件の場合、減価償却期間は法定耐用年数の20%と決まっています。たとえば、築22年を超える木造アパートの減価償却期間は4年です。法定耐用年数以上の中古物件では、建物部分の取得にかかった費用の1/4を減価償却費として単年度で経費計上できることになり、新築物件よりも大きな節税につながります。 

建物部分の価値が大きい物件を狙う

法定耐用年数以上の中古物件だと減価償却による節税効果を最大化できると説明しましたが、減価償却ができるのは建物部分にかかる費用のみです。取得費用の高い物件であっても、建物部分の価値が小さければ減価償却費はそれほど計上できません。よって、節税目的で不動産投資を始めるときは、建物部分の価値が大きな物件を狙うのがおすすめです。 

一般的な不動産売買契約書には物件代金が記載されるのみで、土地・建物それぞれの金額は明記されません。合理的な範囲内で建物割合を高めることができるかもしれませんので、売主と交渉してみるのも有効でしょう。 

売主との交渉の結果、建物割合を高めに設定してもらえたら、土地・建物それぞれの代金も売買契約書に明記しておきます。金額を記載することで、売主と買主が双方合意のうえ決定した割合であるという証明になります。 

売却時は長期譲渡所得になるように

不動産投資の出口は基本的に物件売却です。物件の売却益を得ることでトータルの損益が確定します。このとき気を付けなければならないのが、物件の売却益に対しても譲渡所得税が課税されることです。譲渡所得税をなるべく小さくすれば、最終的により多くの利益を手元に残せます。 

譲渡所得税は不動産売却時に課される所得税・住民税などの総称で、売却する不動産の所有期間によって税率が異なります。売却した年の1月1日における所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」に該当し、税率は合計で39.63%。所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」となり、税率20.315%が適用されます。所有期間5年を境に税率が約半分になるので、5年以上所有してから売却を検討しましょう。 

ここでポイントになるのが、課税対象となる譲渡所得は「売却金額から土地・建物の簿価などを差し引いた金額」で計算されるということ。減価償却の効果が大きいほど、売却時の簿価は小さくなるため、最終的に譲渡所得が大きくなり譲渡所得税が重くなってしまいます。減価償却による節税は「税の繰延べ」という性格を持ちます。 

しかし、減価償却がなければ、年収3,000万円では所得税・住民税・復興特別所得税で合計50.84%が不動産所得に課税されます。減価償却することで減価償却費×50.84%の節税につながり、長期譲渡所得なら売却益に対して20.315%の課税で済みます。 

税制上は繰延べとなりますが、本業の収入にかかる所得税と物件の譲渡所得税(長期譲渡所得)の税率の差分が節税につながる仕組みです。 

不動産投資による節税のシミュレーション

ここまで解説してきた内容を踏まえ、実際に不動産投資をするとどれくらい節税になるのかシミュレーションしてみましょう。ここでは計算を簡単にするため、融資を用いずに現金で物件を購入するものとします。 

想定 

節税効果をシミュレーションするにあたり、投資する物件の条件を次のように想定します。 

築年数・建物構造 築25年・軽量鉄骨造木造 
減価償却期間 54年 
物件価格 7,000万円 
(うち土地価格) 2,100万円 
(うち建物価格) 4,900万円 
諸費用 400万円 (按分に応じて物件価格に諸費用を足すと土地2,21200万円、建物5,180280万円) 
年間満室想定賃料 600万円 
純営業収益(NOI)NOI 420万円 
表面利回り 8.57% 
利回り(FCR 5.67% 

上記より、諸費用按分も含めた土地費用は2,220万円、建物費用は5,180万円となります。この条件で物件を取得・運用した場合、単年および売却後にどれくらい節税できるのか試算してみましょう。 

単年の試算 

まずは単年における節税効果をシミュレーションします。所得税額を計算するため、上記条件をもとに不動産所得を求めましょう。 

表中の純営業収益NOI(Net Operating Income)とは、満室時の年間満室想定賃料から、空室による損失・運営にかかるランニングコスト・保有中の修繕コストといった各種費用を差し引いた純営業収益のことをいいます。この事例では年間満室想定賃料が600万円、純営業収益が420万円です。 

純営業収益から単年の減価償却費を差し引いたものが不動産投資による課税所得です。実際に計算すると次のようになります。 

建物費用5,180万円 ÷ 減価償却期間5年 = 1,036万円 … 単年の減価償却費 

NOI 420万円 – 減価償却費1,036万円 = −616万円 … 不動産所得の課税所得 

これを給与所得3,000万円と損益通算することで、合計の課税所得および所得税額が計算可能です。 

給与所得の課税所得2,640万円の所得税等 ≒ 1,056万円 … 不動産投資前の税額

給与所得の課税所得2,640万円 – 不動産所得の課税所得分616万円 = 2,024万円  … 課税所得 

損益通算後の課税所得2,024万円の所得税等  ≒ 750万円 … 不動産投資後の税額 

1,056万円 – 750万円 = 306万円 … 節税額 

先ほどの条件で不動産投資を行った場合、確定申告により約306万円の税金還付を受けられることになります。 

5年後売却後の試算 

続いては、譲渡所得税が長期譲渡所得扱いになる5年間の所有期間を経て売却した場合、トータルでどれくらい手元に残るのか見ていきましょう。 

5年間毎年306万円の還付を受けられるので、5年間の節税額は次のとおり計算できます。 

単年の税金還付額306万円 × 5年間 = 1,530万円 

長期譲渡所得扱いになる5年後、取得価格から10%ダウンの6,300万円で物件を売却したとします。仲介手数料などの譲渡費用として250万円かかったとすると、課税対象の譲渡所得は以下のとおりです。 

売却価格6,300万円 −( 取得費用7,400万円 – 減価償却費・建物分5,180万円 )+ 譲渡費用250万円 

=4,330万円 ・・・譲渡所得 

ここに長期譲渡所得の税率20.315%をかけ合わせると、約879.6万円が譲渡所得税の納税額となります。 

純営業収益(NOI)は420万円なので、5年分の家賃収入は2,100万円。ここに5年間の節税分1,530万円を加えた3,630万円がプラス分です。 

一方、以下の金額がマイナス分です。 

物件取得費用と売却費用の差額(キャピタルロス):700万円 

譲渡所得税:879.6万円 

プラス分からマイナス分を差し引くと、最終的に手残りは2,050.4万円となります。このように不動産投資は、家賃収入だけでなく節税効果も大きなインパクトであることがわかります。

まとめ 

年収3,000万円の人は一般的に高所得とされ、累進課税の所得税の負担が重いと感じていることでしょう。税金は「所得の再分配」が重要な役割の一つであるため、経済力のある人の負担が重くなるのは仕方ない部分がありつつ、高所得の人にとっては不公平感があるのも事実。だからこそ収入の多い人は積極的に節税を検討すべきなのです。 

年収3,000万円の人が税負担を軽くする方法としては、不動産投資を活用した節税をおすすめします。減価償却と損益通算の仕組みにより、所得が高い人ほど大きな節税効果が期待できるでしょう。 

効果的な節税方法を探している人は、ぜひ税理士や信頼できる不動産会社と相談しながら、不動産投資に取り組んでみましょう。 

監修者

藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO

昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
資産運用領域で日本No.1の会社を目指し日々経営にあたっている。

マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
書籍「収益性と節税を最大化させる不動産投資の成功法則」や「収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則」を発売中。

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