中古マンションの購入には、資金計画から物件選び、引き渡しまでさまざまな注意点があります。各段階の注意点を押さえておくことで、安全な資金計画の立案や、満足度の高い物件選びが可能です。本記事では、中古マンション購入における資金計画や物件選び、契約・物件の引き渡し時の注意点や、物件選びで見るべきポイントを解説します。中古マンション購入の全体像を把握し、安全に手続きを進めるために重要な内容なので、ぜひお役立てください。
目次
中古マンションの購入|資金計画の注意点
中古マンションの購入には、綿密な資金計画を立てる必要があります。そのために大切な行動は以下の通りです。
- 年収を元に適正な購入費用を考える
- 純資産額を確認する
- キャッシュフロー計画を立てる
- 諸費用・初期費用を把握する
- 購入後の維持費を確認する
- 市場価格と購入価格をチェックする
- 中古マンションの購入時期を検討する
- リセールバリューを確認する
- 転職は住宅ローンを契約した後にする
各項目の重要性や具体的な方法を解説します。
年収を元に適正な購入費用を考える
中古マンションを購入する際は、自分の年収を基に適切な購入費用を算出することが大切です。借り入れができるからといって、生活に支障が出るような高額な物件を購入するとリスクが高くなります。
購入費用を算出するには、「年収倍率」という指標を活用します。これは、購入価格が世帯年収の何倍になるかを表すものであり、銀行でも審査基準の1つとして使われている指標です。リスクを抑えながら中古マンションを購入できる年収倍率は、一般的に6倍以内といわれています。例えば、年収600万円の場合、購入費用は3,600万円以内です。この倍率内に借入金額を抑えることで、余裕をもった資金計画を立てることができます。
以下は、年収倍率を6倍に設定した際の、世帯年収ごとの購入費用の目安です。
世帯年収 | 購入費用の目安 |
400万円 | 2,400万円 |
500万円 | 3,000万円 |
600万円 | 3,600万円 |
700万円 | 4,200万円 |
800万円 | 4,800万円 |
なお、上記は世帯年収のため、夫婦の収入を合算した金額で計算しても構いません。また、貯蓄や親族の援助などで頭金を用意できる場合、借入金額の上限をあげることも可能です。
純資産額を確認する
中古マンションの購入を考える際、純資産額を把握しておく必要があります。なぜなら、負債を考慮せずに資産だけで購入費用を検討すると、借入可能額が思ったより少なくなってしまうケースがあるからです。純資産額とは、貯蓄や不動産などの資産から借入れなどの負債を差し引いた金額のことを指します。
例えば、1,000万円の貯蓄があり、300万円の自動車ローンを組んでいる場合、純資産額は700万円になります。このように、自分の資産と負債をきちんと洗い出したうえで純資産額を認識することが、適切な資金計画を立てる上で非常に重要です。
キャッシュフロー計画を立てる
キャッシュフローとは、収入と支出の流れを指す言葉です。中古マンション購入の資金計画を考える上で、キャッシュフロー計画の立案は欠かせません。なぜなら、具体的な生活費やライフイベントに必要な費用を加味した上で、資金計画を立てる必要があるからです。
例えば、結婚や出産、子どもの教育などのライフイベントで必要となる資金や、毎月の固定費、変動費を具体的に見積もることで、中古マンションの購入後も安定した生活を送ることができます。また、急な出費が生じた際のリスクを低減することもできるでしょう。
このように、キャッシュフロー計画を立てることで、将来のライフプランに合わせた資金計画を具体的に検討することができます。
諸費用・初期費用を把握する
中古マンションの購入で適切な資金計画を立てるには、必要となる諸費用・初期費用を把握しておかなければなりません。以下は、中古マンションを購入する際の主な費用項目と内容、金額の目安をまとめた表です。
費用項目 | 内容 | 費用の目安 |
頭金 | 購入時に物件価格の一部を支払う | 購入価格の1〜2割程度 |
印紙税 | 不動産売買契約書に課せられる国税 | 例 ・500万〜1,000万円以下:5,000円 ・1,000万〜5,000万円以下:1万円 ・5,000万〜1億円:3万円 ※令和6年3月31日までに作成された軽減税率の対象となる契約 |
仲介手数料 | 不動産会社に支払う手数料。宅地建物取引業法により上限が定められている | ・取引価格400万円超の場合 取引価格✕3%+6万円+消費税 |
融資事務手数料 | 住宅ローンを組む金融機関に支払う手数料。 | 金額は金融機関により異なる。借入額✕1〜2%程度が目安 |
登記費用 | 所有権移転や抵当権の設定に必要な国税+司法書士への代行手数料 | 所有権移転 ・建物:不動産価格✕2.0% ・土地:不動産価格✕1.5% (令和8年3月31日まで) 司法書士への手数料 ・3〜10万円程度 |
申込証拠金 | 購入の意思を示し、物件を一時的に押さえるために支払う費用 | 1〜10万円程度 |
手付金 | 契約の証明として支払う費用。法的拘束力があり、買主が契約を解除したい場合は手付金を放棄する必要がある | 購入価格の5〜10% |
管理費・修繕積立金 | 物件を維持・管理するために積み立てる費用 | 2〜3万円程度 |
火災・地震保険料 | 火災や地震で建物や家財が被害にあった時に保険金が支払われる | 建物の構造や所在地、保証内容や保証期間により異なる。10年契約で10〜30万円程度が目安 |
引越し費用 | 引越し業者に依頼するための費用 | 引っ越し時期や距離、依頼する会社によって異なる。2人家族で7〜10万円程度が目安 |
不動産取得税 | 不動産を取得した際に1度だけ支払う県税 | 土地・建物共に評価額✕3% 条件により免除や軽減の可能性あり |
このように、中古マンションを購入する際はさまざまな諸費用・初期費用がかかります。予定している購入価格を基に、必要な金額を把握しておきましょう。
購入後の維持費を確認する
中古マンションは、購入後にも維持費として継続的に支払わなければならない費用があります。主な項目は以下の3つです。
- 修繕積立金
- 管理費
- 固定資産税
資金計画を立てる上で、これらの費用を把握しておくことも大切です。
修繕積立金とは、マンションの共有部分の修繕や大規模修繕のために、住民が毎月積み立てる費用です。例えば、エレベーター等の設備改修や外壁塗装、屋上の雨漏り補修などの大きな修繕に備えて集める資金として設定されます。公益財団法人 東日本不動産流通機構の調査によると、首都圏の中古マンションにおける2022年度の修繕積立金は、月額平均11,474円でした。
修繕積立金の詳しい内容や相場を確認したい方は、以下の記事をご覧ください。
マンションの修繕積立金とは?相場や気を付けるポイントを徹底解説!
管理費とは、共用部分の清掃やゴミ収集、警備などの日常的な管理のために毎月支払う費用です。例えば、エントランスの掃除や防犯カメラの維持などに使われます。公益財団法人 東日本不動産流通機構の調査では、首都圏の中古マンションにおける2022年度の管理費は、月額平均12,480円でした。
固定資産税とは、不動産を所有する人が毎年支払う税金のことです。物件の価値や面積などに基づいて計算されます。税額は、「固定資産評価額✕標準税率(自治体により異なるがほとんどが1.4%)」で計算可能です。
中古マンションを購入する際は、これらの維持費を資金計画に落とし込むようにしましょう。
出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構|首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金
出典:総務省|固定資産税
市場価格と購入価格をチェックする
中古マンションの適正な価格を判断するためには、市場価格と照らし合わせることが重要です。市場価格とは、実際に売買されている不動産の価格を指し、市場価値、販売コスト、収益性を基に決まります。これらの要素を理解し、市場価格を正確に把握することで、割高で購入するリスクを回避することが可能です。
市場価値とは、そのマンションの立地や築年数、間取り、周辺環境などを基にした価値です。例えば、駅近のマンションは高い市場価値を持ちます。販売コストは、マンションを販売する際の広告費や人件費などのコストが含まれます。収益性は、その物件が賃貸される場合の収益を示し、立地や設備の良さ、周辺の家賃相場などによって変動します。
市場価格を確認することで、不動産の適正価格を判断できるほか、割高・割安な理由を調べるきっかけにもなります。では、市場価格をどのように調べるのでしょうか。1つは、不動産情報ポータルサイトで調べる方法です。このサイトで調査することで、同じエリアの似たような条件の物件相場を把握できます。また、不動産取引に関する過去データを検索できる、国土交通省の「土地総合情報システム」や、過去の不動産取引事例を検索できる「レインズマーケットインフォメーション」などで調べるのも有効です。
中古マンションの購入時期を検討する
国土交通省が公表している「不動産価格指数」の推移を確認することで、中古マンションの購入時期を検討する際の参考になります。不動産価格指数とは、不動産の価格動向を数値で示すものです。この指数の推移を確認することで、マンション価格が上昇している時期や下降している時期を把握することができます。
2010年前後からの不動産価格指数の推移を実際に見てみると、マンション価格のみ大幅に上昇しています。
出典:国土交通省|不動産価格指数(令和5年6月・令和5年第2四半期分)を公表
マンション価格が上昇しているのは、人材不足による建設コストの増加や、新型コロナウイルスをきっかけとしたウッドショック、円安などによる建設資材の価格高騰などが主な要因です。人材不足や建築資材の高騰は短期的に解決が難しい問題のため、今後も価格上昇の要因となるかもしれません。
購入時期を見極める上で価格は大切な要素ですが、結婚や出産といったライフイベントも考慮する必要があります。例えば、結婚を機に中古マンションの購入を考える場合、自分の資産や将来のライフプランを総合的に考慮して、最適な購入時期を判断することが大切です。
リセールバリューを確認する
中古マンションの購入を検討する際、リセールバリューを確認することはリスク回避において重要なポイントです。なぜなら、さまざまな生活の変化に伴い、購入した中古マンションを売却することも考えられるからです。例えば、転職や家族構成の変化により、住み替えを検討することもあるでしょう。
その際に資産価値が大きく下がっていると、買い手が付きにくく、売却価格を大幅に下げることが求められます。これが原因でローンの残債が計画以上に残ってしまったり、新しい住まいへの買い替え計画が立てづらくなったりするかもしれません。価格次第では、売却を断念するような状況も考えられます。
また、不動産の価格は、築年数が経つとともに下落するのが一般的です。しかし、不動産によってその下落幅は異なります。資産価値が下落しにくいマンションの特徴は以下の通りです。
- 人気のエリアや駅近、主要道路に近いなど立地がよい
- 地域の需要にマッチした間取りをしている
- 日当たりや眺めがよい
- 耐震構造やセキュリティが整っているなど安全性が高い
- 周辺施設が充実しているなど生活利便性が高い
このような特徴を持つ中古マンションは、資産価値が比較的落ちにくい物件といえます。中古マンションを購入する際には、これらを念頭においてリセールバリューを事前にチェックしておくことで、将来的な不安を軽減できるでしょう。
リセールバリューを確かめる方法には、インターネット検索や不動産会社への確認などが挙げられます。インターネット検索では、「購入を検討しているエリア+リセールバリュー」で検索するとランキングサイトなどが表示されます。いくつかのサイトを確認することで、大まかなリセールバリューを把握できるでしょう。不動産会社へ確認する方法も有効です。不動産会社はエリアの新築物件と中古物件の相場を把握しているため、リセールバリューの確認を取ることができます。
転職は住宅ローンを契約した後にする
中古マンションの購入と転職を検討している場合は、住宅ローンを契約した後に転職するのが賢明です。その理由は、転職すると住宅ローンの審査に悪影響が出るかもしれないからです。住宅ローンの審査は、勤続年数が短い場合に審査が通りにくくなる傾向があります。また、新しい職場での年収や信用度によっては、借入可能額が減少したり、ローン審査自体が通らなくなるかもしれません。
以上のことから、中古マンションの購入をスムーズに進めるために、住宅ローンを契約した後に転職を検討することをおすすめします。
中古マンションの購入|物件選びの注意点
中古マンションを購入する際の物件選びは以下の点に注意が必要です。
- 中古マンションの購入の流れを確認する
- 築年数を確認する
- 修繕計画・リノベーション可否を確認する
- 住環境・管理状況を確認する
- 耐震性を確認する
- エリアの災害リスクをチェックする
- 内覧では細かな部分を確認する
- 不動産会社を選択する
- 修繕積立金の滞納がないか確認する
それぞれの具体的なチェックポイントを解説していきます。
中古マンションの購入の流れを確認する
中古マンションを購入するには、まず全体の流れを把握しておくことが大切です。流れを把握しておくことで、スケジューリングや必要なものの準備が余裕を持って行なえます。
物件の引き渡しまでの流れは以下の通りです。
- 資金計画を立てる
- 物件を選ぶ
- 物件を内覧する
- 購入申し込みをする
- 住宅ローンの事前審査を受ける
- 売買契約を締結する
- 住宅ローンの本申し込みを行う
- 物件の決済・引き渡しを行う
資金計画を立てるところから引き渡しまで、早くて2〜3ヵ月、物件選びや価格交渉、住宅ローン審査などに時間を要した場合は1年ほどかかることもあります。できるだけ期間を短くしたい場合は、あらかじめ中古マンションに求める条件などを整理しておくとよいでしょう。
築年数を確認する
築年数は販売価格に大きく影響する要素であり、築年数が長くなるほど販売価格は下がります。しかし、築25年以降は価格が下げ止まるといわれているため、築25年前後の中古マンションを購入すれば、価値が大きく下落するリスクを抑えられます。とはいえ、適切な管理体制や大規模修繕計画などもマンションの価値に影響するため、その他要素も確認しておきましょう。
築年数を確認する際には、現在の価格と照らし合わせるだけでなく、築年数による価値の下落を考慮して確認しましょう。
出典:国土交通省|期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について
修繕計画・リノベーション可否を確認する
修繕計画とリノベーションの可否は、中古マンション選びの大切なポイントです。中古マンションの状態や将来的な資産価値の維持を考えると、修繕計画がしっかりと設定され、計画通り実施されているか確認することは欠かせません。例えば、修繕計画が不明確な物件は、外壁の剥落や水回りのトラブルなどのリスクが高まります。修繕計画は5〜7年ごと、大規模修繕計画は12年ごとに設定されるのが一般的なので、購入前に必ず確認しておきましょう。
また、購入後に自分の好みに合わせてリノベーションを行いたいと考える方もいるかと思います。しかし、すべてのマンションでリノベーションが可能とは限りません。例えば、構造上の問題や管理組合のルールによってはリノベーションができない、もしくは制限されるケースもあります。そのため、事前に希望に合う物件かチェックしておくことが重要です。
住環境・管理状況を確認する
住環境や管理状況は中古マンションの売却価格に影響するため確認が必要です。例えば、共用部の手入れが行き届いていない、騒音や治安などの住環境が悪い、外壁にヒビ割れや塗装の剥げがあるなどの中古マンションは、資産価値が減少してしまいます。
管理状況を確認するためには、内覧時に全体をくまなく見せてもらったり、管理組合の議事録の開示を依頼したりするのが効果的です。近年では、マンションのホームページに管理状況を掲載しているケースもあります。
資産価値が減少している物件は、将来的に再販売する際、買い手が見つからないリスクも考えられます。その結果、ライフプランに支障をきたす可能性も出てくるため、中古マンションを選ぶ際は、住環境や管理状況をよく確認しておきましょう。
耐震性を確認する
中古マンションの購入を考える際、耐震性の確認も重要なポイントです。耐震性が高い物件を選ぶことは、住居としての安全性はもちろん、将来的な資産価値を守る上でも大切な要因となります。
日本では、過去の地震の教訓を踏まえて耐震基準が時間と共に更新されてきました。特に、旧耐震基準と新耐震基準の違いは大きく、新基準の方がはるかに高い耐震性が求められます。そのため、新耐震基準を満たしていないマンションは、地震のリスクが高くなります。新耐震基準は1981年6月1日以降に建築確認申請を受けた物件なので、それ以前の建物は旧耐震基準の物件ということです。
しかし、旧耐震基準の中古マンションであっても、後から耐震補強工事を施して新耐震基準を満たしている場合もあります。そのため、中古マンションを購入する際は、単に建設年数だけでなく、耐震補強工事の有無やその内容も確認することが重要です。
また、重要事項説明の際に耐震診断の実施記録の有無も確認しておきましょう。マンションの現在の耐震性や将来的なリスクを明確に知ることができ、より安心して中古マンションを購入できます。
エリアの災害リスクをチェックする
中古マンションを購入する際は、物件自体の災害リスクだけでなく、エリアの災害リスクもチェックすることが重要です。災害リスクとは、そのエリアで災害が発生する確率や、災害による被害の予想範囲を指します。日本は地震や台風が多い国なので、特定のエリアで災害が発生する確率をきちんと調べておくことが大切です。
具体的には、ハザードマップを利用することで、災害リスクを確認することができます。ハザードマップとは、洪水や土砂災害、地震などのリスクを地域ごとに示した地図です。これを用いれば、中古マンションの所在地がどれほどのリスクを持っているのかを把握することができます。ハザードマップは、各自治体のホームページや、国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」などで確認できます。
マンションの購入を検討する際は、物件の価格や設備だけでなく、エリアの災害リスクも確認することで、被災のリスクを減少することが可能です。
内覧では細かな部分を確認する
内覧時は普段気にしないような細かい部分も確認していきます。中古マンションは新築時には見られないさまざまな問題が潜んでいることがあるため、実際の生活を想像しながらじっくりとチェックしましょう。
内覧をする際の具体的な確認ポイントは、まずマンション周辺を歩いて状況を確認するのがおすすめです。近くに公園や商業施設、学校があるか、交通の利便性はよいかなど、生活の質に直結する要素を見ておきます。
マンション自体を確認する際は、以下のポイントをチェックしましょう。
- 間取りや設備の状態
- 共用部の状態
- オートロック・防犯カメラの有無などのセキュリティ面
- 日当たりや家事動線
- キッチンの設備や収納スペース
- シャワーの水圧
- コンセントやテレビ線・電話線の位置
- スマートフォンの電波の強さ
- 周囲の生活音の確認
- 玄関やドアのサイズ感
- ドアや扉の建付けの状態
- 宅配ボックスの有無 など
これらのポイントを確認することで、物件選びで後悔するリスクを減少できます。特に、生活音やスマートフォンの電波は、後から気付くことが多いので注意が必要です。チェックポイントの抜け漏れが無いように、事前にチェックシートを用意してから内覧に臨むとよいでしょう。 なお、時間や曜日を変えて複数回内覧を行うことで、マンションの状態をより正確に把握できます。
不動産会社を選択する
中古マンションの購入には不動産会社の選定も重要です。選定を誤ると、各種手続きや購入後のサポートに不備が生じる可能性が高くなります。
まず、信用できない不動産会社の特徴は、紹介される物件の情報が不明瞭、過去のトラブルが多数報告されている、などです。このような会社に依頼すると、「実際の物件状況と異なる情報を提示される」「購入後のアフターサポートが不十分」「修繕の際に適切なアドバイスを受けられない」などのリスクがあります。
信頼できる不動産会社を見つけるには、過去の実績や口コミを確認することをおすすめします。特に、購入者の満足度や、物件に関する詳細な情報提供がしっかりと行われているかどうかは重要な判断基準です。また、レスポンスは早いか、丁寧にヒアリングをしてくれるか、リスクに関する説明をしてくれるかなども確認しておきます。
信頼できる不動産会社を選択することは、安心して中古マンションを購入するための大切なステップです。上記の項目を確認し、信頼できる不動産会社を選択しましょう。
修繕積立金の滞納がないか確認する
マンションの中には、修繕積立金の滞納がある物件も存在しており、その割合はマンション全体の約4分の1といわれています。修繕積立金の滞納は、買主に引き継がれるため注意が必要です。また、このような物件を購入すると、管理体制の維持や修繕の適切な進行が難しくなるかもしれません。大規模修繕の際に必要な資金が足りなくなると、住み心地や資産価値が低下する恐れがあります。購入前には重要事項説明で滞納の有無が説明されるため、その際に疑問点があれば積極的に確認しましょう。
中古マンションの購入|契約・引き渡し時の注意点
中古マンションを購入する際の契約・引き渡し時の注意点は以下の通りです。
- 重要事項説明書にしっかり目を通す
- 契約時には手付金が必要
- 住宅ローンは残金決済の前に手続きを完了させる
- 物件の最終チェックを忘れずに
引き渡し後まで気を抜かずに注意点を確認していきましょう。
重要事項説明書にしっかり目を通す
中古マンションの売買契約を締結する際、売主の宅建業者は重要事項説明書の交付と説明が法律で義務付けられています。この重要事項説明書の内容をきちんと理解し、問題がないか確認することが重要です。
具体的には、物件の価格や権利関係、管理組合の状況、マンションの専有部分・共有部分に関する規定、管理委託先の情報など、購入者が知るべき多くの情報が記載されています。内容に疑問点や不明点がある場合、その場で質問して不安や疑念を解消しておきましょう。内容を正確に理解しておくことで、認識の齟齬無く手続きを進められるでしょう。
契約時には手付金が必要
中古マンションの売買契約時には手付金が必要です。手付金とは、買い主が売り主に対して、契約の証拠を示すための一時的な保証金として支払われます。一般的には、物件価格の5〜10%程度が相場です。例えば、物件価格が2,000万円の場合、手付金として100万〜200万円程度が必要になります。
もし契約を途中で解除した場合、この手付金は全額放棄しなければなりません。また、手付金は住宅ローンに組み込むことはできないので、自己資金として準備する必要があります。中古マンションの購入を検討している方は、手付金も事前に準備するようにしましょう。
住宅ローンは残金決済の前に手続きを完了させる
中古マンションの住宅ローン手続きは、残金決済の前に完了させておかなければなりません。残金決済とは、物件の購入金額から前払いや手付金を差し引いた後に残った金額の支払いを指します。この支払いは、受け渡し前に不動産会社が指定する口座に振り込むのが一般的です。
例えば、1,000万円のマンションを購入し、初めに200万円を手付金として支払った場合、残金決済で800万円を指定の口座に振り込むことになります。しかし、この残金の大部分を住宅ローンで賄う場合、振込前に関連する手続きを全て終わらせておく必要があります。万が一、手続きが間に合わないと残金決済が滞り、契約違反となる恐れがあるので注意が必要です。中古マンション購入の際はスケジュール管理を慎重に行い、住宅ローンの手続きも適切なタイミングで行いましょう。
物件の最終チェックを忘れずに
中古マンションの購入は人生の大きな決断といえるので、物件の最終チェックは欠かせません。契約から引き渡しまでの間に、内装や設備の状態・状況が変わっている可能性があるからです。例えば、内覧時にはなかった傷がついていたり、水回りにトラブルが生じていたりするかもしれません。細かい点も見逃さないように注意深く確認してください。
最終チェックをする際は、不動産仲介会社に立ち会ってもらうのも有効です。専門的な視点からのチェックや問題発生時の交渉をサポートしてもらえるため、事前に立ち会いを依頼しておきましょう。
中古マンションを購入する際にチェックしたいポイントとは
中古マンションを購入する際は、さまざまな部分をチェックしなければなりません。具体的にチェックしておくべきポイントは以下の通りです。
- 立地条件
- 周辺環境
- 耐震性能
- 室内設備
- 共用設備
- 管理状況
- 維持費
- 修繕・リノベーション
各項目の具体的なチェックポイントを解説します。
ポイント1:立地条件
立地条件は資産価値に大きく影響する要素です。内装がよくても立地が不利な場所にあると、資産価値の下落が大きくなる可能性が高まります。具体的には、駅近の物件や交通アクセスがよい物件は、価値が下がりにくいといわれています。一般的に、駅から徒歩15分以内の物件や、最寄り駅がターミナル駅である場合は、資産価値が高いといえるでしょう。さらに、再開発の予定やエリア人口の増減なども資産価値に影響するので、購入前にチェックすることをおすすめします。
ポイント2:周辺環境
中古マンションの周辺環境も資産価値に影響を与える要因となります。例えば、近隣にスーパー、ドラッグストア、病院・動物病院、銀行、図書館、学校などの施設が揃っている場合、生活の利便性が向上し、物件の魅力も高まるでしょう。逆に、工場や下水処理場、交通量の多い幹線道路などが近くにある場合、騒音や匂いなどが原因で資産価値が下がることも考えられます。こういった周辺環境のチェックは、将来的な住み心地や資産価値の観点からも非常に重要です。
ポイント3:耐震性能
耐震性能のチェックも重要なポイントです。耐震性能が高ければ、地震が発生したときの安全性が向上することに加え、耐震等級によっては地震保険の割引が受けられます。耐震性能を確認するには、建築当初の基準や耐震補強が行われたかどうかを確認することが必要です。
例えば、1981年6月1日以降の新耐震基準に基づいて建てられたマンションは、それ以前に比べて耐震性が高くなります。また、耐震診断書や耐震補強の有無を確認することで、補強工事の履歴や現在の耐震性能を確認できます。これらの情報をもとに、安全性の高い中古マンションを選びましょう。
ポイント4:室内設備
中古マンションの室内設備は、資産価値やリノベーションの難易度に影響する要素です。高品質な室内設備は、資産価値の維持やリノベーションの難易度を下げる要因となります。特に、キッチンやバスルーム、トイレなど、水回りの設備は重要です。例えば、システムキッチンや追焚き機能付きのバスタブ、ウォシュレット付きのトイレなどは、快適な生活や将来的にリノベーションをする際のメリットになります。これらの設備を確認し、長く快適に住める中古マンションであるか確認しましょう。
ポイント5:共用設備
中古マンションの共用設備も生活の質に関わる要素なので、内覧の際によくチェックしておくことをおすすめします。特に近年では、安全性や利便性が求められ、その基準として共用設備が重視されるようになってきました。人気のある共用設備としては、ディンプルキーやカードキーなどの鍵タイプや防犯カメラ、24時間利用可能なゴミステーション、宅配ボックス、防災備蓄庫などが挙げられます。これらの設備が整っているマンションは、生活の利便性や安全性が向上し、快適な生活の助けとなるでしょう。
ポイント6:管理状況
共有部分の管理状況は、マンションの快適さや安心感に直結する要素です。良好な管理状況とは、共有部分がきれいに保たれているだけでなく、トラブルが発生した際の対応の質が高いことを意味します。例えば、エレベーターや水漏れなどのトラブルの解決スピードなどは管理の質を見極める重要なポイントです。また、管理組合の財政状況や修繕積立金の金額なども管理状況に含まれます。しっかりとした管理がなされているマンションは、長期的に住む上での安心感が得られるため、必ずチェックしておくようにしましょう。
ポイント7:維持費
中古マンションを購入する際は、購入価格だけでなく維持費もチェックしておくことが大切です。物件価格が安く一見お得に思える中古マンションでも、管理費や駐車場代、修繕積立金といった定期的に発生する維持費が高いと、結果的に負担が大きくなります。特に、都心の中古マンションは、駐車場代や管理費が月額数万円というケースも少なくありません。こうした維持費を加算すると、月々の負担額は想像以上になることもあります。安定した資金計画を立てるために、購入前には維持費についてもチェックしておきましょう。
ポイント8:修繕・リノベーション
中古マンションの購入時には、過去に行われた修繕やリノベーションの履歴もチェックしておきます。これらの回数や内容をしっかりと確認することで、物件やメンテナンスの状態が明確になるからです。もし、修繕やリノベーションが頻繁に行われている場合、その物件は何らかの問題を抱えている可能性があります。例えば、外壁の補修が近年に複数回行われていたら、施工上の問題や耐久性の課題があるのかもしれません。このように、施工内容や方法も詳しく確認することで、将来的なリスクを予測する手助けとなるでしょう。
当社マンション管理士のひと言
一般的にマンションは、日々の維持管理やトラブル対応は管理会社に委託していることがほとんどですが、現在の管理状況はしっかりと把握しておく必要があります。特に、資金計画を含めた修繕計画は、購入後の収支にも大きく影響するため、注意が必要です。
また、マンションは複数の区分所有者の共有物となるため、意思決定を行うためには所有者の合意が必要になります。その点も踏まえ、自身にあったマンション選びが必要でしょう。
まとめ
中古マンションの購入は、さまざまな観点から物件の価値を判断し、適切に手続きを進めなければなりません。資金計画や購入の流れ、物件選びの注意点や契約・引渡し時の注意点を把握し、1つずつ確実に進めることが大切です。また、ご紹介した資産価値の高い中古マンションを購入するためのチェックポイントもぜひお役立てください。
監修者
黒木 淳/大和財託株式会社 マンション管理士・マンション管理シニアコンサルタント
【保有資格】
管理業務主任者・マンション管理士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
【プロフィール】
損害保険調査業、鉄道系大手分譲マンション管理会社を経て、大和財託株式会社に入社。
所有者にとって最適な物件管理を提案することを重視し、「大切な資産」であるマンションを守るため、各オーナー様の物件管理をサポート。
【メッセージ】
分譲マンションの問題が多様化する昨今、当社は大規模修繕工事は当然、税務や管理運営まですべての分野に対応できることが強みです。
長年、マンション管理に携わってきた経験を活かし、管理組合様、理事長様のニーズに寄り添ったサービスを提供し、皆様の快適な暮らしをサポートいたします。
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