アパート経営を行う上で、所有する建物の修繕は欠かせないものになります。
修繕費は通常なら経費に計上できますが、内容によっては税務上で経費計上ができない場合もあります。
今回のコラムでは、アパート経営において経費となる「修繕費」と経費にならない「資本的支出」の違いについて解説します。
目次
アパート経営における修繕の必要性について
入居者視点で考えると、快適な住環境(暮らしやすさや利便性、快適さなど)を望む人が大多数になります。
アパート経営において空室リスクを下げるためにも、今の入居者に長く住んでもらえる環境を整えて、新しい入居者にも選んでもらえる環境にすることが大切です。
もしこまめな修繕を怠ると、次のようなリスクがあります。
- 空室時に選んでもらいにくくなり家賃を下げる必要が出てくる
- 入居者が退去する頻度が増えて原状回復費用の負担が増加する
- 空室が長期化することによって家賃収入が減る
このような悪循環に陥るケースも珍しくありません。
また、修繕を怠ることで入居者や近隣の住民や通行人に怪我をさせてしまう可能性もあり、その場合は損害賠償責任を負ってしまいます。
これらのことから、アパート経営においてこまめに修繕を行うことは、不動産投資で失敗しないためには必要不可欠なことだと言えます。
アパート経営における修繕費(経費)と資本的支出(資産)の具体例
冒頭でもお伝えした通り、アパート経営において修繕費は通常なら経費になりますが、内容によっては税務上で経費計上ができない場合があります。
通常の維持管理や原状回復のために要したものは「修繕費」として経費計上が認められます。
ですが、修理や改良などが固定資産の耐久性の延長や価値を増加させるものである場合は、修繕費とはならず、「資本的支出」となります。
「資本的支出」に該当した場合は資産に計上することで減価償却の対象になりますので、修繕した資産の耐用年数に応じて数年かけて償却(経費に)します。
修繕費(経費)と資本的支出(資産)について、どういったものがそれぞれに該当するのか具体的例を挙げます。
修繕費(経費)の具体例
アパート経営において、所有する物件が老朽化した場合や退去が発生したあとの原状回復など、物件の状態維持や元の状態に戻すために必要なものが修繕費(経費)の対象となります。
- 退去による壁紙の張替え
- 壊れたキッチンの修理
- 10年前後での定期的な外壁の塗装など
- 畳の表替え
資本的支出(資産)の具体例
対して資本的支出は、改良して耐久性を高めるなど、物件の価値を高めるための支出が対象となります。
- 用途変更を目的とした模様替え
- システムキッチンへのリフォーム
- 機能を上げる外壁塗装など
- 2DKの間取りを1LDKへの改装
アパート経営における修繕費(経費)と資本的支出(資産)を判断するポイント
アパート経営において修繕費(経費)となるのか、それとも資本的支出(資産)になるのか、明確に区分されていない点も多く、実務上どちらにするべきかの判断が難しいケースも多々あります。
判断が難しい場合は、以下4つの判断基準があります。
詳しくは国税庁HPを参考にしてください。
判断基準①少額もしくは周期の短い費用の経費算入
一つの修理や改修のために支出した金額が次のいずれかに該当すれば、修繕費として経費計上することができます。
- 修理や改良などの金額が20万円未満の場合
- 概ね3年以内の期間を周期として行われることが過去の実績やその他の事情からみて明らかな場合
判断基準②形式基準による修繕費の判定
一つの修理や改修のために支出した金額が修繕費か資本的支出かが明らかでない場合、次のいずれかに該当するものを修繕費として経費計上できます。
- 出した金額が60万円未満の場合
- 支出した金額がその固定資産の前事業年度末における取得価額の概ね10%相当額以下である場合
判断基準③修繕費と資本的支出の区分の特例
修繕費か資本的支出かが明らかでない場合、その支出金額のうち、次のいずれか少ない金額を修繕費として経費計上し、残りの金額を資本的支出とすることができます。
- 支出した金額の30%相当額
- その固定資産の前事業年度末における取得価額の10%相当額
ただし、この特例は毎期継続適用しなければなりません。
判断基準④災害時の特例
災害により被害を受けた固定資産(以下、被災資産)について支出した金額は、次に該当する場合に修繕費として経費計上することができます。
①被災資産につきその原状を回復するために支出した金額
②被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止などのために支出した金額を法人が修繕費とする経理を行っている場合
③被災資産について支出した金額(上記①②の金額を除く)のうち、修繕費であるか資本的支出であるかが明らかでないものがあるときは、その金額の30%相当額。ただし、残額については、資本的支出として処理することになります。
日本は自然災害の多い国でもあり、日常的に災害リスクは潜んでいます。
損害保険も対策の1つですが、上記も予備知識としては有益なものとなります。
アパート経営における修繕費(経費)と資本的支出(資産)についてのまとめ
アパート経営において、収益不動産の修繕には日常的に発生する少額のものから大規模なものまで様々あり、日頃から修繕に対して備えておかなければなりません。
特に融資を前提としたアパート経営を継続していく場合には、しっかりとした修繕計画を立て将来の収支をシミュレーションすることが重要です。
また、タックスプランニングを行うにあたっても修繕計画は非常に大切な要素の1つですので、ご自身の現状と方向性も照らし合わせ考えるようにしてください。
これらを踏まえ、税引後キャッシュフローの最大化を実現しましょう。
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監修者
藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO
昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
資産運用領域で日本No.1の会社を目指し日々経営にあたっている。
マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
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