収益不動産を個人で所有した際の不動産所得は、不動産貸付けが事業として行われているかどうかにより様々なメリットを受けられることをご存知でしょうか。
今回は、不動産所得の事業的規模について解説します。
事業的規模になっているかどうかについては、「原則として社会通念上事業と称するにいたる程度の規模で行われているかどうか」によって、実質的に判断されます。
「不動産所得の事業的規模」については、メリットだけでなくデメリットもありますので、今回解説する内容を正しく理解して上で、行うようにしてください。
事業的規模として認められる不動産投資の進め方が分からないという方は、無料で利用できるプライベート相談でご相談ください。
目次
不動産所得が事業的規模になるかどうかの判断基準
不動産所得が事業的規模として認められるには、以下のいずれかに該当する必要があります。
・貸間、アパート等の場合の判断基準
貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること
・独立家屋の貸付けの場合の判断基準
収益物件がおおむね5棟以上であること
明確な基準はありませんが、駐車場の場合は5台で1室と計算されます。
上記を言い換えると、以下はすべて同じ関係ということになります。
戸建て(一棟物件)×1棟=アパート(マンション)×2室=駐車場×10台分
事業的規模として認められるかの判断基準について、分かりづらい点がありますのでもう少し補足しておきます。
収益不動産を組み合わせても事業的規模として認められる
所有不動産に一棟や区分が混在していても適用が可能です。
「戸建て×3棟」+「アパート×4室」→判定〇
「戸建て×3棟」+「アパート×2室」+「駐車場10台分」→判定〇
「アパート×7室」+「駐車場10台分」→判定×
収益不動産を共同名義で所有している場合でも保有物件全体で事業的規模か判断される
共有名義で保有の物件でも、持ち分での判断ではなく物件全体の室数で事業的規模かどうか判断されます。
そのため、共有者それぞれが10室以上の事業的規模として認められる可能性があります。
不動産所得が事業的規模として認められる4つのメリット
事業的規模として不動産投資を行う場合、メリットは4つあります。
- 家族への給与を経費にすることが可能
- 青色申告特別控除65万円の利用が可能
- 取り壊しなどによる損失を全額経費に計上可能
- 回収不能な賃料を経費に算入することが可能
一つずつ解説していきます。
①家族への給与を経費にすることが可能 ※事業専従者給与
事業的規模であれば、以下の条件を満たした場合に白色申告で50万円(配偶者は86万円)、青色申告であれば届け出た範囲内で相当な金額であれば経費にすることが可能です。
- 15歳以上
- 生計が同一であること
- 6か月以上専従者として従事すること
- 事業主の仕事にもっぱら重視していること(他の職業についていないこと)
②青色申告特別控除65万円の利用が可能
正規の簿記の原則による記帳をおこなうなどの一定の要件を満たすことにより家賃収入から経費を差し引いた不動産所得から65万円を差し引くことができます。
※「事業的規模」でない場合でも、10万円控除の適用は可能
③取り壊しなどによる損失を全額経費に計上可能
火災や地震で建物に被害が発生した場合、その全額を経費として計上が可能。
当該年度の所得から引ききれない場合には、3年間の繰り越しが可能です。
※事業規模ではない場合、損失の計上はその年の不動産所得の金額が限度となり、損失の繰り延べをすることができません。
④回収不能な賃料を経費に算入することが可能
賃貸料などの回収不能による貸倒損失については、回収不能となった年分の経費に計上が可能です。
事業的規模でない場合、収入に計上した年分までさかのぼって、その回収不能に対応する所得がなかったものとして、所得金額の計算をやり直します。
不動産所得が事業的規模として認められる3つのデメリット
事業的規模として不動産投資を行う場合、デメリットが3つあります。
- 事業税が掛かる
- 帳簿の作成が必要になる
- 配偶者控除や扶養控除が受けられなくなる
一つずつ解説していきます。
①事業税が掛かる
事業的規模の不動産投資を行う場合は、各都道府県が課税する事業税の対象となります。
65万円の青色申告特別控除額を差し引く前の所得から290万円の事業主控除を差し引いた残額の5%が課税されます。
なお、事業税の課税対象となる不動産投資の規模は各都道府県で異なるので、「5棟10室基準」に準拠するのではなく注意が必要です。
②帳簿の作成が必要になる
65万円の青色申告特別控除を受けるためには、複式簿記での記帳を行ったうえで、貸借対照表と損益計算書を作成する必要です。
また、作成した帳簿は原則として7年間保管する義務が発生します。
③配偶者控除や扶養控除が受けられなくなる
家族に事業専従者給与を支払うと、配偶者控除や扶養控除は受けられなくなります。
利用する際には、支払う給与が配偶者控除や扶養控除を上回る額の支払いが前提で利用しましょう。
不動産所得の事業的規模についてのまとめ
不動産所得を事業的規模として認められる場合、メリットだけでなくデメリットもありますので、正しく理解した上で行う必要があります。
事業的規模として認められる5棟10室の基準に関しては、「おおむね」と書いてありますので、多少は前後の範囲があります。
賃料収入によっては相談が出来る可能性もありますので、判断が難しい場合は税務署で相談してみてください。
また、事業的規模になっても手続きをしなければ、事業的規模のメリットは受けられません。
不動産所得を事業的規模で行うには、青色申告申請書を税務署に提出する必要があります。
賃貸経営をする上では、家賃収入や運営費用だけでなく様々な税制を理解し、税金をコントロールすることも大切です。
そうすることで、保有期間中の手残り(税引後キャッシュフロー)を最大化することができます。
個人で収益物件を保有する場合、5棟10室の事業的規模を目標にして不動産投資を進めてみてはいかがでしょうか。
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監修者
藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO
昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
資産運用領域で日本No.1の会社を目指し日々経営にあたっている。
マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
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