中小企業を取り巻く経営環境は年々厳しさを増していますが、会社をしっかりと存続させ、大切な家族や社員を守っていくためには、本業以外にも安定的な収益源を確保しておくことが有効な対策だと言えます。
収益不動産は、中小企業において本業以外の安定的な収益源となる非常に頼もしいツールです。
今回は中小企業において収益不動産を活用すること、つまり不動産投資で本業以外の安定収入源を確保するにはどうすればよいのか、具体的なシミュレーションも入れながら解説いたします。
目次
法人企業が収益不動産の活用により安定収益源の確保する
まず法人企業が安定収益源の確保を目的として収益不動産を取得する場合、どのような手順で物件を選べば良いのかについて解説します。
当社では、3つのステップを踏んで選ぶことをおすすめしています。
1. 「どういう状態が理想か?」を考える
2. 理想を具体的な数値に落とし込むと、いくらぐらいのキャッシュフローが必要になるのを計算する
3. 理想のキャッシュフローを実現するために、どれくらいの自己資本が投下可能なのかを考える
「どういう状態が理想か?」
会社の置かれている状況や経営者の考え方によって答えは異なってくるはずです。
たとえば売上はそれなりに上げているのに利益がまったく残らないのであれば、「固定費をまかなうために収益不動産を保有する」ことが理想になるかもしれません。
あるいは、「いまの売り上げが長く続くとは限らないので、本業以外にも安定収益源を確保しておきたい」といったように、将来を見据えた理想を掲げるオーナー経営者もおられます。
いずれにしても、「何のために安定収益源を確保するのか?」という目的を明確にすることが、投資を始める上での第一歩です。
「いくらぐらいのキャッシュフローが必要になるのか?」
経営者の考える理想を実現するためには、いくらぐらいのキャッシュフローが必要になるのかを具体的な数値で落とし込んでみましょう。
仮に「収益不動産で得られる家賃収入で固定費をまかないたい」というのであれば、実際に月々出ていっている固定費がいくらぐらいなのかを計算します。
こうすれば、その金額を補えるだけの家賃を稼げる物件を選ばなければならない、という明確な目標が定まります。
実際には、家賃収入から諸経費や税、ローンを設定して物件を取得した場合は月々の返済を差し引いた「手残り」で固定費を賄えるかどうかが重要となります。
「将来に備えて、本業以外にも安定収益源を確保しておきたい」というのであれば、これまで売上がどれだけ減ってきていて、将来どこまで減りそうなのか、といったことをシミュレーションし、それを補うにはどれくらいのキャッシュフローを確保しておいたらいいのかを計算してみましょう。
「どれくらいの自己資本が投下可能なのか?」
これらの目標が定まったところで、収益不動産を取得するために投下できる自己資金が会社にどれくらいあるのかを確認します。
実際には自己資金のみでキャッシュフロー目標を達成できることは少なく、多くは金融機関から借り入れを起こす必要があります。
不動産投資のメリットは、借り入れをすることでレバレッジを効かせ、自己資金以上の物件を取得することで投資パフォーマンスを高めることが出来ることです。
中小企業が収益不動産を活用する場合の具体的なシミュレーション
具体的なシミュレーション例をひとつ紹介します。
いくらの収益物件を取得する必要があるかを計算する
ある中小企業のオーナー経営者が、経営を安定させるために本業とは別に年間2,000万円のキャッシュフローを確保したいと考えました。
投下可能な自己資金は5,000万円程度です。
仮に投資物件のFCR(総収益率)を5.5%、イールドギャップ(FCRからローン定数Kを引いた値)を1.5%、投資全体に占める自己資金を10%とすると、目標投資総額(X)は以下のようになります。
✓FCR(総収益率)について
コラム「不動産投資の「投資指標」とは?」
✓イールドギャップ(FCRからローン定数Kを引いた値)について
コラム「正しい『イールドギャップ』とは何ですか?①」
X×10%×5.5%+X×90%×1.5%=2,000万円
(自己資金からのCF+借り入れからのCF)
X ≒11億円
この計算によって、年間2,000万円のキャッシュフローを得るには、総額で約11億円の収益物件を取得する必要があることが分かります。
収益物件を段階的に複数取得する
11億円もの資金を使って収益物件を取得する場合、リスク分散の関点から複数物件に分けるほうが良いです。
この会社の自己資金は5,000万円なので、90%を借り入れられるとしても、当面投資できるのは5億円までとなります。
最終的には11億円分を投資するとして、手始めに2億~3億円程度の複数の物件を、段階的に取得していくことにしました。
1棟目の収益物件で得られるキャッシュフロー
最初の物件は次のような条件で取得しました。
1棟目:鉄筋コンクリート(RC造) 築20年
物件価格 2億8,000万円
購入諸費用 2,000万円
総投資額 3億円
満室想定家賃 2,250万円 表面利回り 8.03%
空室損・滞納損 115万円
運営費 450万円
NOI 1,685万円 FCR 5.61%
【融資条件】
地方銀行からの借り入れ
借入金額:2億7,500万円 (自己資金:2,500万円)
金利:1.0%
返済期間:27年
元利均等返済
年間返済額:1,163万円
(ローン定数K:4.22%、イールドギャップYG:1.39%)
この条件で導き出される税引前キャッシュフローは次のとおりです。
税引前キャッシュフロー=NOI:1685万円−年間返済額:1163万円=522万円
この物件では自己資金5,000万円のうち2,500万円を投下し、物件価格の9割強に当たる2億7,500万円を借り入れることで、年間500万円を超えるキャッシュフローを得ることができました。
2棟目以降の収益物件は取得する方法
このオーナー経営者が目指している年間キャッシュフローは2,000万円ですから、同じような物件を4棟取得すれば、目標を達成することができます。
ただし自己資金5,000万円に対しすでに2,500万円を投下しているので現状ではもう1棟しか買えません。
では、どのように目標を達成すればよいのでしょうか。
もう1棟取得して年間キャッシュフローを1,000万円にすれば、2~3年で3棟目を購入できる資金を収益不動産からのキャッシュフローで作ることができます。
本業の業績が好調であれば、それを自己資金に足して取得のスピードを早めることを検討することも可能です。
いまは業績が好調でも5年後、10年後など、中長期的に持続できるかは分かりませんので、買えるだけの余裕があるうちに買っておいて、将来に備えておくのもひとつの方法だと思います。
まとめ
今回は、中小企業が収益不動産を活用する3つのメリット①収益の安定化、②税金対策、③自社株を含む相続・贈与対策のうち、①収益の安定化について解説しました。
収益を安定させるには、収益不動産を取得する前に理想を叶えるために必要なキャッシュフローと投資できる自己資金を元に、いくらの収益物件を取得すれば良いのかについて算出することが必要になります。
算出する方法については、掲載した具体的なシミュレーションを参考にしていただければと思います。
中小企業において収益不動産を活用するメリットの概要について知りたい方は、こちらのコラム「収益不動産を活用すれば収益を上げながら税金対策もできる?」をご覧ください。
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監修者
藤原 正明/大和財託株式会社 代表取締役CEO
昭和55年生、岩手県出身、岩手大学工学部卒。
三井不動産レジデンシャル株式会社で分譲マンション開発に携わり、その後不動産会社で収益不動産の売買・管理の実務経験を積む。
2013年に大和財託株式会社を設立。収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を関東・関西で展開。
中小企業経営者、土地オーナー、開業医・勤務医、高年収会社員などに対して多様な資産運用サービスを提供している。
自社設計施工により高品質ローコストを実現している新築1棟アパート・マンション、中古物件のリスクを排除した中古1棟リノベーション物件、デジタルテクノロジーを活用した不動産小口化・証券化商品、利益最大化を実現する賃貸管理サービスなどを、顧客のニーズに合わせて組み合わせて提案できることが強みである。
資産運用領域で日本No.1の会社を目指し日々経営にあたっている。
マッスル社長としてYouTubeでも活躍中。
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